道玄坂は、東京都渋谷区に位置する町名であり、渋谷駅ハチ公口から目黒方面へ向かう上り坂の名称でもあります。道玄坂という名前は、鎌倉時代の武士である和田義盛の一族、大和田太郎道玄に由来する説や、道玄庵という寺の庵主に因む説など、複数の由来が伝えられています。
道玄坂は、渋谷駅の西側に広がる丘陵部に位置する繁華街で、町名としては道玄坂一丁目および二丁目に分かれています。地区としては、北に宇田川町、東にJR渋谷駅、南に桜丘町と南平台町、西に円山町と接しています。地域の大部分は緩やかな傾斜地で、渋谷川方向に向かって下る地形をしています。
1970年代半ば頃までは多くの民家と商店が混在する地域でしたが、近年では商業地として発展し、店舗やビルが多く立ち並ぶようになりました。また、近年では業務系フロアを多く含むビルも目立つようになり、地域全体が発展しています。
坂道としての道玄坂は、渋谷駅前から玉川通りの道玄坂上交差点に至る上り坂で、かつては玉電が坂の中腹から道玄坂上までを走っていました。現在では、玉電の代替となった東急田園都市線が坂の地下を通過しています。
江戸時代の『江戸町づくし』には、道玄坂が「行人坂」として紹介されており、坂下には渋谷駅があり、坂沿道には多くの商業施設や飲食店が立ち並んでいます。特に東急109やBunkamuraなどが有名で、地域全体が活気に満ちています。また、道玄坂小路や百軒店には風俗店や飲食店が多く、狭い範囲ながらも多様な魅力を持つ地域です。
道玄坂の名前の由来には複数の説があります。一つは、和田義盛の一族であった大和田道玄がこの地域に住み着き、山賊として生計を立てていたことに由来する説です。もう一つは、道玄庵という寺の庵主がこの坂に庵を結んでいたことに由来する説があります。
江戸時代末期に著された『江戸名所図会』には、「道玄あるいは道元に作る。里諺に云、大和田氏道玄は和田義盛が一族なり…」と記されており、道玄が山賊としてこの地域に住み着いていたことが紹介されています。
道玄坂地区の歴史は古く、1932年に東京府豊多摩郡渋谷町が東京市渋谷区に編入され、渋谷の一部となりました。その後、京王井の頭線の開通や首都高速3号渋谷線の開通により、交通の要所として発展しました。また、東急百貨店本店の開店やSHIBUYA 109の開業など、商業施設の発展により、現在の道玄坂は渋谷のシンボルとも言える地域となりました。
2019年には渋谷ソラスタや渋谷フクラスなどの新しい商業施設が開業し、地域の発展がさらに加速しています。
道玄坂一丁目、二丁目を含む渋谷の繁華街一帯は、2012年に「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」に基づき、客引きやスカウト行為などが禁止される区域に指定されました。さらに、2019年には「暴力団排除特別強化地域」に指定され、暴力団との関わりが厳しく取り締まられるようになりました。
2023年には、道玄坂二丁目で発生した犯罪認知件数が259件と報告されており、東京23区内でも特に犯罪が多い地域の一つとなっています。
道玄坂は渋谷駅に近接しており、鉄道やバスでのアクセスが非常に便利です。渋谷駅には、JR山手線や埼京線、京王井の頭線、東急田園都市線、東京メトロ半蔵門線など、多くの路線が乗り入れており、東京の主要な交通拠点として機能しています。また、首都高速3号渋谷線や国道246号が近くを通っており、自動車でのアクセスも良好です。