渋谷スクランブル交差点は、東京都渋谷区の東日本旅客鉄道(JR東日本)渋谷駅の北西側に位置する、日本を代表するスクランブル交差点です。正式名称は渋谷駅前交差点で、「渋谷駅前のスクランブル交差点」などと表記されることもあります。この交差点は「世界で最も有名な交差点」として知られ、1回の歩行者用青信号で1000人以上が行き交うため、「世界で最も混雑している交差点」ともいわれます。日本における流行の発信地であるとともに、外国人観光客にも人気のスポットとなっています。
渋谷スクランブル交差点は、宮益坂から道玄坂に至る東西の通りと、渋谷駅西口駅前から渋谷公園通りに至る南北の通りが交わる位置にあります。さらに北西方向には渋谷センター街が伸びており、計10本の車線が交差し、5本の横断歩道が引かれた五叉路となっています。周囲は渋谷区に位置しており、北西側が宇田川町、北東側が神南一丁目、南側が道玄坂二丁目です。歩行者にとって、この交差点は渋谷駅ハチ公改札を出てすぐのハチ公前広場と道玄坂、センター街、公園通りなど各方面の繁華スポットを連絡する交通の要所であり、渋谷で最も混み合う地点です。
交差点の南東角には忠犬ハチ公像があり、ハチ公前広場は渋谷のシンボルとして知られています。また、この広場とJR渋谷駅ハチ公改札前は、待ち合わせ場所としても定番のスポットです。1973年にスクランブル交差点として整備されたこの交差点は、世界有数の巨大交差点として、斜め方向の横断歩道も含めて、多くの人々が行き交う場となっています。
交差点の南西角には複合ビルである渋谷駅前ビルがあり、2018年時点ではロクシタンやファミリーレストランのガストなどが入居しています。交差点から西に向かうと、渋谷109を正面に見る三差路(道玄坂下交差点)となり、左が道玄坂、右が文化村通りとなります。
交差点の北西角には、商業施設QFRONTが建ち、その正面全体のガラス壁面には「Q'S EYE」と呼ばれる大型デジタルサイネージが埋め込まれています。建物内にはTSUTAYAやスターバックスなどが入居しており、さらに北西方向にはセンター街が広がります。
交差点の北東角には、薬・化粧品のディスカウントストア「三千里薬品」が1962年から店を構える老舗として存在しています。左隣には天津甘栗を販売する店があり、かつては三千里薬品で一定額以上の買い物をすると、甘栗の引換券がもらえるサービスもありました。交差点から東へ進むと、JR線のガードをくぐり宮益坂へと向かいます。
渋谷スクランブル交差点は「世界一混み合う交差点」として知られており、深夜・早朝を問わず、人通りが絶えることはほとんどありません。2016年の渋谷センター街のウェブサイトによると、1回の青信号(約2分間隔)で最大3000人の歩行者が行き交い、平日には26万人、休日には39万人がこの交差点を通過するとされています。また、2012年の調査によれば、1週間で150万人もの人々がこの交差点を利用するとのデータもあります。
一方で、自動車の交通渋滞は、ラッシュ時であっても滅多に起きません。これは、渋谷スクランブル交差点が歩行者中心の交差点として設計されているため、自動車の流れが制約されることが少ないためです。
渋谷スクランブル交差点は、膨大な通行人数やニュース番組、天気予報での頻繁なテレビ中継により、広告の露出効果が非常に高いスポットとなっています。交差点の周囲には大型屋外ビジョン(デジタルサイネージ)が設置され、日夜、コマーシャル映像やミュージックビデオが流れています。例えば、QFRONTの「Q'S EYE」や三千里薬品の「グリコビジョン」などが、その代表的な例です。
2019年時点で、交差点を囲むように6面の大型ビジョンが配置されており、信号待ちの通行人に向けて、常に映像が流れ続けています。これらの広告スペースは非常に高価であり、例えば「シブハチヒットビジョン」の場合、1週間の出稿料が約300万円とされています。
渋谷スクランブル交差点は、「Shibuya Crossing」として海外の観光ガイドで紹介され、訪日観光客にとって有名なスポットとなっています。タイムズスクエアがニューヨーク市の顔として知られるように、この交差点は東京、ひいては日本を代表する景観として広く認識されています。交差点の歩行者用信号が青になると、四方から押し寄せる群衆が整然と散ってゆく様子は、外国人にとって日本の秩序を象徴する光景として映り、多くの観光客がその瞬間をカメラに収めようと訪れます。
この交差点が世界的に広く知られるきっかけとなったのは、ソフィア・コッポラ監督の2003年の映画『ロスト・イン・トランスレーション』です。この映画の撮影場所として利用されたことで、渋谷が日本を代表するイメージとして海外に広く知られることとなりました。その後も、この交差点は多くの映画やテレビドラマ、プロモーションビデオの撮影地として登場し、日本映画のみならず、海外映画にも頻繁に使用されています。
また、2016年リオデジャネイロオリンピックの閉会式では、渋谷スクランブル交差点が映像で紹介され、東京の象徴的な風景として世界に向けて発信されました。これにより、この交差点はさらに国際的な注目を集め、東京の名所としての地位を確固たるものにしました。