博物館動物園駅は、かつて東京都台東区上野公園に存在していた京成電鉄本線の駅であり、その役割を終えた現在も歴史的な建造物として名を残しています。この駅は、東京帝室博物館や恩賜上野動物園などの施設へのアクセスを提供する重要な駅でしたが、老朽化や利用者の減少などにより1997年に営業を休止し、2004年に正式に廃止されました。
博物館動物園駅は、1933年(昭和8年)に京成本線の開通とともに開業しました。開業当初、この駅は東京帝室博物館、東京科学博物館、恩賜上野動物園、そして東京音楽学校や東京美術学校、旧制第二東京市立中学校などの最寄り駅として機能していました。しかし、年月が経つにつれ駅の老朽化が進み、利用者も減少していきました。その結果、1997年4月1日に営業を休止し、2004年4月1日に正式に廃止されることとなりました。
駅舎やホームは営業休止後も現存しており、2018年には改修が行われ、秋には公開されました。特に、駅舎は2018年4月19日に東京都選定歴史的建造物に指定されており、この建造物の保存は東京都内の鉄道施設として初の事例となります。
1933年12月10日に「動物園前停留所」として開業した博物館動物園駅は、その後、様々な変遷を経てきました。1945年6月10日から9月30日にかけて、日暮里駅から上野公園駅までの区間が運輸省に接収され営業休止となり、当駅も同様に休止が継続されました。1953年5月1日に営業が再開されましたが、その後も利用者の減少と駅の老朽化が進行しました。
1976年には日暮里駅から京成上野駅間の改良工事に伴い一時営業を休止しましたが、1997年4月1日に再度休止となり、その後2004年に正式に廃止されました。この廃止に伴い、駅は徐々に歴史的な遺産としての役割を果たすようになりました。
博物館動物園駅は地下駅として設計されており、相対式ホーム2面2線を有していました。ただし、上下線のホームは同一の位置ではなく、互い違いに配置されていました。改札口は上りホーム側に設置され、地上への出入口は2か所ありました。一つは東京帝室博物館(現在の東京国立博物館)敷地内に設置され、もう一つは恩賜上野動物園旧正門へと続くものでした。
この駅舎は、中川俊二による設計で、西洋様式の外観が特徴的であり、国会議事堂の中央部分に似たデザインが採用されました。また、壁面には東京芸術大学の学生が描いたとされる「ペンギン」や「ゾウ」の絵画が描かれており、昭和初期のレトロな雰囲気を今も色濃く残しています。
博物館動物園駅はホームの有効長が短く、4両編成の列車しか停車できませんでした。さらに、この4両編成でさえも、先頭車両の一部がホームからはみ出してしまう状態でした。このため、列車と壁の隙間に台を設置するなどの対応が取られていましたが、安全面での問題が指摘されていました。
1981年以降、一部の普通列車が6両編成となり、当駅を通過する列車が増えたため、停車本数が減少し、利用者の多くが南隣の京成上野駅を利用するようになりました。これにより、当駅の利用者が減少し、さらに老朽化や安全性の問題も加わり、休止と廃止の決定がなされました。
2004年に廃止された博物館動物園駅は、その後、トンネルの非常用避難路として利用されています。また、地上駅舎は廃止後もその姿を残し、京成上野駅の利用を促す告知が貼付されるなど、駅の歴史を感じさせるものとなっています。さらに、西洋様式の建物は「博物館動物園駅跡」として保存され、その美しい外観は多くの人々に愛されています。
1991年頃からは「上野の杜芸術フォーラム」を中心に、博物館動物園駅の保存・再生が提案されてきました。また、駅施設の保存に加え、アートイベントや展示会も開催されるようになり、駅は文化的な活動の場としても利用されています。特に、2018年には駅施設が一般公開され、アート作品として巨大なアナウサギのオブジェが設置されました。
さらに、2022年には東京藝術大学が京成電鉄と協力して3Dスキャンおよびフォトグラメトリ技術を用いて駅の3Dモデルを制作し、VR空間での公開が行われました。これにより、普段は立ち入ることのできない箇所も含め、駅の内部を詳細に見ることができるようになりました。
博物館動物園駅は、そのユニークな歴史とレトロな雰囲気から、さまざまな作品に登場しています。例えば、ふくやまけいこの『サイゴーさんの幸せ』や秋本治の『こちら葛飾区亀有公園前派出所』などでは、博物館動物園駅が重要な舞台として描かれています。これらの作品は、駅の魅力を広く伝える役割を果たしています。
博物館動物園駅は、かつて東京の交通の要所として多くの人々に利用されましたが、その役割を終えた今も、歴史的建造物としての価値を保ち続けています。今後も、この駅が多くの人々に愛され、その文化的な価値が引き継がれていくことが期待されます。