八丈島は、東京都の伊豆諸島に属する有人島で、リゾート地としても親しまれています。隣接する無人島「八丈小島」との区別のために「八丈本島」や「八丈大島」とも呼ばれることがあります。この島は、自然豊かで美しい風景が広がり、様々なアクティビティや観光スポットを楽しむことができます。
都心から飛行機でわずか55分の距離にあり、手軽なリゾート地としても親しまれています。美しい自然環境に恵まれ、温泉、海水浴、特産品など、訪れる観光客にさまざまな楽しみを提供しています。さらに、気候や地理的特徴もユニークで、他の島々とは異なる魅力を持っています。
八丈島は東京都心から約287キロメートル南に位置し、御蔵島の南南東約75キロメートルの海上にあります。島は、東山と西山という二つの火山が接合してできた、ひょうたん型の地形を持っています。全長は北西-南東14キロメートル、幅は北東-南西7.5キロメートルで、面積は山手線の内側とほぼ同じ大きさです。
羽田空港から八丈島空港までは飛行機でわずか55分で到着し、沖縄と比べても安価な旅費で行けるため、手軽なリゾート地として人気があります。
八丈島は富士火山帯に属する火山島で、島の西部には八丈富士(西山)、東部には三原山(東山)がそびえています。特に西山は直径約500メートルの火口があり、最後に記録された噴火は1605年から1606年頃とされています。東山は約10万年前から約3700年前まで活動しており、特に約4万年前には大規模な噴火が発生し、東山カルデラを形成しました。
島の火山活動は、17世紀までに複数回の記録が残されていますが、これらの噴火は比較的小規模であったと考えられています。島内には20以上の側火山や寄生火山があり、その多くは海岸線付近に位置しています。
八丈島の気候は、暖流である黒潮の影響を強く受け、ケッペンの気候区分で温暖湿潤気候(Cfa)に分類されます。1991年から2020年の平年値では、年平均気温は18.0℃で、高温多湿の気候が特徴です。年間を通じて風が強く、降水量も多いため、「常春の島」とも称されます。雪は数年に一度降ることがありますが、積もることは稀です。
八丈島は、伊豆・小笠原諸島の他の島々と同様に、陸棲・半陸棲の哺乳類が限られており、コウモリ類のみが土着の哺乳類として生息しています。また、外来種としてはニホンイタチやクマネズミ、キョンが確認されています。
一方で、鳥類や昆虫、海洋生物などの多様性には富んでおり、アオウミガメやアカウミガメ、ミナミハンドウイルカが観察されることがあります。特に2015年頃からは11月から4月にかけて周辺海域にザトウクジラが出現するようになり、ホエールウォッチングの名所としても注目を集めています。島の自然は、海中のサンゴ礁や豊かな海洋生物が観察できるダイビングスポットとしても人気があります。
2020年には、夏季に海水温が異常に高くなり、底土海水浴場をはじめとするサンゴ礁が白化する事態が発生しました。しかし、その後、2021年5月には現地ダイバーによってサンゴが徐々に回復している様子が確認されています。
八丈島は温泉でも有名です。豊富な温泉資源があり、島内にはさまざまな温泉施設が点在しています。入浴料も比較的安く、観光客に人気です。以下は代表的な温泉施設です。
静かな環境でリラックスできる温泉です。地元の人々や観光客に親しまれ、訪れる人々は心身ともに癒されます。
「やすらぎの湯」は、海を見渡せる絶好のロケーションが魅力です。美しい景色を楽しみながら、ゆっくりと湯に浸かることができます。
滝の景観が楽しめる露天風呂として有名です。自然の中での入浴は、日常の喧騒を忘れさせてくれます。
展望の良さが自慢の「みはらしの湯」は、島の景色を一望できる場所にあります。特に夕方の眺めは絶景です。
洞窟の中にあるような雰囲気の温泉で、神秘的な空間でリラックスできます。非日常を感じられる温泉体験ができるでしょう。
観光中の休憩スポットとして人気の「足湯きらめき」は、気軽に温泉を楽しむことができる場所です。足元からじんわりと温まる癒しの空間です。
八丈島は火山島のため、溶岩を主体とした荒々しい岩場の海岸が多く、砂浜は少ないです。しかし、島内唯一の砂浜である「底土海水浴場」は非常に人気があります。他の海水浴場は比較的閑散としており、監視員が常駐していないことも多いです。
八丈島でほぼ唯一の砂浜を持つ海水浴場で、シュノーケリングやダイビングスポットとしても人気です。海の家も唯一開設されており、ビーチでの一般的な環境が整っています。黒色の砂浜が特徴で、毎年多くの観光客が訪れます。
消波ブロックを設置した入り江にある、タイドプール型の海水浴場です。波の影響が少なく、安全に遊泳できるスポットとして親しまれています。
溶岩を主体とした岩場が広がる海水浴場で、海底が急に深くなるため、シュノーケリングやダイビングに向いています。冒険心をくすぐる場所として、上級者に人気です。
