NHK放送博物館は、日本放送協会 (NHK)が運営する、日本の放送に関する歴史と技術を展示する専門博物館です。1956年に開館し、放送の歴史をたどりながら、貴重な資料や映像、機材を通じて放送の進化を紹介しています。
1956年(昭和31年)3月3日、NHK放送博物館は世界初の放送専門博物館として開館しました。博物館は、NHK発祥の地である東京都港区愛宕山に位置し、東京放送局旧局舎を利用して設立されました。当時の放送局舎は、NHKの初期の歴史を象徴する重要な建物でしたが、1968年(昭和43年)には敷地内に新たに4階建てのビルが建設され、現在使用されている施設に引き継がれました。
NHK放送博物館は、開館当初はNHK放送文化研究所と同じ建物に入っていたため、展示スペースは限られていました。しかし、2002年に放送文化研究所が近隣の愛宕グリーンヒルズMORIタワーに移転したことにより、全フロアを展示スペースとして利用できるようになり、2003年にはリニューアルオープンしました。また、2016年にはNHKの放送開始90周年を記念して、さらなるリニューアルが行われ、現代的な展示と最新技術を取り入れた施設となりました。
NHK放送博物館は、約3万点を超える音声・映像資料を所蔵しています。その中には、歴史的な玉音盤をはじめ、各時代の放送機器や映像機材が含まれています。これらの資料は、放送の歴史を物語る貴重な遺産として保存・展示されています。
博物館では、各時代に使用されたラジオ受信機やテレビ受像機が展示されており、それぞれの機器がどのように進化してきたかを実際に目で確認することができます。特に、これらの機器の多くは動態保存されており、動作状態を維持したまま展示されています。
博物館の入口には、テレビ放送送信用アンテナが4基展示されています。これらのアンテナは、放送技術の進化を象徴するものです。具体的には、東京タワー最頂部に設置されていたアナログ放送用スーパーターンスタイル(ST)アンテナ、デジタル放送用の水平偏波双ループアンテナ、NHK福井放送局の総合テレビ放送用アナログ放送用STアンテナ、そして日本初のテレビアンテナが展示されています。
さらに、NHK放送博物館には最新の8Kスーパーハイビジョン技術を体験できる「愛宕山8Kシアター」が併設されています。このシアターでは、8K映像による圧倒的な映像美を楽しむことができ、放送技術の最前線を体感することができます。
NHK放送博物館は、2013年3月29日深夜(3月30日未明)にNHK総合で放送されたマルチチャンネルドラマ『放送博物館危機一髪』のロケ地として使用されました。このドラマは、当時SKE48のメンバーだった松井玲奈さんが主演し、博物館内で撮影が行われました。
また、2017年5月17日放送のNHK総合『探検バクモン』でも、NHK放送博物館が紹介されました。この回では、司会の爆笑問題とゲストの中村メイコさんが博物館を訪れ、NHKの伝説的番組に関連するお宝が紹介されました。特に、玉音放送の録音盤や、かつての人気番組『ジェスチャー』の問題フリップ、そして『おしん』に寄せられた視聴者からの手紙など、貴重な資料が取り上げられました。
NHK放送博物館の開設当時の様子や、実際に展示されている機材が使用されている様子は、1958年にNHKが制作した短編映画『電波の歩み』の中で記録されています。この映画は、放送技術の進化とその背景にある努力を描いた作品であり、NHK放送博物館の歴史を知る上で貴重な資料となっています。
NHK放送博物館は東京都港区愛宕二丁目1-1に位置し、開館時間は午前9時から午後4時30分までです。月曜日と年末年始を除き、毎日開館しており、入場料は無料です。現在の館長は川村誠氏で、2020年9月よりその役職を務めています。
NHK放送博物館は、複数の公共交通機関からアクセスが可能です。最寄り駅は、東京地下鉄日比谷線の神谷町駅および虎ノ門ヒルズ駅で、それぞれから徒歩7分の距離にあります。また、都営地下鉄三田線の御成門駅からは徒歩10分、東京地下鉄銀座線の虎ノ門駅からは徒歩13分です。