御蔵島は、東京都に属する伊豆諸島の一部であり、豊かな自然と独自の文化が息づく島です。この小さな島は、美しい自然景観や貴重な生態系、そして歴史的な背景を持ち、訪れる人々に独特の魅力を提供します。
御蔵島は、東京都心から南へ約190キロメートル、三宅島の南南東約19キロメートルに位置する、ほぼ円形の島です。島の面積は20.55平方キロメートル、周囲は16.4キロメートルで、中央には標高851メートルの御山(おやま)がそびえ立ちます。
この島は、富士箱根伊豆国立公園の一部であり、火山活動度ランクCに指定された活火山でもあります。御蔵島火山の活動は約7,000年前に停止し、その後も自然の浸食によって形成された壮大な海食崖が島の風景を彩ります。中には高さ500メートルにも達する絶壁があり、島の独特な景観を作り出しています。
御蔵島は、全体が豊かな原生林に覆われており、全国有数の巨樹の森として知られています。また、オオミズナギドリの繁殖地としても有名で、自然保護の観点から島内には「ガイド同伴でなければ立ち入れないエリア」および「ガイドがいても立ち入れないエリア」が設定されています。多くの宿泊施設では、観光客向けにガイドを斡旋しており、安全かつ環境に配慮した観光が推奨されています。
さらに、島周辺の海域には野生のミナミハンドウイルカが生息しており、イルカウォッチングが人気のアクティビティです。このエコツーリズムは、御蔵島の観光業に大きく寄与しています。
古くから、伊豆諸島は流刑地として知られており、御蔵島もその例外ではありません。しかし、過酷な環境のため流刑は早々に中止されました。江戸時代後期には、「二十八軒衆」という人口管理制度が導入され、島外からの転入を厳しく制限しました。この制度は現在でも残り、島外からの転入者は村営住宅への入居が基本となっています。
また、1863年(文久3年)には、香港からアメリカ合衆国へ向かっていた「バイキング号」が御蔵島の岩場に座礁し、島民が乗員483人を救助したエピソードがあります。このような歴史的出来事は、島の誇りとして語り継がれています。
御蔵島の主な産業は、林業、漁業、農業、観光です。特に、島産のツゲ材は鹿児島県薩摩半島と並ぶ産地として知られており、印鑑や櫛、将棋の駒などの高級品に加工されています。観光面では、豊かな自然とエコツーリズムが魅力で、特にイルカウォッチングは人気が高く、夏場には宿泊施設が満室になることが多いです。
ただし、観光目的での来島には事前に宿泊施設の予約が必要であり、予約がない場合は上陸が許可されません。島全域が国立公園であるため、野宿やキャンプは禁止されています。また、日帰り観光も可能ですが、船の就航率が低いため、帰りの便が欠航するリスクがあることから、宿泊施設の予約が推奨されています。
御蔵島には公共交通機関が存在せず、タクシーやレンタカーも利用できません。旅行者は徒歩、もしくは宿泊施設が提供する車両を利用することになります。島内の道路は急な坂やカーブが多いため、自転車の使用は禁止されていますが、原付バイクの使用は認められています。
島外との連絡手段は主に東海汽船の貨客船で、東京港(竹芝桟橋)、三宅島、八丈島と結ばれています。しかし、港湾施設が貧弱なため、欠航が多く発生します。特に冬場は接岸率が低く、運賃が全額払い戻されることもあります。
空路では、東邦航空のヘリコプターが運航しており、八丈島空港や三宅島空港との間を結んでいます。運航率は高いものの、座席数が少なく、運賃も高いため、利用には計画が必要です。
御蔵島はその独特の風景や歴史が、様々な作品の舞台として取り上げられてきました。例えば、インターネットドラマ『Dolphin swims』ではイルカと島の生活が描かれ、小説『海暗』や『モビィ・ドール』では島の歴史や文化が繊細に表現されています。また、漫画やアニメでも、御蔵島をモデルにした作品がいくつか存在し、島の知名度を高めています。
御蔵島は、その豊かな自然と歴史、そして独自の文化が融合した魅力的な島です。観光に訪れる際には、事前の準備と計画が必要ですが、その苦労を忘れさせるほどの美しい風景や感動的な体験が待っています。自然との共生を大切にしながら、御蔵島の魅力を存分に楽しんでください。