阿佐ヶ谷神明宮は、東京都杉並区阿佐谷北に位置する由緒ある神社です。この神社は、「八難除祈祷」と呼ばれる特別なご祈祷を行うことで知られており、多くの参拝者が厄除けや開運を祈願に訪れます。レース型ブレスレットお守り「神むすび」や、刺繍入りご朱印「大和がさね」など、現代的で美しいお守りやご朱印も頒布しています。
主祭神として、天照大神が祀られています。また、月読命と須佐之男命を配祀しており、三神が一体となって神明宮を守護しています。
阿佐ヶ谷神明宮の創建は、建久元年(1190年)頃に遡ると伝えられています。土豪の横井兵部(あるいは横川兵部とも言われる)が伊勢神宮に参拝した際に神の霊示を受け、宮川の霊石を持ち帰り神明宮に安置したことが始まりとされています。この霊石は現在も御神体として祀られており、石棒であると言われています。
『江戸名所図会』(寛政12年、1800年)によれば、日本武尊が東征の帰途、阿佐谷の地で休息し、その後、尊の武功を慕った村人たちが、旧社地(現在の阿佐谷北五丁目一帯、お伊勢の森と称される)に一社を設けたのが阿佐ヶ谷神明宮の始まりとされています。その後、当社の別当寺だった世尊院の住職・祇海の時代に、現在の場所に移転しました。
江戸時代には庶民の信仰が篤く、その一端を示すものとして、文政11年(1828年)に奉納された「内藤新宿仲下旅籠中仲下茶屋中」と刻まれた銅製の三本御幣が残されています。明治7年には神明社、日枝社、北野社を合祀して「天祖神社」とされました。
1990年(平成2年)、明治以降「天祖神社」とされていた社号を江戸時代からの名称である「神明宮」に復称しました。その後、2009年(平成21年)秋に「平成の大改修」を完了し、神明造りの御殿・神門や新しい祈祷殿・能楽殿などが新たに設けられました。
本殿には、阿佐ヶ谷神明宮の御祭神である天照大神が中央に祀られ、左右の摂社には、右に月読命、左に須佐之男命が祀られています。本殿は、元々拝殿と繋がっていましたが、曳家によって移動されました。摂社には、かつての天祖神社の木材を一部使用し、不足分は米ヒバで補い、建立されています。それぞれの神々を象徴する装飾が施されており、天照大神は太陽、月読命は月、須佐之男命は海を象徴しています。
拝殿は、本殿と切り離され、壁などを取り払うことで、参拝者が自由に本殿や摂社を拝むことができるようになっています。さらに、例大祭などの重要な祭事を執り行う場として、新たに整備されました。これにより、より荘厳な儀礼を行うことが可能となりました。
新しく建てられた降臨殿(祈祷殿)は、旧社殿の木材を再利用し、主要木材としてヒバ、ヒノキを使用した神明造りの木造平屋建てです。大屋根には新しい銅板が約3000枚使用され、外壁は漆喰仕上げとなっています。祈祷待合所は、冬でも暖かい床暖房が備えられ、快適に利用できます。この降臨殿には、天照大神の荒魂と豊受大神が同時に祀られています。
神楽殿では、本格的な能・狂言の上演や阿佐ヶ谷囃子(杉並区無形文化財指定)、お神楽など様々な伝統芸能が奉納されています。鏡板の松の絵は、狩野宗家系列の能画家・作面家によるもので、伝統的な狩野派の構図を基にしながら現代的な感覚を取り入れたモダンな作品です。今後も神楽殿は和の伝統文化の発信基地として、様々な芸術活動の場となることが期待されています。
儀式殿では、春分・秋分の日に祖先の霊を慰める合同祖霊祭が行われています。この祭りでは、神職が祭詞を奏上し、祖先の御霊を慰め、その遺徳を称えます。祖霊祭は、「子孫が栄えて欲しい」という祖先の願いに応える形で、親族達が集まり、子孫の姿を奉告するものです。繰り返される霊祭によって、祖先の御霊は浄化され、より高い神々の列に加わっていくと信じられています。
神明殿(参集殿)は、神社の総合案内所であり、各種祭典後の会場としても利用されています。二階の大広間「金の間」では、椅子席80名、座布団席の場合100名まで収容可能です。舞台では能や狂言などの演目が行われることもあります。また、現代の阿佐谷神明宮の文化的役割を象徴する場として、地域住民の交流や伝統文化の保存・継承にも力を入れています。
阿佐ヶ谷神明宮では、レースブレスレット型のお守り「神むすび」を頒布しています。このお守りは、2014年(平成26年)秋に考案され、2015年(平成27年)1月より頒布が開始されました。神むすびは、現代的なデザインながらも、古来の信仰心を象徴するアイテムとして多くの参拝者に人気があります。
「大和がさね」は、日本の伝統技術である美濃和紙と繊細で優美な刺繍を重ね合わせたご朱印符です。2019年(平成31年)1月から頒布が開始され、上品なデザインと質感が特徴で、多くの御朱印愛好者に支持されています。
阿佐ヶ谷神明宮へは、JR中央線「阿佐ヶ谷駅」から徒歩でアクセス可能です。周辺には多くの公共交通機関が利用でき、アクセスも良好です。