ボロ市は、東京都世田谷区世田谷で行われる蚤の市を中心とする祭礼であり、伝統行事の一つです。明治時代に古着の売買が盛んに行われたことから「ボロ市」と名付けられました。現代のボロ市では、古着のほかにも骨董品、古本、植木、食料品、神棚、玩具、寝具、新品の衣類、生活雑貨など多岐にわたる商品が販売されています。周辺の飲食店ではボロ市に合わせて臨時メニューを提供することもあります。
ボロ市は、毎年1月15・16日と12月15・16日の9時から21時まで開催されます(ただし、2011年12月以降の開催は20時まで、2022年度の開催は18時まで)。場所は世田谷区世田谷一丁目の世田谷代官屋敷付近、通称「ボロ市通り」(世田谷中央病院から世田谷一郵便局に至るおよそ500メートル)およびその周辺です。
開催日は固定であり、土日が含まれる場合は観光客も多く訪れ、特に混雑します。9時と21時には、開始と終了を知らせる号砲が打ち上げられます。開催期間中には、約700もの露店が並び、各日20万人近くの人で賑わいます。また、最寄り駅である世田谷駅および上町駅を経由する東急世田谷線は、臨時ダイヤで運行されます。
江戸時代の代官による市視察を再現した「代官行列」は、1968年の明治100周年を機に始まり、その後も約5年ごとに様々な記念として行われています。2017年12月15日の行列では、かつて代官を務めた大場家第16代当主をはじめ約50人が参加しました。
会場の中心部に位置する世田谷区立郷土資料館(世田谷代官屋敷敷地内)では、毎年12月から1月にかけて季節展「ボロ市の歴史」が開催され、関連資料を展示し、その歴史を紹介しています。
ボロ市は、1578年に北条氏政が「楽市掟書」により世田谷城下で始めた楽市にその起源を持ちます。この市は、江戸と小田原の間に位置する世田谷宿で伝馬を確保し、宿場の繁栄を目指す目的で開催されました。当初は毎月1日、6日、11日、16日、21日、26日に開かれていました。
しかし、1590年の小田原征伐で北条氏が没落し、吉良氏の世田谷城も廃止されたため、楽市は急速に衰退しました。しかし、近郊農村の需要を満たすため、農具市として年末に開かれる歳市に形を変えて存続しました。明治時代に新暦が採用された後、ボロ市は1月にも開催されるようになりました。昭和10年代の最盛期には、約2000の露店が並ぶ大規模な市となりました。
1994年9月には世田谷区から、2007年2月には東京都から、それぞれ無形民俗文化財として指定されました。2020年及び2021年は新型コロナウィルス対策のため、ボロ市の開催が中止されました。
1975年から発売されている「代官餅」は、ボロ市の会場でしか製造・販売されない希少な餅で、その美味しさから大変な人気を誇ります。味はあんこ、きなこ、からみの三種類があり、昼食時には長蛇の列ができるほどの人気です。1時間以上並ぶことも珍しくありません。
2011年12月以降のボロ市では、東日本大震災の影響を受けて開催時間を1時間短縮し、20時終了としています。また、被災地の復興を支援するため、会場内で復興支援物産展を開催しています。