東京都美術館は、東京都台東区上野公園8番36号に位置する都立美術館です。この美術館は、1926年に「東京府美術館」として開館し、1943年に「東京都美術館」に改称されました。略称は「都美」として親しまれています。設計は前川國男が手掛け、現在は東京都歴史文化財団が指定管理者として運営を行っています。
東京都美術館は、東京都美術館条例に基づいて設立され、「都民のための美術の振興を図る」という目的で運営されています。東京都台東区の上野恩賜公園内に位置し、「上野の山」として知られる文化施設群の一翼を担う重要な存在です。
東京都美術館の設立に至るまでの背景には、明治後期から大正にかけて日本の美術界で議論されていた近代美術館の必要性があります。文部省美術展覧会などの展覧会場として使用されていた竹の台陳列館が不十分であったことから、美術館の建設が望まれていました。しかし、文部省による美術館建設の構想は予算不足で頓挫していました。
そんな中、若松市の石炭商である佐藤慶太郎が東京府に100万円を寄付し、美術館の建設が決定されました。これにより、1926年に日本初の公立美術館「東京府美術館」として開館しました。当時の建物は岡田信一郎の設計によるもので、佐藤慶太郎は欧米型のミュージアムを希望していた一方で、東京府の方針は展示を本位とするギャラリー型の美術館でした。
設立当初の建物は老朽化が進んだため、1968年には新館建設の計画が持ち上がり、1975年に前川國男設計の新館が完成しました。この新館では、「常設・企画機能」、「新作発表機能」、「文化活動機能」の3つの機能を掲げ、美術館が主体的に企画展を進め、現代美術の秀作を収集・展示することを目指しました。
新館では、国内外の近現代美術を紹介する企画展が開催されるようになり、同時に美術館の収蔵作品展も精力的に行われました。また、美術文化事業として造形講座や公開制作が行われ、展示・収集事業との連携を図りました。これらの取組は、美術館ワークショップの先駆けとされています。
1976年には日本初の公開制の美術図書室が館内にオープンし、専門の司書が配置されました。これにより、公開美術図書室の運営が本格化し、美術教育活動の一環として活用されるようになりました。
1975年に竣工した前川國男設計の新館は、築30年を超えたことから、2010年4月5日より大規模な改修工事が行われました。約2年間の工期を経て、2012年4月1日に公募展示室、レストラン、ミュージアムショップ、美術情報室、アートラウンジなどがリニューアルオープンしました。また、同年6月30日には企画展示室もリニューアルオープンし、全館が新たに生まれ変わりました。
リニューアルオープンを記念して開催された「マウリッツハイス美術館展 オランダ・フランドル絵画の至宝」では、1日平均10,573人を動員し、2012年度の世界の美術館展覧会の中で最多の来館者数を記録しました。
東京都美術館は、1995年に東京都現代美術館の開館に伴い、現代美術コレクションや関連図書が移管され、公募展とマスコミ共催の企画展が中心となりました。2002年以降は、東京都歴史文化財団が運営を担当し、現在も多彩な展覧会や文化活動を行っています。