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清澄庭園

(きよすみ ていえん)

清澄庭園は、東京都江東区清澄に位置する都立庭園で、東京都指定名勝に指定されています。この庭園は、池の周囲に築山や名石を配置した回遊式林泉庭園で、江戸時代から受け継がれた庭園手法を今に伝えています。泉水、築山、枯山水を主体にしたこの庭園は、明治時代の造園技術の完成形としても評価されており、広くその美しさが知られています。

清澄庭園の概要

清澄庭園は、四季折々の自然の美しさを楽しむことができる場所として、多くの訪問者に親しまれています。庭園の中心には大きな池があり、その周囲には築山やさまざまな種類の石が配置されています。これにより、訪れる人々は庭園を回遊しながら、異なる景観を楽しむことができます。特に、庭園内に配置された名石の数々は、日本全国から集められたもので、その一つ一つが独特の美しさを持っています。

主な見所

泉水

庭園の中心には、三つの中島を配した広い池があります。この池は庭園の要であり、水面に映る島々や樹木の影が美しい景観を作り出しています。かつては隅田川から水を引いており、潮の干満によって景観が変化したと伝えられていますが、現在は雨水を利用しています。

磯渡り

池の端には、石が飛び飛びに配置され、そこを歩くことができる「磯渡り」が設けられています。池を歩きながら、景色の変化を楽しむことができ、広がる水面の美しい眺望を楽しむことができます。

名石

清澄庭園には全国から集められた名石が数多く配置されています。代表的なものには、伊豆磯石、伊予青石、紀州青石などがあり、これらの石は岩崎家が自社の汽船を使って運び入れたものです。庭園内には無数の石が配置され、まるで石庭のような美しい光景が広がっています。

富士山

庭園内で最も高い築山は「富士山」と呼ばれており、かつては山頂近くに樹木を植えず、サツキやツツジの低木を横に配して富士山にたなびく雲を表現していました。

芭蕉の句碑

松尾芭蕉の有名な句「古池や かはづ飛び込む 水の音」を刻んだ石碑が庭園内に設置されています。この句碑は庭園の静かな風景と調和しており、訪れる人々に日本の伝統文化を感じさせます。

バードウォッチング

清澄庭園は、川や海に近いことから、様々な野鳥が集まる場所としても知られています。年間を通じてカルガモ、キジバト、シジュウカラなどが見られ、夏にはツバメやコアジサシ、冬にはキンクロハジロやオナガガモが訪れます。バードウォッチングを楽しむ人々にも人気の場所です。

庭園の施設

大正記念館

大正記念館は、昭和3年(1928年)に大正天皇の葬儀に用いられた葬場殿を移築した建物です。しかし、戦災により失われたため、昭和28年(1953年)に貞明皇后の葬場殿の材料を使って再建されました。平成元年(1989年)に全面的に改築され、現在は集会施設として利用されています。

涼亭

涼亭は、池に突き出るように建てられた数寄屋造りの建物です。明治42年(1909年)、英国のキッチナー元帥が国賓として来日した際、彼を迎えるために岩崎家が建てたものです。涼亭は震災や戦災の被害を免れ、今日までその美しい姿を保っていますが、昭和60年(1985年)に全面改築工事が行われました。現在、涼亭は集会施設として利用可能であり、2005年には「東京都選定歴史的建造物」に指定されました。

花暦情報

清澄庭園では、四季折々の花々が楽しめます。1月には日本水仙、2月には梅や福寿草、4月には桜が満開となり、初夏にはツツジやアジサイが咲き誇ります。秋には彼岸花やシュウメイギク、冬にはサザンカが庭園を彩ります。花の見頃に合わせて訪れることで、季節ごとの美しい風景を楽しむことができます。

春の花

1月: ニホンズイセン(日本水仙)
2月: ニホンズイセン、フクジュソウ(福寿草)、ツバキ(椿)、ウメ(梅)、サンシュユ(山茱萸)
3月: ツバキ、ウメ、サンシュユ、カンヒザクラ(寒緋桜)
4月: ソメイヨシノ(染井吉野)、サトザクラ(里桜)、シャガ(射干)

夏の花

5月: ツツジ(躑躅)、サツキ(皐月)
6月: サツキ、アジサイ(紫陽花)、ハナショウブ(花菖蒲)
7月: タイワンニンジンボク、サルスベリ(百日紅)
8月: サルスベリ

秋の花

9月: ヒガンバナ(彼岸花)、ハギ(萩)、シュウメイギク(秋明菊)
10月: シュウメイギク、ツワブキ(石蕗)

冬の花

11月: ツワブキ、サザンカ(山茶花)、ハゼノキ(櫨の木 紅葉)
12月: サザンカ、雪吊り、コモ巻

庭園の歴史

清澄庭園は、江戸時代にさかのぼる歴史があります。かつてこの地は、豪商・紀伊國屋文左衛門の屋敷跡と言い伝えられていますが、享保年間(1716〜1736年)には、下総国関宿藩主の久世大和守の下屋敷として使われ、ある程度庭園の形が整えられたとされています。

