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くさや

独特の香りがクセになる伝統の味

「くさや」は、伊豆諸島の特産品として知られ、特に新島や八丈島をはじめとする島々で今も盛んに製造されています。一度焼けば部屋中に立ち込める強烈な香りが特徴で、「臭いけれど旨い」と評される独特の干物です。この香りと味わいが島焼酎との相性抜群で、地元の人々はもちろん、多くの観光客にも親しまれています。

くさやの魅力は、そのクセになる風味と、幅広い食べ方のバリエーションにあります。マヨネーズや唐辛子を添えてワインと合わせたり、おやつ代わりに楽しんだりと、工夫次第でさまざまな味わい方ができるのです。

伊豆諸島の伝統食品くさやの誕生と歴史的背景

江戸時代に生まれた島の保存食

くさやの歴史は江戸時代にさかのぼります。伊豆諸島の人々にとって、塩は非常に貴重な資源でした。当時、島民は年貢として幕府に塩を納めなければならず、生活用の塩も制限されていました。そのため、魚の塩漬けに使う塩水は何度も再利用されていたのです。

この再利用された塩水に、魚のエキスや海の成分が徐々に蓄積され、自然発酵が進むことで「くさや液(くさや汁)」と呼ばれる発酵液が生まれました。このくさや液にムロアジやトビウオなどの魚を漬け込み、天日干しにしたものが、現在まで続く「くさや」です。

発酵の力が生む芳醇な風味

くさや液には、魚由来のアミノ酸や発酵菌が豊富に含まれており、これが独特の香りと深い旨味を生み出しています。発酵の過程で香りは強くなりますが、それこそがくさやの魅力であり、島の人々にとっては誇りでもあります。

くさやの製造と味わい

くさや液に漬けて干す伝統的な製法

くさやは、まずムロアジやトビウオなどの魚を三枚におろし、骨や内臓を丁寧に取り除いた後、くさや液に数時間漬け込みます。その後、天日干しして水分を飛ばし、旨味を凝縮させます。この工程は気候や風、湿度を見極める職人の技が必要とされ、機械化が進む現代でもほとんどが手作業で行われています。

焼くと広がる芳香と味の魅力

焼いたときに立ち上る強烈な香りは、「これぞくさや!」と感じさせる瞬間です。香りに抵抗がある人もいますが、一口食べれば香ばしさと旨味が口いっぱいに広がり、やみつきになる人も少なくありません。焼き方にもコツがあり、裏面を7割、表面を3割程度の割合で弱火であぶるのが最適とされています。

おすすめの食べ方

定番の食べ方と調味料

焼いたくさやは、そのままでも美味しいですが、より美味しく味わうために酒、しょうゆ、マヨネーズ、レモンなどを添えると、味の変化が楽しめます。特に焼酎との相性は抜群で、島では宴会の定番メニューとされています。

シーンに合わせた楽しみ方

くさやは、家庭の食卓はもちろん、結婚式や成人式、入学式などの祝いの席でも振る舞われます。地元の人々にとっては、島寿司や島酒と並ぶ伝統的なごちそうであり、大人数での食事会には欠かせない存在です。また、少し冷めても旨味が落ちにくいため、酒の肴として常備する家庭も多いのが特徴です。

くさやが味わえる場所

伊豆諸島の飲食店で堪能

くさやは新島、八丈島、伊豆諸島各地の飲食店で味わうことができます。多くの店では、地元の焼酎や地魚料理とセットで提供されており、観光客にも人気のメニューです。お土産用にパック詰めされたものもあり、自宅でじっくり楽しむことも可能です。

旬の時期と購入のタイミング

くさやの旬は5月から8月にかけてで、この時期に獲れるムロアジは脂がのって特に美味しいとされています。旅行のタイミングに合わせて訪れると、最高のくさやを味わえる絶好の機会となるでしょう。

まとめ:くさやで味わう伊豆諸島の魅力

くさやは、単なる干物ではありません。伊豆諸島の風土と歴史、そして島人の知恵が詰まった逸品です。独特の香りと奥深い味わいは、一度体験すれば忘れられない記憶となるでしょう。島の酒とともに楽しむくさやは、旅の思い出をより濃密にしてくれるはずです。伊豆諸島を訪れた際には、ぜひ現地で本物のくさやを味わってみてください。

Information

名称
くさや

伊豆七島・小笠原

東京都