東京ジャーミイは、東京都渋谷区代々木上原に位置する日本最大のイスラム教の礼拝所(モスク)です。日本国内外から多くのムスリムが訪れるこのモスクは、イスラム教徒にとっての重要な拠点であり、また一般の訪問者にも広く開かれています。
モスクという言葉は欧米や日本、韓国などで広く使用されているもので、しばしば「イスラム教寺院」や「回教寺院」と訳されます。しかし、モスクは崇拝の対象物がなく、礼拝を行うための場所です。
東京ジャーミイの運営は、トルコ共和国宗務庁が担当しており、光熱費なども同庁が負担しています。また、モスクの責任者であるイマームもトルコ共和国宗務庁から派遣されています。1階には「トルコ文化センター」が併設されており、イスラム教やトルコ文化に関する展示や講座が行われています。
東京ジャーミイは渋谷区大山町に位置し、代々木上原駅から徒歩圏内にあります。モスクはオスマン様式を取り入れた美しい建築で知られ、金曜礼拝を含む1日5回の礼拝が行われる大規模なモスクです。「ジャーミイ」という言葉はトルコ語で「人が集まる場所」を意味し、その語源はアラビア語にあります。
東京ジャーミイの前身である「東京回教学院」は、1938年にロシア帝国からの亡命タタール人たちのために設立されました。老朽化により取り壊された後、トルコ共和国の支援により、2000年に現在のオスマン様式のモスクとして再建されました。
東京ジャーミイでは、毎日5回の礼拝が行われ、東京周辺に住むムスリムたちが参加しています。参加者は主にトルコ、パキスタン、インドネシア、マレーシア、バングラデシュ、日本などの国籍を持つ人々です。金曜の合同礼拝には約350~400人が集まり、訪日外国人のムスリムも多く訪れることが特徴です。
東京ジャーミイの建物は、トルコの伝統的なモスク建築を取り入れ、上階に広々とした礼拝堂を設けています。大ドームを持つ礼拝堂は、最大で2,000人を収容可能です。設計はトルコの建築家ハッレム・ヒリミ・シェナルプが手掛け、内装や外装にはトルコから取り寄せた資材が使用されました。日本国内では非常に珍しいこの建築様式は、東アジアで最も美しいモスクとの評価を受けています。
東京ジャーミイの1階には、トルコの美術品が展示されているギャラリーや、講座に使用される広間があります。2階の礼拝堂は美しく彩色されたドームが特徴で、専用の女性用礼拝室も設けられています。
東京ジャーミイの歴史は、1917年のロシア革命に遡ります。革命後、多くのトルコ民族やイスラム教徒が日本に移住し、その一部が東京周辺に定住しました。彼らは1924年に「東京回教徒団」を結成し、1938年に初代礼拝堂「東京回教礼拝堂」を建設しました。この礼拝堂は、日本政府の対イスラム政策の一環として建設され、東京周辺のムスリムにとって重要な拠点となりました。
初代礼拝堂は老朽化により1984年に閉鎖され、1986年に取り壊されました。その後、東京トルコ人協会がトルコ政府に跡地を寄付し、トルコ政府が再建を担当しました。再建された東京ジャーミイは1998年に着工され、2000年に竣工しました。新たなモスクは、日本最大のイスラム教礼拝所として、その活動を続けています。
東京ジャーミイは、礼拝所としての機能だけでなく、イスラム文化やトルコ文化を広める役割も担っています。トルコ文化センターでは、イスラム教やトルコに関する書籍の出版や講座の開催が行われており、非ムスリムの訪問者も見学や講座の参加が可能です。2003年には、宗教法人として正式に認可され、宗教団体としての地位を確立しました。
東京ジャーミイのイマームは、トルコ共和国宗務庁によって選出され、任期は4年間です。初代のイマームから現在に至るまで、さまざまなイマームが東京ジャーミイの指導を行ってきました。
東京ジャーミイは、単なる礼拝所としての役割にとどまらず、異文化理解の促進や宗教的な多様性の尊重を象徴する場でもあります。また、東京都内のムスリムコミュニティにとっての精神的な拠点であり、非ムスリムとの交流の場としても機能しています。
これからも東京ジャーミイは、イスラム教の教義を実践する場であると同時に、日本社会における多様性と共生を体現する存在であり続けることでしょう。