バスタ新宿は、東京都渋谷区千駄ヶ谷五丁目の新宿駅南口地区に位置する交通ターミナルです。鉄道駅や高速バスターミナル、タクシー乗降場などが集約され、交通機関のハブとして機能しています。正式名称は「新宿南口交通ターミナル」であり、その開業により、新宿駅西口周辺の19か所に分散していた高速バス乗降場が集約されました。
バスタ新宿は、118社のバス事業者が乗り入れる日本最大級の高速バスターミナルです。1日の発着便数は最大1625便、停車場数は15、行先は39都府県300都市に及びます。また、国土交通省関東地方整備局が施行した「新宿駅南口地区基盤整備事業」の一環で整備され、2016年4月4日に供用を開始しました。ターミナル内には観光案内所や土産物店、小売店舗が常設され、地方物産の販売イベントも開催されています。
新宿駅南口・新南口と新宿跨線橋(国道20号)は駅前広場を介さずに直結しており、タクシーの客待ちや一般車の乗降が行われることで、渋滞や接触事故が発生しやすい状態が続いていました。また、新宿跨線橋は1925年に架設されてから80年以上が経過しており、老朽化が進んでいました。これに加えて、東西を結ぶ道路の幅員が十分でないため、歩行者であふれかえっていました。
新宿駅周辺の高速バス停留所は運行会社の違いから西口を中心に19か所に分散しており、利用者にとってはわかりづらいものでした。特に一部の停留所は新宿駅から離れた場所にあり、鉄道からバスへの乗り換えが不便でした。これらの問題を解決するため、国土交通省は「新宿駅南口地区基盤整備事業」を実施し、その一環として「新宿交通結節点」を整備しました。
新宿跨線橋の南側に位置する「新宿交通結節点」は、駅施設や歩行者広場、タクシー乗降場、高速路線バス関連施設を立体的に配置しています。立体道路制度を活用し、3階・4階および進入路は国道20号の一部となっています。そのため、自動車ターミナル法が定めるバスターミナルの対象外とされています。
まず、線路上に約1.47ヘクタールの人工地盤を建設し、その上に「新宿交通結節点」を整備しました。この人工地盤により、新宿跨線橋の拡幅改築に必要な作業スペースが確保され、その上にバスターミナルが設立されました。この事業は、他地域におけるバスタプロジェクトのモデルケースとしても機能しています。
建設段階では「新宿交通結節点」や「新宿南口交通ターミナル」と呼ばれていましたが、2015年に国土交通省が愛称を公募しました。公募には日本国外からも応募があり、最終的に「バスタ新宿」という愛称が選ばれました。この名前は「バス・タクシーの乗降場を中心とした複合ターミナルであることをイメージできる」ことや、「覚えやすく親しまれること」を理由に選ばれました。
「バスタ新宿」という名前は、多くの人々に親しまれるよう、短く覚えやすいものとして選定されました。また、この愛称には「バスがスター(星)のように各地に放射する」という意味も込められています。なお、ターミナル内の英語・中国語・韓国語の案内表示では、「バスタ新宿」に相当する愛称は設定されておらず、「Shinjuku Expressway Bus Terminal」と表記されています。
バスタ新宿の所在地は東京都渋谷区にあります。新宿駅の新南口や甲州街道口など、バスタ新宿側にある改札は渋谷区に位置しており、向かい側にある新宿駅の大部分を占める南口や西口、東口方面は新宿区に属しています。バスタ新宿の行政上の所在地は渋谷区ですが、「新宿」という名称が用いられている理由は、国道20号に沿って区境が引かれているためです。
バスタ新宿の建設工事は2006年4月8日に起工し、2016年春に完成しました。同年4月4日に正式に供用を開始し、高速バスターミナル、タクシー乗降場、東京観光情報センターがそれぞれ稼働を始めました。また、京王電鉄バスが運営していた新宿高速バスターミナル(ヨドバシカメラ新宿西口本店前)も同年5月8日をもって歴史に幕を下ろし、翌日からバスタ新宿に全ての高速バスが集約されました。
バスタ新宿開業後、5月3日には最多の40859人が利用し、2016年6月にはトイレの増設工事も完了しました。さらに、2018年4月には土産物店「バスタ新宿 THE土産SHOP」がオープンし、観光客にも便利な施設となっています。