江戸前天ぷらの特徴
和食の定番である天ぷらは、地域によって使用する具材や揚げ油に違いがあります。江戸前天ぷらは、白キスやアナゴ、車エビなど東京湾で獲れた魚介類を、ごま油100%で揚げたものです。香ばしいごま油と甘辛いたれが絶妙に絡み合い、特に浅草近辺では観光客にも人気があります。
天丼が提供される店舗
天丼は、天ぷら専門店、蕎麦屋、割烹料理店、大衆食堂、弁当屋など、さまざまな和食店で提供されています。近年では、天丼を専門とする「天丼専門店」も登場しています。
天丼の歴史
誕生の起源とその広がり
天丼の起源には諸説あります。一説には江戸時代末期、新橋の蕎麦屋の屋台「橋善」や、1837年創業の浅草雷門「三定」などが先駆けとされています。また、明治時代に神田鍛冶町の「仲野」で発明されたとも言われています。
庶民に親しまれた日本のファストフード
天丼の価格は、明治20年には3銭、大正8年は25銭、昭和12年には40銭程度で、古くから東京の庶民に愛されてきました。
調理方法とスタイル
伝統的な江戸前スタイル
揚げたての天ぷらを、煮立てた甘辛い丼つゆに浸してからご飯に載せる「くぐらせる」方法が、江戸前天丼の伝統的な作法です。
全国でのバリエーション
全国的には、天ぷらを載せてからつゆを回しかけるスタイルが主流です。また、一部の大衆食堂や立ち食いそば店では、揚げ置きの天ぷらをつゆで軽く煮て提供する場合もあります。中には塩だれやごま塩、別添のつゆをかけて楽しむ店もあります。
つゆと衣のこだわり
丼つゆは、醤油・みりん・砂糖を煮切って作る濃い味が基本で、天ぷらが真っ黒になるほどの濃さの「黒天丼」が名物となっている店もあります。衣に関しても、揚げたてのカリッとした食感を尊ぶ店や、しんなりとさせた「出前の味」を提供する店など、さまざまなスタイルがあります。
天丼の種類
定番スタイル
一般的な天丼では、海老・いか・キスなどの魚介類をメインに、小ぶりのかき揚げや彩りとしていんげん、ししとう、ナス、かぼちゃ、レンコンなどの野菜天ぷらを添えるのが一般的です。
蕎麦屋の天丼
昔ながらの蕎麦屋では、大きめの海老2本のみを使用した、定型的なスタイルの天丼が提供されることが多いです。
上天丼とお好み天丼
上天丼は、海老や穴子などの大ぶりな具材が使用される豪華な天丼です。また、天ぷらの種類を指定して注文する「お好み天丼」も提供されています。
ご当地グルメとしての展開
地域ごとに地元の食材やつゆを活かした、ご当地グルメとしての天丼も登場しています。
その他のバリエーション
精進天丼(野菜天丼)
野菜の天ぷらのみを使用した天丼。
かき揚げ丼
大きなかき揚げを一つ載せた天丼。
たぬき丼
揚げ玉を載せた丼で、卵とじにされることもあります。東京では、小さなイカや海老を団扇状に揚げた天丼も「たぬき丼」と呼ばれることがあります。
天玉丼(天とじ丼)
天ぷらを甘辛い割下で煮て、卵でとじた丼。
みそ天丼
味噌ベースのたれをかけた天丼で、中部地方の一部で見られます。
塩天丼
塩味のたれ、またはごま塩や藻塩をかけて食べる天丼。