東京国立博物館は、日本と東洋の文化財(美術品、考古遺物など)の収集、保管、展示、調査、研究、普及を目的として、独立行政法人国立文化財機構が運営する日本の国立博物館です。東京都台東区の上野恩賜公園内に位置し、1872年(明治5年)に創設された日本最古かつ最大の博物館です。博物館は、本館、表慶館、東洋館、平成館、法隆寺宝物館の5つの展示館と資料館その他の施設から構成されています。
2023年4月時点で、東京国立博物館は国宝89件、重要文化財649件を含む約12万件の収蔵品を所有しています。これらの収蔵品は、日本政府が指定した美術・工芸品の国宝の約10%、重要文化財の約6%に相当します。また、2023年3月末時点で別に国宝54件、重要文化財260件を含む2,668件の寄託品も収蔵しています。収蔵品のうち、総合文化展(平常展)に一度に展示される文化財の数は約3,000件で、4週間から8週間ごとに展示替えが行われています。2020年度には、平常展の展示替え件数が5,041件、展示総件数は9,048件でした。
本館は、1932年(昭和7年)に着工し、1937年(昭和12年)に竣工、翌1938年に開館しました。設計は渡辺仁の案が採用され、日本伝統の木造建築を鉄筋コンクリートで再現した和洋折衷の建築様式となっています。2001年に「旧東京帝室博物館本館」の名称で重要文化財に指定されました。展示室は1階と2階に計26室あり、日本の絵画、彫刻、工芸、書跡などが展示されています。各展示室は、「日本美術の流れ」や「ジャンル別展示」など、テーマごとに分けられています。
東洋館は、谷口吉郎設計で1968年(昭和43年)に開館しました。中国、朝鮮半島、東南アジア、インド、エジプトなどの美術品を展示しています。2009年から2012年まで耐震工事と展示設備のリニューアルのため休館し、2013年1月2日に展示を再開しました。展示室は13室あり、教育普及スペースとしても活用されています。
表慶館は、1909年(明治42年)に東宮皇太子嘉仁親王(後の大正天皇)の成婚を祝うために開館しました。設計は宮廷建築家の片山東熊で、建物は重要文化財に指定されています。ネオ・バロック様式の建物で、中央と南北両端にドームを備えています。表慶館は、主に企画展会場として使用されています。
法隆寺宝物館は、1878年(明治11年)に法隆寺から皇室に献納された「法隆寺献納宝物」300件あまりを保存展示するために1964年(昭和39年)に開館しました。現在の建物は1999年に開館した2代目で、設計は谷口吉生が担当しています。展示品は、7世紀の宝物が中心で、館自体の休館日以外は毎日公開されています。
平成館は、皇太子徳仁親王(浩宮)の成婚を記念して1999年(平成11年)に開館しました。1階には考古資料展示室と企画展示室、大講堂があり、2階には特別展会場が設けられています。
本館の裏には池を中心とする庭園があり、旧寛永寺庭園の名残を残しています。庭園は春や秋に期間を限定して公開され、庭園内には応挙館、九条館、六窓庵、春草盧、転合庵などの歴史的建物が点在しています。また、博物館敷地内には旧因州池田家表門や旧十輪院宝蔵、ジェンナー銅像などがあり、重要文化財として保護されています。
黒田記念館は、洋画家黒田清輝(1866-1924)の遺産を活用して1928年(昭和3年)に建てられた記念館で、設計は岡田信一郎です。黒田記念室と特別室があり、『湖畔』『智・感・情』をはじめとする黒田の作品が収蔵されています。記念館は長らく東京国立文化財研究所の所管でありましたが、2007年に東京国立博物館の所管となりました。耐震工事を経て2015年1月2日にリニューアルオープンしました。
柳瀬荘は、埼玉県所沢市坂の下にあり、もとは実業家で茶人の松永安左エ門の別荘でした。構内に建つ「黄林閣」は、江戸時代の名主の住宅であり、国の重要文化財に指定されています。黄林閣を含む柳瀬荘は1948年(昭和23年)に松永から東京国立博物館へ寄贈され、毎週木曜日に公開されています。
東京国立博物館の収蔵品(館の用語では「列品」という)は約12万件あり、これは「点数」ではなく「件数」で数えられているため、実際の点数はさらに膨大です。収蔵品の入手経緯は主に以下の3つに分けられます:
これらの収蔵品には、日本およびアジア諸国、先史時代から第二次世界大戦終戦頃までの文化財が含まれ、特に中国および朝鮮半島の美術品が豊富です。また、日本のアイヌ美術や琉球美術も独立した展示室で紹介されています。
東京国立博物館では、美術品以外にも歴史資料、図書、写真資料を多く収蔵しています。代表的な歴史資料には、長崎奉行所キリシタン関係資料、江戸幕府が作成した「五海道其外分間延絵図並見取絵図」、伊能忠敬の測量図、日本初の文化財調査である壬申検査の関係資料、旧江戸城写真帖などがあります。これらは主に博物館構内西側の資料館に収蔵されており、研究者のために閲覧の便が図られています。また、帝室博物館時代に収集された世界の郵便切手も日本有数のコレクションとして保存されています。
東京国立博物館のコレクション充実には、個人所蔵家からの寄贈も大きく寄与しています。代表的な寄贈者とそのコレクションは以下のとおりです:
東京国立博物館は多くの国宝を保有し、以下のような美術品が代表的な国宝として展示されています。
東京国立博物館には他にも、多くの彫刻、工芸品、考古資料、歴史資料などが国宝または重要文化財として保管されています。これらの文化財は、日本や東洋の豊かな文化遺産を代表するものであり、各分野で重要な位置を占めています。展示の際には、それぞれの背景や価値が詳細に説明されており、訪れる人々にとって歴史と文化の理解を深める貴重な機会となっています。
このように、東京国立博物館は多岐にわたる文化財を収蔵・展示しており、日本と東洋の歴史や美術を広く紹介しています。博物館の収蔵品や展示品は定期的に入れ替わり、新たな視点で訪れるたびに新たな発見ができる魅力があります。