小さな砂場と磯が特徴の海水浴場です。隣接する漁港との距離も近く、地元の風景を楽しみながら泳ぐことができます。
2つの入り江と人工タイドプールがあり、自然の中でリラックスできる場所です。外洋に面しているため、潮の流れに注意が必要です。
夏季には堤防内が海水浴場として開放されます。漁港の静けさと海の美しさを楽しめる特別な場所です。
人工タイドプールが開放され、家族連れにも人気のスポットです。安全に海水浴を楽しむことができ、子ども連れの観光客におすすめです。
八丈島には多くの特産品があります。くさや、明日葉、ハイビスカス、島焼酎などは島を代表する名産品です。観光客にも人気が高く、お土産として購入されることが多いです。
独特な匂いを持つ干物「くさや」は、八丈島の名物として知られています。その強烈な香りは苦手な人もいますが、一度ハマるとやみつきになるといわれています。
明日葉は、健康食品としても人気があり、さまざまな料理に利用されています。八丈島の豊かな自然環境で育った新鮮な明日葉は、栄養価も高いと評判です。
八丈島の焼酎は、薩摩からの流人が伝えたとされ、大半が麦焼酎です。一部、芋焼酎と称されるものもありますが、実際には麦と芋の混合です。独自の風味があり、地元の人々に愛されています。
八丈島を代表する織物「黄八丈」は、美しい色合いと伝統的な技術で知られています。観光客にも人気で、工芸品として購入されることが多いです。
八丈島で普段「ロベ」と呼ばれるシンノウヤシは、島の風景を象徴する植物です。観光中にその美しい姿を目にすることができるでしょう。
フリージアの花は、八丈島の春を告げる花として親しまれています。毎年春には「フリージア祭り」も開催され、美しい花々が島を彩ります。
南国フルーツの一種であるパッションフルーツも、八丈島の特産品です。甘酸っぱい香りと味わいが特徴で、ジュースやデザートに使用されます。
八丈島の郷土料理「島寿司」は、独自のタレで味付けされた寿司で、わさびの代わりに辛子が使用されることが多いです。地元の食材を活かしたユニークな味わいを楽しむことができます。
八丈島は、自然環境が非常に豊かで、多様な動植物が生息しています。伊豆・小笠原諸島と同様に、島内には独自の生態系があり、特に鳥類や海洋生物の多様性が際立っています。
島内に生息する哺乳類は少なく、代表的なものには日本固有のイタチ科「ムジナ」や、島独特のウサギ「ヤマネ」などが見られます。
八丈島には、多様な鳥類が生息しています。特に渡り鳥の中継地点としても重要で、バードウォッチングを楽しむ観光客も多いです。
海洋生物も豊富で、ダイビングやシュノーケリングで観察できる魚やサンゴは、観光の大きな魅力です。海の中には、美しい珊瑚礁やカラフルな魚たちが広がっています。
八丈島の歴史は古く、縄文時代にはすでに人が住んでいたことが確認されています。律令制度の時代には東海道駿河国に属しており、平安時代には源為朝が伊豆大島から八丈小島へ渡り自害したと伝えられています。
1600年の関ヶ原の戦い後、西軍に属した宇喜多秀家がこの島に流されました。また、江戸時代には多くの流刑者が送られ、最後の流人は旗本近藤重蔵の嫡男、近藤富蔵でした。近藤富蔵は1826年に八丈島に遠島となり、1880年に赦免されるまで50年以上もの間、流人としての生活を送りました。
近藤富蔵が書いた『八丈実記』は、島の研究資料として東京都文化財に指定されていますが、他の資料との相違点も多く、史実としての信憑性には疑問が残る部分もあります。
江戸時代の八丈島は度重なる飢饉に見舞われ、特に明和年間の大飢饉では多くの餓死者が出ました。中之郷村では733人が餓死し、生き残ったのは400人足らずという悲劇があり、その冥福を祈る「明和飢饉餓死者冥福之碑」が中之郷地区に建てられています。
1947年、東京都知事であった安井誠一郎が八丈島を視察し、観光振興や産業開発を提案しました。この時期から島の観光産業は徐々に発展し、1960年代には「日本のハワイ」として首都圏からの新婚旅行先として人気を集めました。
しかし、1970年代以降、海外旅行が一般化し、沖縄が日本に返還されると、観光客の数は減少しました。それでも、八丈島は現在でも多くの自然愛好者やアウトドアファンに支持されており、美しい自然環境と豊かな歴史文化を求めて訪れる人々が後を絶ちません。
八丈島は、豊かな自然と温泉、特産品、そして独自の歴史と文化が調和した魅力的な観光地です。観光客は、リラックスした時間を過ごすことができ、温泉や海、特産品を楽しむことができます。都心からのアクセスも良いため、リゾート地としての魅力も高く、四季折々の景色を楽しむことができる島です。次回の旅行先として、ぜひ八丈島を訪れてみてはいかがでしょうか。