2種類のスタイル
ぶっかけタイプ
味噌で煮たアサリやネギを、炊きたてのご飯にかけていただくスタイル。忙しい漁師たちが短時間で食べられるように考案されました。
炊き込みタイプ
アサリなどの具材を調味料と共に米と一緒に炊き込むスタイル。大工や職人が弁当に持っていくために生まれたとされています。
深川めしの歴史
起源と発展
深川地域は江戸時代に漁師町として栄え、アサリやアオヤギなどの貝類が豊富に獲れる地域でした。漁師の賄い飯として生まれた「ぶっかけ飯」が深川めしの原型です。
当初はアオヤギを使用していましたが、明治・大正期になるとアサリが主流となりました。昭和初期には、浅草などで深川めしを売る屋台が多く出現し、一般家庭でも広く食べられるようになりました。
下町の庶民料理としての位置づけ
明治時代のルポルタージュ『最暗黒の東京』(松原岩五郎)では、深川めしは「車夫の食物」とされ、下層階級の即席料理として紹介されています。当時の記述からは、磯の香りが強く、庶民的で簡便な料理だったことがわかります。
現代の深川めし
伝統の味を受け継ぐ名店
深川宿
元来の味を再現した深川めしを提供する「深川宿」では、ぶっかけタイプと炊き込みタイプの両方を楽しめます。こだわりの食材と伝統的な調理法で、江戸の味を現代に伝えています。
門前茶屋
「門前茶屋」では、深川あさり蒸籠蒸しが名物です。深川めしを一つ一つ丁寧に蒸し上げることで、アサリが硬くならず、芳醇な旨みが引き立ちます。また、魚介の炭火炉ばた焼きと共に楽しむ日本酒も人気です。
観光とともに復活した味
昭和30年代、東京湾の埋め立てと水質汚染により、深川周辺の漁業は衰退しました。しかし、芭蕉記念館や深川江戸資料館の開館を機に観光客が増加し、飲食店の尽力により深川めしが地域の名物として復活しました。
食材と作り方
主な使用食材
- 米
- アサリ
- ネギ
- ニンジン
- ゴボウ
- 油揚げ
- 干しシイタケ
調理方法(炊き込みタイプの例)
手順
- 米をとぎ、ざるにあげて水気を切る。
- アサリのむき身をボイルし、日本酒をふりかける。
- ニンジン、油揚げ、干しシイタケ(千切り)、ささがきゴボウを油で炒め、味付けをする。
- 具材と煮汁を分けておき、煮汁に塩ひとつまみと水を加えたものでご飯を炊く。
- 炊き上がったご飯に具材を加えて蒸らし、よく混ぜ合わせる。
食べるタイミング
かつては家庭料理として通年食べられていましたが、現在では飲食店で味わうのが一般的です。
深川めしの魅力
江戸の味が現代に生きる
新鮮なアサリの旨みと、粗く刻んだネギの香りが味噌と絡み合い、口の中に広がる豊かな風味。深川めしは、時代を超えて受け継がれる東京の伝統食です。日本五大銘飯のひとつとしても名高く、訪れる価値のある味わいとされています。