サントリー美術館は、東京都港区赤坂九丁目の東京ミッドタウン内に位置する、日本の古美術を中心とした私立美術館です。この美術館は、公益財団法人サントリー芸術財団によって運営されており、日本の文化と美術の魅力を多くの人々に伝える役割を果たしています。
サントリー美術館の収蔵品は、日本の古美術を中心に約3,000件を収蔵しており、その中には国宝1件、重要文化財15件、重要美術品21件が含まれています。一般的に、古美術を収蔵する美術館は戦前の実業家のコレクションを母体とすることが多いのですが、サントリー美術館は戦後に一つのテーマをもって収集された点が特徴的です。
代表的なコレクションには、江戸切子や薩摩切子、エミール・ガレのガラス工芸品があり、特に「ひとよ茸ランプ」などはその象徴的な作品です。これらの収蔵品は、美術館のテーマである「生活の中の美」を反映しており、来館者に深い感動を与えています。
サントリー美術館の収蔵品には、数多くの貴重な作品が含まれており、以下はその主なものです。
浮線綾螺鈿蒔絵手箱(ふせんりょうらでんまきえ てばこ): この手箱は、日本の工芸技術の頂点を示す作品であり、その精緻な螺鈿細工と蒔絵技法は、見る者を圧倒する美しさです。
紙本著色病草紙断簡(不眠の女): この作品は、平安時代の絵巻物の断簡であり、その繊細な表現と色彩が特徴です。
紙本著色源順像(みなもとのしたごうぞう): この絵巻物は、佐竹本三十六歌仙絵巻の一部で、古典文学に関連する重要な作品です。
紙本墨画善教房絵詞: 中世の宗教画の一例で、その筆致は力強く、霊性を感じさせます。
紙本著色酒伝童子絵巻 狩野元信筆: 狩野派の代表的な作品で、3巻から成るこの絵巻物は、色彩豊かで物語性に富んでいます。
紙本金地著色泰西王侯騎馬図 四曲一双: 神戸市立博物館本と対をなす作品で、その豪華な装飾と大胆な構図が特徴です。
紙本金地著色南蛮人渡来図 六曲一双: 狩野山楽が筆をとったと推定されるこの作品は、南蛮文化の影響を色濃く受けた歴史的資料です。
色絵花鳥文八角大壺 伊万里: 伊万里焼の代表作で、その鮮やかな色彩と細やかなデザインが見事です。
染付松樹文三脚皿 鍋島: 鍋島焼の逸品で、松樹の文様が施された三脚皿は、江戸時代の工芸技術の粋を集めた作品です。
白藍絵金彩薄文蓋物 尾形乾山: 尾形乾山の作品で、その白藍と金彩の美しい対比が特徴です。
これらの作品は、日本の文化財としての価値が非常に高く、サントリー美術館のコレクションの中でも特に重要な位置を占めています。2024年度には新たに1件が重要文化財に指定される予定であり、収蔵品の価値は今後もさらに高まることでしょう。
サントリー美術館は、1961年に飲料メーカーであるサントリーの社長、佐治敬三が「生活の中の美」をテーマとして設立したことに始まります。最初の開館地は千代田区丸の内のパレスビル内でしたが、その後、1975年に港区赤坂のサントリービルへと移転しました。さらに、2005年にサントリー東京支社が新たにお台場へ移転することに伴い、一時的に休館し、その後、2007年3月30日に再開発された「東京ミッドタウン」内に新しく「サントリー美術館」として再オープンしました。
美術館は2019年11月に再度休館し、改修工事が行われました。そして2020年7月にリニューアルオープンしました。今回の改修では、天井の耐震性が強化されるとともに、室内照明がLEDに変更されました。さらに、エントランスや併設されたショップとカフェが一新され、スタッフの制服も新たにデザインされました。リニューアルのデザイン監修は、隈研吾建築都市設計事務所が担当し、美術館とその周辺の東京ミッドタウンガーデンサイト全体の設計を手掛けました。
現在、サントリー美術館は、六本木にある他の2つの美術館、森美術館と国立新美術館と共に「六本木アート・トライアングル」として、アートを愛する多くの人々に親しまれています。
サントリー美術館は、六本木エリアにある森美術館や国立新美術館とともに「六本木アート・トライアングル」を構成しています。この3館が連携することで、東京の文化的な発信地としての役割を果たしており、多くのアート愛好者にとって必見のスポットとなっています。
まとめ
サントリー美術館は、設立から60年以上の歴史を持つ日本の古美術を中心とした美術館です。収蔵品の質の高さや、佐治敬三のビジョンに基づく「生活の中の美」というテーマが、訪れる人々に深い感動を与えています。リニューアルを経てさらに魅力的な空間となったサントリー美術館は、今後も多くの人々に愛され続けることでしょう。