美術館の歴史と設立経緯
当初、松岡美術館は新橋にある自社ビル内に開設されました。しかし、平成12年(2000年)4月には、現在の白金台に新たな美術館が建設され、創立者の私邸跡地へと移転しました。創設者である松岡清次郎(1894年 - 1989年)は、松岡地所の創立者であり、骨董品収集に情熱を注いでいました。
彼が本格的に美術品の収集を始めたのは、78歳の時、ヨーロッパでのオークション経験がきっかけでした。特に「青花双鳳草虫図八角瓶」(元代作)と「青花龍唐草文天球瓶」(明・永楽期作)の購入が、美術館設立の決意を固めさせたと言われています。
コレクションの概要
松岡美術館のコレクションは、非常に多岐にわたっています。ブールデルやヘンリー・ムーアといった現代彫刻から、ガンダーラ石造彫刻や中世ヒンドゥー教彫刻に至るまで、幅広い分野の作品が収蔵されています。また、中国・朝鮮・日本・ベトナムの東洋陶磁器や、室町時代から昭和時代にかけての日本絵画、さらにルノワールやモディリアーニ、ヴラマンクなどのフランス近代絵画も展示されています。
主要な収蔵品
西洋画
松岡美術館には、以下のような名だたる西洋画家の作品が収蔵されています:
- クロード・モネ『ノルマンディの田舎道』1868年
- ピエール=オーギュスト・ルノワール『リュシアン・ドーデの肖像』 パステル・紙 1879年
- ウジェーヌ・ブーダン『海、水先案内人』1884年
- アルマン・ギヨマン『アゲーの岩場』1893年
- イポリット・プティジャン『ニンフのいる風景』1901年
- カミーユ・ピサロ『カルーゼル橋の午後』1904年
- アンリ・モレ『渦潮、フェニステール県』1911年
- アメデオ・モディリアーニ『若い女の胸像(マーサ嬢)』1916-7年頃
- ポール・シニャック『サン・トロペの港』1923年
- ジョルジュ・ルオー『ブルターニュ教会の内部』1938年
- モーリス・ド・ヴラマンク『スノシュ森の落日』1938年
- アルベール・マルケ『アルジェの港』1942年
- ポール・デルヴォー『オルフェウス』1956年
日本画
日本画の収蔵品も豊富で、以下の作品が代表的です:
- 『法華曼荼羅図』 1幅 絹本著色 平安末期
- 伝周文『竹林閑居図』1幅 紙本墨画淡彩 竹庵大縁の賛あり(重要文化財)
- 伝狩野山楽『老松古木花鳥図屏風』六曲一双 紙本著色 江戸初期
- 円山応挙『遊鯉水禽図屏風』六曲一双 紙本金泥著色 天明元年(1787年)
- 池田蕉園・輝方合作『桜舟・紅葉狩図屏風』六曲一双 絹本著色 明治45年(1912年)
- 寺崎広業『春海雪中図屏風』六曲一双 紙本著色 大正3年(1914年)
- 池上秀畝『巨浪群鵜図屏風』六曲一双 絹本著色 昭和7年(1932年)
陶磁器
松岡美術館の陶磁器コレクションには、以下のような貴重な作品があります:
- 青花双鳳草虫図八角瓶 元時代
- 青花龍唐草文天球瓶 明時代(永楽期)
特に、松岡清次郎が1974年にロンドンのサザビーズで42万ポンド(当時の日本円換算で約2億5千万円)で購入した「青花龍唐草文天球瓶」は、当時の最高値を記録しました。
ガンダーラ彫刻
ガンダーラの彫刻作品も多く所蔵されており、以下のような作品があります:
- 仏説法浮彫 3世紀頃
- 菩薩半跏像 3世紀頃
施設の再開について
松岡美術館は、設備点検等のため、2019年6月から2022年1月25日まで休館していましたが、2022年1月26日より再開しました。再開後は、さらに多くの美術ファンを迎え入れ、豊富なコレクションを展示しています。
交通アクセス
松岡美術館へのアクセスは、以下の通りです:
- JR目黒駅東口より徒歩約15分
- 東京メトロ白金台駅より徒歩約6分