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馬場大門のケヤキ並木

(ばばだいもん なみき)

東京都府中市に位置する馬場大門のケヤキ並木は、日本国指定の天然記念物であり、大國魂神社の参道としても知られています。この並木道には約150本のケヤキが植えられており、全長約500メートルの道を荘厳に彩っています。歴史的には、平安時代にまで遡るとされるこの並木道は、日本の文化財としての価値が高く、長年にわたり地元の人々や観光客に親しまれてきました。

歴史と起源

起源と発展

馬場大門のケヤキ並木の起源には諸説ありますが、明確な証拠がないためその始まりは定かではありません。主な説として、武蔵国府の街路樹として植栽されたもの、源頼義・源義家父子が前九年の役からの凱旋時に寄進したもの、徳川家康が馬場を整備した際に植樹されたもの、そして1667年の寛文の造営の際に植樹されたものなどが挙げられます。

源頼義・義家父子の伝承

最も広く知られているのは、源頼義・源義家父子が六所宮(現・大國魂神社)に苗木を寄進したという伝承です。この伝承は江戸時代の地誌にも記されており、彼らが戦勝祈願の礼として苗木を1000本寄進したとされています。しかし、これを裏付ける確固たる証拠はなく、並木の起源を源頼義・義家父子に結びつけるのは困難とされています。

徳川家康とケヤキ並木

江戸幕府を開いた徳川家康もまた、六所宮に対して深い敬意を示しました。彼は武蔵国の領地を寄進し、新たな馬場の整備を行ったとされています。また、1606年には社殿の造営を行い、その際に並木が整備された可能性があります。

並木の構造と現状

馬場大門の構造

馬場大門は、東京都道133号小川山府中線に沿った約600メートルの区間に位置しており、「けやき並木通り」としても知られています。この道は「馬場中道(大門)」と呼ばれる本道と、「東馬場」「西馬場」と呼ばれる側道から構成されています。馬場中道の両側にはケヤキの並木が広がり、荘厳な景観を形成しています。

植生と樹木の種類

馬場大門のケヤキ並木には、約20科30種の樹木が確認されており、その大部分がケヤキです。2004年の調査によると、ケヤキは152本、イヌシデは38本、トウカエデは8本、合計で215本の樹木が生育しているとされています。しかし、かつては1949年の調査で499本の樹木が確認されており、その数は半減しています。この減少は、地下水のくみ上げや大気汚染、自動車の通行による踏圧害などが原因とされています。

保護と保存活動

府中市の取り組み

府中市は、この貴重なケヤキ並木を保護するために、さまざまな活動を展開しています。市民の意識も高く、並木の保存や周辺景観との調和を求める声が強まっています。1994年には、読売新聞社が選定する「新・日本街路樹100景」の一つに選ばれるなど、その価値が再評価されています。

古木の価値と保存の意義

馬場大門のケヤキ並木には、樹齢300年以上の古木が多く含まれており、その中には周囲が6メートルを超えるものも存在します。これらの古木は、江戸時代からの長い歴史を物語る貴重な存在であり、その保存には大きな意義があります。

馬場大門のケヤキ並木の価値と重要性

馬場大門のケヤキ並木は、ただの並木道ではありません。日本の歴史と文化を象徴するものであり、その存在は府中市のシンボルともなっています。天然記念物としての指定は、この並木が持つ歴史的価値や文化的意義を認めたものであり、未来に向けてその価値を守り続けることが求められています。

日本における並木の伝統

日本では、古来より街道や参道、堤防、沿岸などに並木を設ける習慣がありましたが、現代までその形態を伝える例は少なくなっています。馬場大門のケヤキ並木は、江戸時代に植えられた広葉樹の並木としては非常に珍しく、また貴重な存在です。これが、天然記念物に指定された理由の一つでもあります。

今後も、この貴重なケヤキ並木が末永く保存され、多くの人々にその魅力を伝え続けることを期待しています。

Information

名称
馬場大門のケヤキ並木
(ばばだいもん なみき)

府中・調布

東京都