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東京都 庭園美術館

(とうきょうと ていえん びじゅつかん)

東京都庭園美術館は、東京都港区白金台に位置する都立美術館で、旧朝香宮邸(きゅうあさかのみやてい)としても知られています。この美術館は、その美しい庭園とともに、アール・デコ様式の建物を有し、歴史的価値の高い文化財としても評価されています。

沿革と歴史的背景

朝香宮邸の誕生と歴史

東京都庭園美術館が建つ土地は、もともと白金御料地と呼ばれ、江戸時代には高松藩松平家の下屋敷がありました。その後、明治期には陸軍の火薬庫が一時的に置かれ、最終的には皇室財産となりました。この土地に建設された旧朝香宮邸は、香淳皇后の叔父である朝香宮鳩彦王がパリ遊学後に設計・建設し、1947年の皇籍離脱まで居住していた邸宅です。朝香宮邸は、1929年(昭和4年)頃から建築準備が始まり、1933年(昭和8年)5月に完成しました。施工は戸田組(現在の戸田建設)によって行われました。

戦後の利用と美術館への転用

朝香宮一家が邸宅を退去した後、この建物は1947年から1950年にかけて、吉田茂によって外務大臣公邸(総理大臣仮公邸)として使用されました。その後、1950年に西武鉄道に売却され、1955年には白金プリンス迎賓館として開業し、国賓・公賓来日の際の迎賓館として使用されました。しかし、1971年にホテル建設計画が発表されると反対運動が起こり、その結果、1974年にはプリンスホテルの本社として使用された後、1981年に東京都に売却されました。そして、1983年(昭和58年)に東京都庭園美術館として一般公開されることになりました。

改修工事と再開館

2011年から改修工事のため長期休館を余儀なくされましたが、2014年11月22日に一部再開し、その後2018年3月21日には全面的に再開館しました。このリニューアルによって、建物の保存状態がより良好になり、訪れる人々にとってより魅力的な美術館へと生まれ変わりました。

施設概要

本館の特徴と設計

本館である旧朝香宮邸は、鉄筋コンクリート造2階建て(一部3階建て)、地下1階の構造で、その外観はシンプルですが、内装には当時流行していたアール・デコ様式がふんだんに取り入れられています。この建物は、1993年に東京都の有形文化財に指定され、2015年には国の重要文化財に指定されました。建築設計は宮内省内匠寮が担当し、主要な室内の内装はフランスのインテリアデザイナー、アンリ・ラパンによって手掛けられています。

アール・デコ様式の魅力

朝香宮邸の内装は、パリ万国博覧会で出会ったアール・デコ様式に強い影響を受けたもので、壁面のデザインや照明器具、扉の装飾に至るまで、その美しさが随所に見られます。特に、玄関の女神像ガラスレリーフや大客室のシャンデリアは、フランスの宝飾デザイナーでありガラス工芸家でもあったルネ・ラリックの作品であり、その精緻なデザインは訪れる人々を魅了します。

朝香宮邸の内部構造

1階には、玄関、大広間、次室、小客室、大客室、大食堂などの接客スペースが配置され、2階には殿下の書斎や居間、寝室、妃殿下の居間や寝室、姫宮と若宮の私室が設けられています。屋上には「ウィンターガーデン」と呼ばれる温室があり、特別な空間を提供しています。通常の展示では、建物全体の半分ほどが展示室として公開されており、その美しい内装と歴史的背景を楽しむことができます。

新館(管理棟)とその役割

新館は、1963年に迎賓館として鉄筋コンクリート造4階建てで建設されましたが、2008年まで講演会やコンサートなどに使用されていました。しかし、2009年の耐震診断で「耐震性に問題がある」と指摘されたため閉鎖されました。その後、本館の改修工事に合わせて2012年1月に解体され、新たに鉄骨造2階建ての管理棟が建設されました。この管理棟には美術館の事務所が移転され、本館の公開スペースが拡大されました。

茶室と日本庭園の魅力

茶室「光華」とその歴史

東京都庭園美術館の日本庭園内には、1938年(昭和13年)に完成した茶室「光華(こうか)」があります。この茶室は、木造瓦葺平屋建てであり、静かな日本庭園の中で、伝統的な茶の湯の文化を感じることができます。また、庭園内には倉庫と自動車庫も本館と同時に建設され、建物全体が一体となって美しい景観を作り出しています。

庭園の多様なエリアと季節ごとの楽しみ

庭園は、芝生広場、日本庭園、西洋庭園の3つのエリアで構成されており、訪れる人々は季節ごとに異なる花々を楽しむことができます。また、本館などの施設に入館せず、庭園のみの入場も可能です。1964年には「マーブルプール」という大理石で作られた円形のプールが庭園内に設置されましたが、現在は埋め立てられています。それでも、プールの縁の大理石は今なお残されており、かつての面影を感じることができます。

展示内容と文化財指定

朝香宮邸の展示内容

東京都庭園美術館では、朝香宮家由来の建物や家具、内部装飾そのものが芸術品として展示されており、「美術館」としての名にふさわしい展示内容が提供されています。常設展示は行われていませんが、企画展示が年に5〜6回開催され、朝香宮邸やアール・デコ様式に関連する資料を中心に収集・展示されています。また、年に一度の「建物公開」時には、館内撮影も可能です。

重要文化財としての評価

旧朝香宮邸は、その建物の美しさと歴史的価値から、国の重要文化財に指定されています。指定文化財には、本館、茶室、倉庫、自動車庫、正門などが含まれており、宅地も広大な面積を有しています。このように、東京都庭園美術館はその建物や庭園が一体となって、歴史と文化を伝える貴重な存在として保存されています。

交通アクセス

東京都庭園美術館へのアクセスは非常に便利です。JR山手線目黒駅から徒歩10分、東京メトロ南北線・都営三田線白金台駅からは徒歩5分と、都心からのアクセスが良好であり、多くの人々が訪れやすい場所に位置しています。

まとめ

東京都庭園美術館は、旧朝香宮邸としての歴史と、アール・デコ様式の美しい建築が融合した、特別な場所です。広大な庭園や、細部にまでこだわった内装、そして貴重な文化財としての価値が多くの訪問者を引きつけています。都心の喧騒から離れ、静かな自然と文化の中で、ゆったりとした時間を過ごすことができるこの美術館は、訪れる価値のある場所として多くの人々に愛されています。

Information

名称
東京都 庭園美術館
(とうきょうと ていえん びじゅつかん)

六本木・赤坂

東京都