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深大寺

(じんだいじ)

深大寺は、東京都調布市深大寺元町に位置する天台宗の仏教寺院です。天台宗の別格本山であり、山号は「浮岳山(ふがくざん)」、正式名称は「浮岳山深大寺」です。浅草寺に次ぐ東京都内で二番目に古い寺院として知られています。

日本三大だるま市のひとつとして有名な「深大寺だるま市」が毎年行われ、多くの参拝客で賑わいます。隣接する東京都立神代植物公園は、かつてこの寺の寺領であったとされています。深大寺だるま市や深大寺そばなどの観光スポットとしても有名です。

歴史と沿革

深大寺の歴史は奈良時代に遡ります。733年(天平5年)、満功上人が仏教の法相宗として開創したと伝えられています。寺名の由来については、中国唐代の僧・玄奘三蔵を守護した水神「深沙大王」(じんじゃだいおう)に由来すると言われています。

平安時代には天台宗へと改宗し、その後も多くの信仰を集めましたが、江戸時代には1646年と1865年の二度にわたる火災により、堂宇の大半が焼失しました。現在の本堂は大正時代に再建されたものです。

本尊と信仰

深大寺の本尊は、本堂に安置されている宝冠阿弥陀如来像です。また、秘仏として元三大師(がんざんだいし)像も祀られています。元三大師は疫病から人々を救う「鬼大師」として知られており、深大寺の節分会では「鬼は外」を言わず、「福は内」のみを発声するという独特の風習があります。

文化財

国宝:銅造釈迦如来倚像

この寺の最も貴重な文化財のひとつとして、飛鳥時代後期(白鳳時代)の銅造釈迦如来倚像があります。この像は、1909年(明治42年)に元三大師堂の壇の下から発見され、現在は釈迦堂に安置されています。像高は60.6センチメートル、全高は83.5センチメートルです。童顔であり、法隆寺の銅造観音菩薩立像と共通する特徴を持っています。この仏像は火災に遭って表面の鍍金をほとんど失っていますが、その稀少さから2017年に国宝に指定されました。

重要文化財:梵鐘

1376年(永和2年)に鋳造された梵鐘も、深大寺の重要な文化財です。この梵鐘は、山城守宗光という人物が作成したもので、総高125.5センチメートル、口径68.8センチメートルの銅製の鐘です。都内で3番目に古いものとされていますが、ひび割れなどのため2001年に新しい梵鐘が作られ、現在は元の梵鐘が釈迦堂に保管されています。

深大寺の境内と建造物

本堂

現在の本堂は、大正8年に再建されたもので、以前の本堂は幕末の火災で焼失しました。本尊の阿弥陀如来像は一時的に仮の庫裡に安置されていましたが、再建後、現在の本堂に移されました。

元三大師堂

この堂には、元三大師像が安置されています。幕末の火災で焼失したため、現在の元三大師堂は寺院の西側の崖地を削って新しく造成された場所に建てられています。

開山堂

奈良時代様式を再現して建設されたこの開山堂は、昭和58年に深大寺開創1250年を記念して新築されました。

延命観音

昭和41年、秋田県象潟港の工事中に海底から発見された延命観音像が深大寺に奉安されています。伝承によれば、この像は慈覚大師によって彫られたものであるとされています。

鐘楼、釈迦堂、その他の建物

鐘楼

幕末の火災で消失しましたが、明治3年に山門の右手に再建されました。これが現在の鐘楼です。

釈迦堂

釈迦堂は、火災や盗難から重要な仏像を守るために鉄筋コンクリート造りで建設されました。湿気が多い土地であるため、高床式の構造が採用されています。

山門

山門は、参道から一段高い寺の敷地の入口に位置し、正面には「浮岳山」の山号が掲げられています。

深沙堂

深沙堂は、1968年(昭和43年)に再建された堂で、深大寺の発祥に関わる泉が堂の背後にあります。

不動堂

この不動堂は、明治17年に再建されたものです。幕末の火災から不動明王像と二童子像が無事に逃れ、再建された仮本堂に一時的に安置されていたという記録があります。

大黒天と恵比寿尊

深沙堂への参道には、七福神の恵比寿尊と大黒天の石像が並んでおり、仏教の守護者として訪れる参拝者に力強い加護を与えています。

深大寺と水の関わり

深大寺は、豊富な湧水が特徴の地に立地しています。国分寺崖線の崖面に抱かれるように位置し、現在でも境内には複数の湧水源があります。この湧水を利用した「不動の滝」は、「東京の名湧水57選」に選定されています。

また、深大寺の周囲には、神代植物公園や都立農業高校神代農場など、水と密接に関わる施設が広がっています。これらの施設は、豊富な水を利用して田畑を潤し、古くからの信仰の場としての役割を果たしてきました。

深大寺そば

「深大寺そば」がこの地の名物として発展したのも、水の恵みと無縁ではありません。そばの栽培や製粉、調理に湧水が利用されてきたことが、その発展の背景にあります。現在も、多くの蕎麦屋が軒を連ね、訪れる人々に愛されています。

行事

厄除元三大師大祭

毎年3月3日から4日にかけて行われる「厄除元三大師大祭」は、深大寺最大の行事であり、「深大寺だるま市」として知られています。この祭りには約300店の露店が並び、毎年10万人前後の人々が訪れます。願掛けの際には、梵字で「ア」と書き、願いが叶った際には「ウン」の字を入れる風習が残っています。

深大寺鬼燈まつり

7月中旬には「深大寺鬼燈まつり」が開催されます。ほおずき市や手作り市、パフォーマンスライブステージ、物産展などが行われ、深大寺界隈は大変賑わいます。

そば守観音供養祭

10月中旬には、「そば守観音供養祭」が行われます。この祭りは、深大寺そばにちなみ、地元の人々に親しまれています。

周辺スポット

門前町

深大寺の山門周辺には歩行者専用の門前町が広がっており、多数の蕎麦屋や土産物屋が軒を連ねています。また、弁天池では定期的に清掃作業が行われ、水質の改善や水生植物の再生が図られています。

神代植物公園

深大寺の北側には、東京都立神代植物公園が広がり、深大寺門からのアクセスが可能です。また、南東方向には谷戸地形が広がり、ここは水生植物園として公開されています。

深大寺城址

神代植物公園内には「深大寺城址」もあります。この城址周辺は台地状を呈しており、歴史的な景観が楽しめます。

アクセス情報

深大寺へのアクセスは、京王線やJR中央線を利用して吉祥寺駅や三鷹駅、調布駅からバスで訪れることが可能です。また、京王線の布田駅から徒歩約3分の布田バス停からもバスが運行されており、アクセスは非常に便利です。

ゆかりのある人物とフィクション

深大寺には、中西悟堂や江藤潤などの著名人がゆかりを持っています。また、松本清張の『波の塔』や宇佐美まことの『愚者の毒』など、多くの文学作品の舞台としても知られています。

Information

名称
深大寺
(じんだいじ)

府中・調布

東京都