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影向のマツ

(ようごう)

影向のマツは、東京都江戸川区東小岩にある善養寺の境内で育つクロマツの巨木です。樹齢600年以上で、繁茂面積は日本一といわれています。2011年9月21日に国の天然記念物に指定され、その正式名称は「善養寺影向のマツ」です。このマツは、香川県さぬき市(旧志度町)にあった岡野マツとの「日本一争い」で有名です。

影向のマツの由来

「影向」という言葉は、神仏が仮の姿でこの世に現れることを意味します。このマツの名付け親は不明ですが、その名には神聖さが込められています。真言宗豊山派に属する善養寺は室町時代(1500年頃)の創建とされていますが、影向のマツはその以前から植えられていたと考えられています。

樹木の特徴

影向のマツは樹高約8メートルで、地上約2メートルの高さで枝を四方に広げています。82本の支柱が重い枝を支えており、幹の太さは約4.5メートル、枝の広がりは東西方向に約28メートル、南北方向に約31メートルにも及びます。繁茂面積は800平方メートル以上で、日本で最も広い面積を誇ります。

「影向のマツ」と「星降りマツ」

かつて善養寺の境内には、「星降りマツ」(ほしくだりマツ)というもう1本のマツもありました。樹高50メートルに達する星降りマツと、広い繁茂面積を持つ影向のマツは「鶴と亀」に例えられ、縁起の良い一対のマツとして親しまれていました。しかし、星降りマツは枯死し、現在は2代目が植えられています。

影向のマツと岡野マツの「日本一争い」

影向のマツはその美しさと大きさから「日本一の名マツ」として知られ、1926年には東京都の天然記念物に指定されました。しかし、1970年代後半、香川県志度町(現さぬき市)の「岡野マツ」が日本一を主張し、論争が始まりました。

論争の経緯

善養寺の住職が岡野マツを訪ね、巻尺で実測した結果、わずか数センチメートルの差で岡野マツの方が大きいことが判明しました。善養寺側は「形の良さでは影向のマツが上」と主張し、双方の論争は1年余り続きました。

「日本一争い」の決着

1980年5月、善養寺で行われた大相撲の行司の法要の際、行司の木村庄之助が仲裁に入り、「どちらも日本一」と裁定を下しました。その結果、善養寺と真覚寺の争いは和解し、「東西の横綱」として両方のマツが称えられることとなりました。

影向のマツの保存と保護

その後、岡野マツは1993年に枯死しましたが、影向のマツも1970年代から葉の勢いが衰えるなどの問題が発生しました。地元の人々はマツを救おうと立ち上がり、土壌の改善や水はけの改善を行い、2011年には樹勢が回復しました。

影向のマツの保存活動

2001年の調査で、近くの池の埋め立てにより水はけが悪化し、根が酸欠状態になったことが樹勢の衰えの原因と判明しました。2002年からは樹勢回復に向けた作業が行われ、土壌の入れ替えや地下水路の設置などの対策が講じられました。この活動には専門家も加わり、10年の歳月をかけて工事が完了しました。

影向のマツの現在とその評価

1990年には「新日本名木100選」に選ばれ、2011年には国の天然記念物に指定された影向のマツは、現在も多くの人々に愛され続けています。その壮大な姿は、長い歴史と地元の人々の努力の結晶として大切に守られています。

所在地とアクセス

所在地: 東京都江戸川区東小岩2丁目24番2号 善養寺境内

交通: JR総武線・小岩駅から葛西・瑞江方面行乗車、「江戸川病院前」(小岩から4つ目)下車、徒歩200メートル。

Information

名称
影向のマツ
(ようごう)

亀戸・葛西・門前仲町

東京都