明治時代に入ると、庭園は荒廃していましたが、明治11年に岩崎弥太郎がこの地を買い取り、社員の慰安や貴賓を招くための庭園として再開発を始めました。明治13年には「深川親睦園」として一応の竣工を迎えました。その後も造園工事は進み、隅田川から水を引いた大泉水を造り、全国から集めた名石を配置したことにより、清澄庭園は明治を代表する「回遊式林泉庭園」として完成しました。

清澄地域

清澄庭園が位置する清澄地域は、かつては江戸の外れにある低湿地帯でした。この地域は、徳川家康の江戸入府に伴い発展し、深川猟師町が形成されました。町ができ始めたのは寛永時代(1624〜1643年)頃で、その後、商業中心の町屋へと変貌しました。清澄庭園のある清住町(現在の清澄一丁目)周辺も発展し、江戸時代中期には武家屋敷が立ち並ぶ場所となりました。

久世家の時代

江戸時代中期には、深川伊勢崎町に久世家の下屋敷が存在していました。久世家は、徳川家康に仕えた武家の一族で、江戸開府に大きく貢献しました。寛永13年(1636年)には、久世広之が大和守となり、下総国関宿城を居城として与えられました。伊勢崎町にあった久世家の下屋敷は、幕末の混乱により手放されましたが、その後も庭園の一部として名を残しています。

岩崎家の時代

清澄庭園の歴史において特筆すべきは、明治時代に三菱財閥の創業者である岩崎弥太郎がこの地を買い取り、庭園の大規模な修築を行ったことです。弥太郎は、庭園に対して深い関心を持ち、特に庭石に対するこだわりがありました。彼は全国から集めた巨石を庭園に持ち込み、庭園全体を新たに整備しました。弥太郎の死後、その後を継いだ弟の岩崎弥之助が庭園の完成を目指し、さらに修築を進めました。

弥太郎による庭園の修築

幕末の混乱の中で荒廃していた清澄庭園を、岩崎弥太郎は丁寧に修築しました。庭園内には池や築山が配置され、訪れる人々が回遊しながら景色を楽しめるようになっています。弥太郎は庭園を「深川新睦園」と名付け、平時は三菱社員の慰安の場として、特別な賓客を迎える際の接待の場としても利用されました。

弥之助によるさらなる修築

岩崎弥太郎の後を継いだ弟の岩崎弥之助は、庭園をさらに拡充しました。彼は庭園を社内の親睦園だけでなく、会社の隆盛に伴う貴賓接待の場としても利用しました。明治24年(1891年)には、茶室や温室園芸場などが設けられ、庭園はさらに華やかに整備されました。また、日本館と洋館が新たに建設され、特に洋館は英国の建築家ジョサイア・コンドルによって設計されました。コンドルの設計による洋館は、赤煉瓦のチューダー様式で、明治時代のモダンな雰囲気を醸し出しています。

大震災と庭園の保存

清澄庭園は、関東大震災で大きな被害を受けましたが、災害時には避難場所としての役割を果たし、多くの人々を救いました。この出来事を受けて、岩崎家は庭園の防災機能に注目し、庭園の東側半分を公園用地として東京市に寄付しました。東京市はこれを整備し、昭和7年に庭園が一般公開されました。また、昭和52年には庭園の西側も開放され、芝生広場やサクラの木が植えられた開放公園として追加されました。

清澄庭園の現在

現在の清澄庭園は、都立庭園として一般に公開されており、訪れる人々に四季折々の自然美を提供しています。庭園内には多くの名石が配置され、庭園を回遊することで異なる風景を楽しむことができます。また、庭園内には茶室もあり、日本の伝統文化に触れることができる場所としても知られています。特に、秋の紅葉や春の桜は、多くの観光客を魅了します。

清澄庭園は、その歴史的背景や美しい景観から、東京都内でも屈指の名庭園として知られています。江戸時代から続く深い歴史を感じながら、訪れる人々はここで心安らぐひとときを過ごすことができるでしょう。

交通案内

公共交通機関でのアクセス

清澄庭園へのアクセスは、公共交通機関が非常に便利です。最寄り駅は、都営大江戸線および東京メトロ半蔵門線の「清澄白河駅」です。A3番出口から徒歩約3分で到着します。また、路線バスを利用する場合は、都バスの亀戸駅北口7番乗り場から「豊洲水産埠頭行き」に乗車し、「清澄庭園前」停留所で下車してください。停留所から徒歩約3分です。

駐車場の有無

清澄庭園には専用の駐車場はありません。車で訪れる際は、近隣のコインパーキングを利用することが推奨されます。

まとめ

清澄庭園は、東京都内で静かに四季の移ろいを楽しめる貴重な都立庭園です。歴史的な建物や、美しい池と築山、名石が配置されたこの庭園は、日本の庭園文化を体感できる場所でもあります。四季折々の花々が咲き誇り、訪れるたびに違った風景を楽しむことができるため、何度でも足を運びたくなる魅力があります。都会の喧騒を忘れ、自然と歴史に触れるひとときを清澄庭園で過ごしてみてはいかがでしょうか。

Information

名称
清澄庭園
(きよすみ ていえん)

東京都内(23区)

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