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モヤイ像

モヤイ像は、東京都伊豆諸島の新島村で生まれた独特な石像で、イースター島のモアイ像に似たデザインを持っています。しかし、このモヤイ像は単なる模倣ではなく、地元の文化や歴史と結びついた日本独自の石像です。

新島の特産品「抗火石」

新島村には「抗火石(コーガ石)」という、非常に珍しい石材が産出されます。この石は軽くて加工しやすいため、さまざまな彫刻に用いられています。抗火石は世界でも新島とイタリアのリーパリ島のみで採掘される貴重な石で、その埋蔵量は約10億トンと推定されています。

モヤイ像の由来と意義

モヤイ像は、抗火石を材料にして作られた石像で、地元の観光協会の理事でありアーティストでもあった大後友市が考案しました。新島の「モヤイの丘」をはじめ、島内の各地に多くのモヤイ像が設置されています。そのデザインは、イースター島のモアイ像を参考にしつつも、独自のアレンジが施されています。

「モヤイ」という名前には、単にモアイ像を真似たという意味だけでなく、船をつなぎ留める「舫う(もやう)」や、助け合いの意味を持つ「催合う(もやう)」という日本語の動詞も由来しています。この言葉は現在ではほとんど使われなくなっていますが、新島では今でも使われ続けています。

モヤイ像の歴史と展開

モヤイ像の寄贈活動

新島では、昭和50年代に日本各地にモヤイ像を制作して寄贈する活動が行われていました。この取り組みにより、現在でも全国各地でモヤイ像を見ることができます。

渋谷駅のモヤイ像

東京都の渋谷駅西口(南西側)には、待ち合わせの目印として有名なモヤイ像があります。このモヤイ像は、1980年に新島が東京都へ移管されてから100年を記念して、新島から渋谷区に寄贈されました。除幕式は同年9月25日に行われました。

この像はイースター島のモアイ像に似ていますが、胴体部分はなく、ウェーブのかかった髪が特徴的です。また、バス停側とコインロッカー側でそれぞれ異なる顔を持っているのもユニークです。バス停側の顔は長髪のサーファーを、コインロッカー側の顔は髭を生やした流刑地時代の人物を表現しています。

渋谷駅モヤイ像のエピソード

2009年には、アニメ「ルパン三世」のキャラクターがモヤイ像を“盗む”というユニークな企画が話題になりました。この企画は新島観光協会や渋谷警察署などの協力で実現し、実際にモヤイ像は一時的に“盗まれ”、新島で洗浄されてから元の場所に戻されました。また、2018年にはモヤイ像の汚れを作者の孫が嘆いたことがきっかけで、テレビ番組で洗浄が行われました。

蒲田駅のモヤイ像

蒲田駅東口駅前広場にもモヤイ像が設置されています。1984年に新島村から二体が寄贈されましたが、1989年の駅前整備の際に一体が撤去されました。その後、長らく倉庫に保管されていたもう一体は、1998年にテレビ番組を通じて青森県深浦町へ贈られました。

その他のモヤイ像

竹芝桟橋のモヤイ像

竹芝桟橋の「ニューピア竹芝」や茨城県石岡市の柏原池公園、静岡県下田市の道の駅開国下田みなとにもモヤイ像が設置されています。これらの像も新島の抗火石を使用して作られたもので、それぞれの地域で観光の目玉となっています。

モヤイ像の絵文字

携帯電話の絵文字には「MOYAI(モヤイ像)」という絵文字が存在します。この絵文字は2003年にKDDIの絵文字「タイプD」バージョンで初めて実装されました。Unicodeに国際規格として採用された際には、「Japanese stone statue like Moai on Easter Island(イースター島のモアイに似た日本の石像)」という説明が付けられ、渋谷駅のモヤイ像を模したデザインになっています。

ただし、実際に多くの携帯端末で使用されている絵文字はイースター島のモアイ像を模したデザインが主流であり、実質的にはモアイ像の絵文字として認識されています。

まとめ

モヤイ像は、単なるイースター島のモアイ像の模倣ではなく、日本の新島で育まれた独自の文化と歴史を反映した石像です。全国各地で見ることができるモヤイ像は、新島の抗火石を使った作品であり、日本の地方文化や国際的な繋がりを象徴する存在です。

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名称
モヤイ像

伊豆七島・小笠原

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