五島美術館は、東京都世田谷区上野毛(かみのげ)にある美術館で、1960年(昭和35年)4月18日に開館しました。運営主体は公益財団法人五島美術館であり、同法人は五島美術館および大東急記念文庫の運営を行っています。五島美術館は、日本と東洋の古美術を中心とした約5000件の所蔵品を誇り、その中には国宝5件、重要文化財50件が含まれています。
五島美術館は、東急(東京急行電鉄)を創設した実業家、五島慶太の美術コレクションを保存・展示するために設立されました。五島慶太は、その豪快な経営手法から「強盗慶太」とも呼ばれたほどで、古美術品の収集にも情熱を注いでいました。美術館が所蔵する名品には、国宝『源氏物語絵巻』や『紫式部日記絵巻』があり、これらは五島が美術館公開を決意した際に死の直前に入手したものです。
美術館の敷地は、五島邸の一部を提供したもので、庭園を含めて約6000坪におよびます。建物は建築家・吉田五十八の設計によるもので、寝殿造の要素を現代建築に取り入れたデザインが特徴です。特に建物の色には工夫が凝らされ、完成までに60日を要したといいます。この建物は、1961年に第二回建築業協会賞を受賞しています。
五島美術館は、日本や東洋の古美術品を中心に多くの貴重な作品を所蔵しており、その中には国宝や重要文化財が含まれています。主なコレクションには、以下のような作品があります。
美術館には多数の重要文化財があり、絵画、彫刻、工芸品、書跡典籍などが所蔵されています。以下に主なものを挙げます。
五島美術館には常設展示はなく、随時企画展が行われています。展示室は2室あり、これらの部屋で所蔵品の中から選りすぐりの作品が展示されます。また、重要文化財に指定されている木造愛染明王坐像は、常設展示されています。
五島美術館の敷地には、武蔵野の面影を残した広大な庭園が広がっています。この庭園は、五島慶太が古材を用いて建てた茶室「古経楼」や「冨士見亭」を有し、訪れる人々に美しい自然の風景を提供します。庭園内には、五島が伊豆や長野の鉄道事業の際に引き取った石仏も点在し、「大日如来」や「六地蔵」などが見られます。
庭園内には、明治時代に建てられた茶室「古経楼」や、五島が古材を使用して作らせた立礼席「冨士見亭」があります。これらの建築物は非公開ですが、その存在が庭園の雰囲気を一層豊かにしています。また、この土地は台湾総督や逓信大臣などを務めた田健治郎の旧宅であり、庭園内の茶室はその一部を受け継いでいます。
五島美術館と同じ敷地内には、大東急記念文庫が所在しています。この文庫は、五島慶太が1949年(昭和24年)に創設したもので、東京南西部の私鉄を広域に戦時統合して成立した「大東急」を記念して設立されました。文庫は、1960年に上目黒から現在の場所に移転しました。
大東急記念文庫は、日本・中国・朝鮮の古典籍を約2万5千点所蔵しており、その中には国宝3件、重要文化財32件が含まれています。蔵書の中核を成すのは、五島の長男・五島昇の義父である久原房之助が集めた久原文庫で、これに井上通泰の蔵書を加えたものです。
財団法人大東急記念文庫は、かつては五島美術館とは別個の法人でしたが、2011年3月1日に五島美術館に吸収合併されました。そして、2012年4月1日付で公益財団法人の認可を受け、公益財団法人五島美術館として活動を続けています。
五島美術館は、開館50周年を迎えるにあたり、2010年11月29日から2012年10月19日まで休館し、大東急記念文庫と併せて大規模な増改築工事を行いました。これにより、耐震補強工事が施され、館内設備が一新されました。
増改築工事の設計・施工は清水建設、及び丹青ディスプレイが担当し、デザイン監修は堀越英嗣が行いました。吉田五十八による建物の外観はできるだけそのままに保たれつつ、展示室や講堂、集会室などが新たに整備されました。この改築により、五島美術館は2013年度グッドデザイン賞を受賞しました。
五島美術館には、以下の国宝が所蔵されています。
以下に、五島美術館に所蔵されている主な重要文化財を紹介します。
五島美術館には、以下の建物が登録有形文化財として登録されています。
五島美術館と大東急記念文庫に所蔵されている主な指定文化財の一覧を以下に示します。
五島美術館は東京都世田谷区上野毛にあり、最寄り駅は東急大井町線の上野毛駅です。駅から徒歩約5分の距離に位置し、都心からのアクセスも良好です。美術館は常時開館しており、展覧会や庭園の散策など、さまざまな楽しみ方ができます。訪れる際には、公式ウェブサイトで最新の展示情報や開館時間を確認することをお勧めします。
五島美術館は、五島慶太の情熱と努力によって集められた貴重な古美術品を保存・展示する、文化的価値の高い施設です。美術館の建物や庭園もまた、来館者に静かな時間を提供し、豊かな文化的体験をもたらします。ぜひ一度、訪れてみてはいかがでしょうか。