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下町風俗資料館

(したまち ふうぞく しりょうかん)

下町風俗資料館は、東京都台東区上野公園内の不忍池畔に位置する台東区立の博物館です。この資料館は、江戸時代から昭和時代中期にかけて育まれた東京下町の文化的な資料を中心に展示しています。1980年(昭和55年)に開館し、開館以来「庶民の歴史である下町の大切な記憶を次の世代へ伝える」ことを目的に運営されています。現在は、公益財団法人台東区芸術文化財団が指定管理者として管理・運営を行っています。

施設の概要と展示内容

下町風俗資料館は、その名の通り、東京の下町文化に焦点を当てた展示を行っています。館内は2階建てで、各階に異なるテーマの展示が用意されています。

1階展示:大正時代の下町を再現

1階には、大正時代の下町の街並みが精巧に再現されています。ここでは、裏長屋の路地や共同井戸が再現されており、駄菓子屋や銅壺屋(どうこや)などの店が並んでいます。また、表通りに面した商家の建物も展示されており、花緒の製造卸問屋が設置され、当時の典型的な商家の作業場や帳場(ちょうば、現代の事務所に相当)も見ることができます。展示品は実際に使用されていたものであり、当時の電話ボックスや人力車も展示されています。また、紙芝居などのイベントも開催され、来館者は当時の雰囲気を体験することができます。

2階展示:昭和時代の生活を体感

2階には、昭和10年から30年代(1935年 - 1964年)にかけての下町の民家が再現されています。ここでは、ベーゴマやけん玉といった昔の遊びを体験できるコーナーや、銭湯の番台も展示されています。また、時折特別な企画展示も行われ、訪れる人々に新たな発見と学びの場を提供しています。

下町文化の背景と資料館設立の経緯

明治から大正時代にかけて、東京の下町には江戸時代の名残が色濃く残っていました。しかし、1923年(大正12年)の関東大震災や1945年(昭和20年)の戦災により、その風景は大きく変わってしまいました。その後、戦後の復興が進み、特に1964年の東京オリンピックを契機とした再開発が進むにつれ、下町の景観や文化も急速に変貌していきました。時代とともに人々の生活も便利さを求めて変化していく一方で、古き良き時代の大切なものが失われつつあることに、多くの人々が懸念を抱くようになりました。

こうした背景から、昭和40年代には、失われつつある下町文化を次世代に伝えるための資料館設立の構想が生まれました。この構想を実現するために、台東区内外から多くの貴重な資料が寄贈され、1980年(昭和55年)10月1日に台東区立下町風俗資料館が不忍池畔に開館しました。

付設展示場「旧吉田屋酒店」

下町風俗資料館には、上野桜木に「旧吉田屋酒店」という付設展示場があります。これは、1910年(明治40年)に建てられ、1986年(昭和61年)まで谷中で酒屋を営んでいた「吉田屋」の建物を移築し、展示場として使用しているものです。この展示場では、酒類の販売に使用されていた道具や商いに関する資料が展示されています。古い建物をそのまま展示場として使用しているため、当時の生活や商いの様子を肌で感じることができます。

今後の展望と現在の状況

下町風俗資料館は、2023年(令和5年)4月から2025年(令和7年)5月までの間、館内リニューアルのため一時休館しています。このリニューアルでは、さらに多くの資料を展示し、より充実した内容で再開館する予定です。新しい展示がどのような形で下町の文化を伝えるのか、再開を待ち望む声が多く聞かれています。

外国人観光客にも人気があり、ボランティアによる英語解説も行われることがあるなど、国際的な視点からも評価されているこの資料館。リニューアル後は、さらに多くの人々に東京の下町文化の魅力を伝える場として、重要な役割を果たすことが期待されています。

Information

名称
下町風俗資料館
(したまち ふうぞく しりょうかん)

上野・御徒町

東京都