東京芸術劇場は、東京都豊島区西池袋にある総合芸術文化施設です。1990年10月に開館し、音楽、演劇、舞踊など多様な芸術の発表の場として利用されています。
昭和40年代初頭、声楽家の藤原義江が「東京にオペラハウスを」と、当時の東京都知事であった美濃部亮吉に陳情しました。その後、東京都は池袋駅西口の闇市跡地を含む東京学芸大学豊島小学校跡地を国から取得しましたが、財政の悪化により計画は進みませんでした。結果的に、初台駅北側に開業した新国立劇場がオペラハウスの役割を果たすこととなりました。
一方で、都の施設として上野には東京文化会館が存在し、多目的に使用できる施設が求められていました。このような背景から、純粋なコンサートホールと公立の芝居小屋を組み合わせた施設としての構想がまとまり、1985年に芦原建築設計事務所に基本設計が委託され、1987年に着工、1990年10月に開館しました。
東京芸術劇場は、ホールを縦に積み重ねた積層型の建築が特徴です。この設計には、敷地の北側端を走る地下鉄有楽町線の影響を考慮し、音楽専用ホールとしての騒音や振動を遮断する必要がありました。積層システムにより、限られた敷地内に広大なアトリウムを実現しています。
2011年4月から施設の改修工事が開始され、翌年の2012年9月1日にリニューアルオープンしました。この改修は、松田平田設計と香山壽夫建築研究所が手掛け、巨大なガラスアトリウムの内部が一新されました。改修に伴い、1階から5階までを一気に上るエスカレーターが撤去され、アトリウム西側の壁沿いに設置された新たなエスカレーターが利用されています。
内装には既存の大理石を残しつつ、木や土、鉄などの暖色系の内装が加えられ、より温かみのある雰囲気が演出されています。また、老朽化した建築設備や舞台設備も更新され、初代芸術監督に就任した野田秀樹の助言も反映されています。
2024年9月30日から2025年7月にかけて、設備更新工事のために休館が予定されています。
東京芸術劇場は、東京都歴史文化財団が管理運営を行い、芸術監督には野田秀樹が就任しています。野田の就任を契機に、運営方針の見直しが行われ、自主企画の開催や劇場が交流の場となる方針が打ち出されました。すべての施設が貸館可能であり、主催公演のほか、国内外の著名な演奏家によるコンサートや市民楽団の演奏会も開催されています。
オーケストラの演奏に適したコンサートホールで、リニューアル後は「コンサートホール」として呼称されています。舞台を拡張し、演奏者と観客の距離を縮めた設計で、1,999席を有します。特に音楽専用ホールとしての機能が高く評価され、「音響家が選ぶ優良ホール100選」にも認定されています。
プロセニアム形式のホールで、主に演劇、ミュージカル、バレエ、舞踊、小規模なオペラに適しています。リニューアル後は「プレイハウス」と呼ばれ、音響効果の向上と演劇空間らしい雰囲気が演出されています。
小ホール1と2は、多目的ホールとして利用され、「シアターイースト」と「シアターウエスト」としてそれぞれの呼称を持ちます。舞台表現の自由度が高く、様々な用途に対応しています。
東京芸術劇場では、様々な主催公演が行われています。例えば、2017年から開始された「ボンクリ・フェス」や、2007年に開催された「東京芸術劇場POPSコンサートvol.2『2007 TOKYO 新創世紀』」など、多彩なイベントが行われています。