山本亭は、東京都葛飾区柴又七丁目に位置する、1920年代に建てられた近代和風建築の邸宅です。現在、この邸宅は葛飾区が所有し、一般公開されています。また、山本亭は寅さん記念館の裏手に位置しており、訪れる観光客にとっても親しみやすい場所です。
山本亭の正確な建築年は不明ですが、大正末期から昭和初期にかけて増改築が行われ、現在の姿になったとされています。この土地はもともと、庄屋の鈴木家が所有しており、1923年(大正12年)の関東大震災まで、鈴木家はここで瓦工場を営んでいました。
山本亭を構えた山本栄之助氏は、浅草でカメラ部品を製造する合資会社「山本工場」の経営者であり、当初は浅草小島町(現在の台東区小島付近)に住居を構えていました。しかし、関東大震災で浅草が甚大な被害を受けたため、柴又へと移転。この際、鈴木家の瓦工場跡地を購入し、新たな住居を構えました。
その後、山本家がこの地に住み続けましたが、1988年3月14日に葛飾区がこの邸宅を取得し、1991年4月から一般公開を開始しました。現在では、伝統行事の披露会や琴の演奏会などが開催され、多くの人々に愛される文化施設として利用されています。
2003年7月28日、山本亭は東京都選定歴史的建造物として認定され、その登録番号は62番です。また、2018年には「葛飾柴又の文化的景観」が重要文化的景観に選定され、山本亭はこの景観の一部を形成する重要な建物として位置づけられています。
山本亭は、縁側のガラス窓などに象徴される近代和風建築の特色を持っています。洋室応接間には、ガラス製のペンダント照明や大理石のマントルピースが設置されており、和洋折衷の内装が施されています。このような内装から、当時の富裕層の生活様式を垣間見ることができます。
山本亭の書院庭園は広さこそ限られていますが、奥行きを感じさせる工夫が随所に施されています。この庭園は、米国の日本庭園専門雑誌『ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング』が毎年発表する「しおさいランキング」(日本国内では「日本庭園ランキング」として知られる)でも高い評価を受けています。
このランキングでは、「庭と家が一体となった日本的な生活環境」を楽しめる場所が評価されており、山本亭は「おじいちゃんの家の座敷で美しい庭を見ながらのんびり過ごすような和みの空間」として、ホスピタリティ面でも高く評価されています。