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蘆花恒春園

(ろか こうしゅんえん)

蘆花恒春園は、東京都世田谷区に位置する都立公園です。一般には、周囲に広がる広場なども含めて「芦花公園」と呼ばれることが多いこの公園は、明治から大正にかけて活躍した文豪、徳冨蘆花の旧宅を中心に、武蔵野の自然を色濃く残した公園として広く知られています。

公園の概要と歴史的背景

蘆花恒春園は、徳冨蘆花の旧宅が東京市(現・東京都)に寄贈されたことから、一般に公開されるようになりました。蘆花は「不如帰」「自然と人生」「みみずのたはこと」などの名作で知られ、その晩年を過ごした住まいと庭、そして蘆花夫妻の墓地が、この公園内に保存されています。

蘆花は、明治40年に東京の青山高樹町から、土と親しむ生活を求め、千歳村粕谷(現在の世田谷区粕谷)に移り住み、「恒春園」と名付けられたこの場所で、約20年間にわたり、晴耕雨読の生活を送りました。昭和11年の蘆花没後10周年を記念し、妻の愛子夫人から旧邸地が東京市に寄贈され、昭和13年から公園として一般公開が始まりました。

徳冨蘆花の旧宅と生活

蘆花恒春園内には、徳冨蘆花の旧宅が保存されており、蘆花が晩年に過ごした晴耕雨読の生活を垣間見ることができます。この旧宅は、老朽化のため昭和58年から60年度にかけて改修され、昭和61年3月10日には東京都の史跡に指定されました。

旧宅内では、蘆花が実際に使用していた家具や農工具、彼の手による執筆活動の道具などが展示されており、蘆花の生活や創作活動の一端に触れることができます。

花の丘区域と季節の彩り

蘆花恒春園には、「花の丘区域」と呼ばれるエリアがあり、ここでは地域の住民や小学生たちと協働で育てた季節の花々が咲き誇ります。蘆花が生前好んで育てていた花々も含まれ、四季折々の彩りを楽しむことができます。

特に長野県高遠町から贈られた高遠小彼岸桜や藤棚、萩のトンネルなどが美しく、中央の花壇にはコスモスやヒマワリ、菜の花などが植えられ、訪れる人々の目を楽しませます。また、園内には随所に休憩所が設けられており、風に吹かれながら花々を眺めて一息つくのも、心地よいひとときとなるでしょう。

蘆花記念館

蘆花記念館は、徳冨蘆花の遺品を保存・展示するために昭和34年に建設されました。この記念館では、蘆花の作品、原稿、手紙、農工具などが展示されており、訪れる人々に蘆花の文学的業績や人間性を紹介しています。

蘆花夫妻の墓

蘆花恒春園の東側に小径を辿ると、徳冨蘆花と妻・愛子夫人の墓があります。この墓は、蘆花の長兄である徳富蘇峰が銘を刻んだ自然石の墓碑で、周囲はクヌギの木立に囲まれた静かな場所です。ここでは、蘆花夫妻の安息の場として、訪れる人々に穏やかな時間を提供しています。

草地広場とフィールドアスレチック

蘆花恒春園内には、広大な草地広場があり、家族でのピクニックやリラックスしたひとときを楽しむのに最適な場所となっています。広場は雑木林に囲まれており、自然の中でウォーキングやジョギングを楽しむ人々の姿も見られます。

また、環八通り沿いにはフィールドアスレチック広場が設けられており、多種多様なアスレチック施設が整備されています。ここでは、子供から大人まで、楽しみながら体を鍛えることができる場所として人気を集めています。

児童公園と竹林

蘆花恒春園内には、子供たちに人気の児童公園もあります。スベリ台、ブランコ、シーソー、砂場などの遊具が揃っており、いつも子供たちの元気な笑い声が響いています。

また、園内には蘆花が自ら植えたモウソウチクの竹林があります。この竹林は、クヌギやコナラなどの雑木とともに、武蔵野の自然を感じさせる風景を形成しています。竹林や雑木に囲まれた茅葺きの母屋や書斎は、蘆花が愛した静寂で穏やかな生活を彷彿とさせます。

世田谷文学館

蘆花恒春園から徒歩約10分の場所には、世田谷文学館があります。この文学館では、世田谷ゆかりの文学者約55人の原稿、書簡、初版本、写真、遺品などが常時展示されており、文学ファンにとっては見逃せないスポットとなっています。年間を通してさまざまな催し物が行われ、世田谷の文学文化を広く紹介しています。

公園内の主な植物と花の見ごろ

蘆花恒春園内には、クヌギ、クスノキ、サワラ、アキニレ、ポプラ、トウカエデ、高遠小彼岸桜、アナベル、モウソウチク、ケヤキなど、さまざまな植物が植えられています。これらの植物は季節ごとに異なる表情を見せ、訪れる人々を楽しませています。

春: サクラ、チューリップ、ブラシノキ、ナノハナ、タカトオコヒガンザクラが咲き誇ります。

夏: サルスベリ、ムクゲ、クチナシ、ヒマワリが美しく咲きます。

秋: イチョウ、ハギ、イロハモミジ、トウカエデ、コスモス、ドウダンツツジ、ユリノキが彩りを添えます。

冬: ウメ、ロウバイが寒さの中で可憐な花を咲かせます。

蘆花恒春園の歴史

蘆花恒春園の歴史は、1907年に徳冨蘆花が青山から千歳村粕谷に移り住み、「恒春園」と名付けたことに始まります。蘆花はこの地で、1927年に亡くなるまでの約20年間を過ごしました。1937年、蘆花の遺族が東京市に邸地を寄付することを申し入れ、翌1938年に蘆花恒春園として公園が開園しました。その後、周辺の土地も順次公園として整備され、現在に至ります。

アクセスと施設利用案内

蘆花恒春園は、京王線の芦花公園駅または八幡山駅から徒歩15分ほどの場所にあります。公園は常時開園しており、入園料は無料です。蘆花記念館などの施設も、日中の時間帯に無料で公開されています。

このように、蘆花恒春園は、文豪・徳冨蘆花の足跡をたどるだけでなく、自然豊かな環境の中で、四季折々の花々や植物を楽しむことができる魅力的な公園です。家族連れやウォーキング愛好者、そして文学に興味を持つ人々にとって、心地よい時間を過ごすことができる場所となっています。

Information

名称
蘆花恒春園
(ろか こうしゅんえん)

下北沢・三軒茶屋

東京都