江戸東京たてもの園は、江戸から昭和初期にかけての歴史的な建造物を保存し、展示するために設立された野外博物館です。東京都小金井市に位置し、都立小金井公園内にあります。失われつつある貴重な建物を移築復元し、一般に公開しています。
江戸東京たてもの園は、東京都墨田区にある江戸東京博物館の分館として運営されています。指定管理者制度の下、公益財団法人東京都歴史文化財団が管理・運営を行っています。この施設では、江戸時代から昭和初期にかけての建造物が展示されており、建物内部にはその時代の生活文化が再現されています。
小金井公園にはかつて、江戸時代の農家や古代住居を移築・展示する「武蔵野郷土館」がありました。この施設は、1954年(昭和29年)に井の頭恩賜公園から移転し開館したものです。武蔵野郷土館は1991年(平成3年)に閉館し、その後、1993年(平成5年)3月28日に「江戸東京たてもの園」として新たに開園しました。
江戸東京たてもの園の設立は、江戸東京博物館の開館に合わせて行われました。開園当初は12棟の建物が復元されていましたが、その後も移築復元が進み、最終的に2013年(平成25年)にデ・ラランデ邸が完成し、合計30棟の建物が展示されています。これにより、江戸から昭和初期にかけての多様な建物が保存され、その歴史的価値が一般に紹介されています。
江戸東京たてもの園の展示は、単なる建築物の保存にとどまらず、その時代の生活文化を再現することで、訪れる人々に当時の生活様式や風俗を伝える役割を果たしています。さらに、この施設は映画やドラマのロケ地としても利用されており、宮崎駿監督の映画『千と千尋の神隠し』では、たてもの園の建物が作画の参考にされました。
江戸東京たてもの園内は、大きく西ゾーン、センターゾーン、東ゾーンの3つに分けられています。それぞれのゾーンには、異なる時代や用途に応じた建物が展示されています。
センターゾーンには、歴史的に重要な建造物が多く集められています。例えば、紀元二千六百年記念式典のために造営された旧光華殿(現・江戸東京たてもの園ビジターセンター)や、3代将軍徳川家光の側室自証院を祀った旧自証院霊屋などがあります。これらの建物は、格式と歴史的価値を備えたものとして展示されています。
西ゾーンでは、武蔵野の農家や山の手の住宅が展示されています。例えば、昭和初期に建てられた常盤台写真館や、三井八郎右衞門邸などがその代表です。また、農家としては、江戸時代後期の多摩郡野崎村(現・三鷹市野崎)の吉野家や、世田谷区岡本にあった江戸時代中期の綱島家が展示されています。
東ゾーンでは、下町の町並みが再現され、商家や銭湯、居酒屋などが展示されています。特に、昭和初期に建てられた足立区千住の銭湯「子宝湯」や、台東区下谷にあった庶民的な居酒屋「鍵屋」が注目されます。また、昭和30年代後半の生活を再現した小寺醤油店や、武居三省堂(文具店)など、当時の商業活動が伺える建物も展示されています。
江戸東京たてもの園は、その歴史的な背景と雰囲気から、映画やドラマのロケ地としても度々使用されています。例えば、2006年のドラマ『ザ・ヒットパレード〜芸能界を変えた男・渡辺晋物語〜』などが撮影されました。また、園内のシンボルキャラクター「えどまる」は、宮崎駿監督のデザインによるものです。
江戸東京たてもの園は、東京都の貴重な歴史的建造物を保存し、次世代へと伝える重要な施設です。失われつつある建物の保存を通じて、歴史的な価値を再認識し、訪れる人々にその文化的背景を伝え続けています。ぜひ訪れて、江戸から昭和初期にかけての日本の歴史と文化を体感してみてください。