国立科学博物館(略称:かはく、科博)は、日本の科学と自然に関する知識の普及と教育を目的とした、日本を代表する博物館の一つです。国内外における自然史、科学技術に関する展示や研究を通じて、自然科学と社会教育の振興を図る役割を担っています。東京都台東区の上野公園内に位置し、国内外から多くの来館者が訪れる人気の観光スポットでもあります。
国立科学博物館の設立は、「自然史に関する科学その他の自然科学及びその応用に関する調査及び研究並びにこれらに関する資料の収集、保管(育成を含む)及び公衆への供覧等を行うことにより、自然科学及び社会教育の振興を図る」ことを目的としています。この目的は、独立行政法人国立科学博物館法第3条に明記されており、博物館としての役割を超え、全国の博物館の指導的な立場を担っています。
国立科学博物館は、東京都の2か所と茨城県つくば市の1か所、計3か所に展示および研究施設を持っています。主な展示施設として、上野本館(東京都台東区上野恩賜公園内)、附属自然教育園(東京都港区白金台)、そして筑波実験植物園(茨城県つくば市)があり、これらの施設がそれぞれの地域で異なるテーマを持って活動しています。また、研究部門は筑波地区に集約されており、最新の科学技術を駆使した研究が行われています。
上野本館は、「人類と自然の共存をめざして」をテーマとし、日本館と地球館という二つの主要な展示館から構成されています。各館では、それぞれ異なるテーマに基づいた多彩な展示が行われており、日本列島の自然史や地球規模の生命史を深く学ぶことができます。
日本館では、「日本列島の自然と私たち」というテーマのもと、2007年4月17日にリニューアルオープンしました。展示エリアは地上3階、地下1階に広がり、特に日本の自然環境やそこに生息する生物についての詳細な展示が行われています。
3階南翼では、日本列島の地質や多様な自然環境を紹介し、その環境に適応して生息する生物たちを気候や地形ごとに展示しています。
櫻井欽一寄贈の櫻井鉱物コレクションを中心に、日本国内で採取された鉱物や隕石が展示されています。中でも、日本に落下した最大の隕石「田上隕鉄」は、その規模と保存状態が非常に優れたものとして知られています。
3階北翼では、日本列島の形成過程を示す岩石や、国内で発見された様々な生物の化石が展示されています。特に、フタバスズキリュウやウタツサウルスなど、日本を代表する化石の展示は必見です。
2階南翼では、日本列島の複雑な環境に適応し、独自の進化を遂げた生物について解説されています。アマミノクロウサギやイリオモテヤマネコなど、日本固有の希少種の展示が特徴です。
2階北翼では、日本列島の自然環境の中で形作られてきた日本人の歴史と、自然との関係を展示しています。特に、ニホンオオカミの骨格標本や忠犬ハチ公の剥製など、歴史的に重要な展示物が多くあります。
1階南翼では、過去の日本人が持っていた科学技術に焦点を当てた展示が行われています。天体望遠鏡や地震計など、科学史的に貴重な展示物を通じて、先人たちの技術を学ぶことができます。
地下1階には、来館者向けの様々な施設が揃っています。シアター36○では、臨場感あふれる映像体験が可能です。また、フーコーの振り子もこのフロアに展示されており、物理の基本原理を視覚的に理解することができます。
地球館は「地球生命史と人類」をテーマとして、地上3階、地下3階の広大な展示エリアを誇ります。1998年に第1期工事が完了し、翌年4月24日から常設展示が公開されました。さらに、2004年11月2日に第2期工事が完了し、グランドオープンを迎えました。2014年9月から2015年7月まで北側展示場の改装工事が行われ、リニューアルオープンされました。
地球館の屋上には、ハーブガーデンとパラソルガーデンが設けられており、訪れる人々が自然と触れ合いながらリラックスできる空間が提供されています。
3階では、哺乳類や鳥類の剥製を中心に展示しています。特に、Watson T. Yoshimoto氏による世界的規模の大型哺乳類剥製標本群「ヨシモトコレクション」が注目されています。また、上野動物園で飼育されていたジャイアントパンダや、世界に4体しか存在しないニホンオオカミの剥製も展示されています。
2階では、科学技術の進歩とその歴史が展示されています。和漢三才図会やエレキテルのレプリカ、からくり「茶運び人形」など、日本の科学技術史における重要な展示物が紹介されています。また、探査機「はやぶさ」の実物大復元模型も展示されており、映画『はやぶさ 遥かなる帰還』の撮影用に製作されたものが見られます。
中2階では、日本の科学者たちの偉業が紹介されています。北里柴三郎、高峰譲吉、鈴木梅太郎など、世界的に評価された日本の科学者たちの功績が展示されています。
1階では、過去の日本人が持っていた科学技術に焦点を当てた展示が行われています。天体望遠鏡や地震計など、科学史的に貴重な展示物を通じて、先人たちの技術を学ぶことができます。
地下1階には、来館者向けの様々な施設が揃っています。シアター36○では、臨場感あふれる映像体験が可能です。また、フーコーの振り子もこのフロアに展示されており、物理の基本原理を視覚的に理解することができます。
国立科学博物館では、常設展示に加えて、定期的に特別展示やイベントが開催されています。これらの展示やイベントは、最新の科学技術や自然界の新たな発見を紹介し、来館者に新しい知識と驚きを提供しています。過去には、恐竜展や宇宙に関する展示などが行われ、多くの人々が訪れました。
国立科学博物館には、500万点以上の貴重な資料が収蔵されており、そのうち約1万4,000点が常設展示として公開されています。これらの資料は、動物研究部、植物研究部、地学研究部、人類研究部、理工学研究部の各部門に分けられて管理されています。
国立科学博物館には、多くの指定文化財が収蔵されています。例えば、渋川春海作の天球儀・地球儀(1695年製)や、田中久重作の万年自鳴鐘(1851年製)、1880年にイギリスから輸入された天体望遠鏡、そして日本最古の地震計であるミルン水平振子地震計などがあります。これらの収蔵品は、日本の科学技術の歴史を物語る非常に貴重なものです。
上野本館の日本館は、1931年に竣工したネオ・ルネサンス様式の建物であり、2008年に重要文化財に指定されました。この建物は、関東大震災の復興事業の一環として建設され、地震に対する耐震性が高く評価されています。上空から見ると飛行機の形をしているこの建物は、国立科学博物館のアイコンとして、多くの人々に親しまれています。
国立科学博物館は、日本の科学技術の発展と自然環境の理解を深めるための重要な施設です。上野本館をはじめとする展示施設では、来館者が学びながら楽しむことができる展示が数多く用意されており、日本国内外から多くの訪問者が訪れます。これからも国立科学博物館は、次世代への教育と文化の継承を担う重要な役割を果たしていくことでしょう。