QFRONTは、東京都渋谷区にある商業ビルで、渋谷スクランブル交差点に面した立地が特徴です。この建物は渋谷駅周辺のランドマークの一つであり、建物脇には渋谷センター街の入口もあります。
QFRONTが建設される前、この場所には1960年に竣工した「峰岸ビル」が存在していました。このビルには東海銀行や渋谷宝塚劇場が入居していましたが、渋谷スクランブル交差点という好立地にもかかわらず、目立たない存在でした。このビルの再開発は、渋谷を拠点とする東急百貨店グループにとって長年の課題でしたが、敷地面積が約800平方メートルと限られていたため、通常のショッピングセンターとしての開発が難しい状況でした。
1990年代に入り、東急グループは渋谷の再開発を進める中で、QFRONTの旧建物の建て替え計画が浮上しました。アール・アイ・エーの近藤正一氏がこの計画に関与し、建物のコンセプトを模索する中で、東急ハンズの業態開発に参加していた浜野安宏氏が、メディアやデジタル関連のテナントを集積させるアイデアを提案しました。彼は、建物の外観を透明もしくは半透明のファサードで覆い、巨大な映像やアートで包み込むデザインを考案しました。
こうして生まれたQFRONTの建物は、「不在建築」という独特のコンセプトに基づいて設計されました。建物内部はラチス構造による無柱空間が広がり、限られた敷地面積を最大限に活用するデザインが施されています。地下2階から地上8階までの10層からなるこのビルは、東宝の映画館「渋谷シネフロント」(2010年閉館)を除くすべてのフロアにカルチュア・コンビニエンス・クラブが入居し、旗艦店として「SHIBUYA TSUTAYA」が設けられています。
QFRONTの最大の特徴は、ダブルスキン・カーテンウォールに内蔵された街頭ビジョン「キューズ・アイ(Q's EYE)」です。2005年に老朽化に伴いビジョンの交換が行われ、2013年には「メインビジョン」の周囲に新たに「アートビジョン」が設置されました。これにより、HD画質の映像にも対応可能となり、両ビジョンを連動させることで1200インチの巨大画面として使用することができるようになりました。
さらに、2020年にはビルの最上部に「渋谷コークビジョン」が設置されました。これは、日本コカ・コーラが手掛けた透過型LEDビジョンで、立体感のある映像を上映することが可能です。このシステムの導入および運営は株式会社シーマが担当しています。
QFRONTには、多彩なテナントが入居しています。1・2階にはスターバックス コーヒーSHIBUYA TSUTAYA店があり、地下2階から地上6階には「SHIBUYA TSUTAYA」が展開されています。7階には「TSUTAYA」と「WIRED CAFE」のコラボ店舗「WIRED TOKYO 1999」があり、8階にはTSUTAYAの業務スペースと配信イベントスペースが配置されています。
以下に、QFRONTのフロア構成と主なテナントを紹介します。
この階には、TSUTAYAの業務スペースや配信イベント用のスペースが設けられています。
オープン当初は東宝の映画館「渋谷シネフロント」が入居していましたが、2010年に閉館し、その後はTSUTAYAが入居しました。
書籍を中心としたフロアです。
DVDレンタルを行っているフロアです。
アニメやアジアTVドラマなどを取り扱うフロアです。
邦楽や洋楽のCDレンタルを行っています。
CDやDVDの販売が行われているほか、スターバックスコーヒーも併設されています。
1階も2階同様、CDやDVDの販売とスターバックスコーヒーが入っています。
コミックやライトノベルを中心に取り扱っています。
ゲームやアニメ関連商品が豊富に揃っています。
ビルの機械室が設置されています。
QFRONTは、2023年10月30日をもって全面リニューアルのために休店となりました。リニューアルオープンは2024年4月25日を予定しており、新しいQFRONTの姿が楽しみです。
QFRONTは、渋谷のランドマークとして長年愛されてきた商業ビルです。その独特な建築コンセプトと、最新の街頭ビジョンが設置された外観は、多くの人々に親しまれています。リニューアル後のQFRONTが、どのような新しい姿を見せてくれるのか、期待が高まります。