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ちひろ美術館・東京

(びじゅつかん とうきょう)

ちひろ美術館・東京は、公益財団法人いわさきちひろ記念事業団によって運営される東京都練馬区に位置する美術館で、世界初の絵本美術館です。この美術館は、いわさきちひろを中心に、各国の絵本の原画を主な展示物としています。

設立の背景と経緯

1974年にいわさきちひろが亡くなった翌年、長男の松本猛が中心となり、いわさきちひろ記念事業団設立準備委員会が発足しました。その後、彼は美術館建設のための募金運動を開始し、資金を捻出するために出版社と協力して母の作品集やエッセイ集を発表しました。1977年9月、いわさきちひろの自宅兼アトリエ跡地に「いわさきちひろ絵本美術館」として開館しました。

館長の交代と改称

初代館長には松本猛の依頼により飯沢匡が就任し、その後1995年2月には黒柳徹子が二代目館長に就任しました。1997年4月には「ちひろ美術館」に改称されましたが、その後の増築によって館内は迷路のようになり、段差が多いことから利用者からは使いづらいという声が寄せられるようになりました。これを受け、2000年12月に美術館は全面改築のために一旦休館しました。

再オープンとリニューアル

2002年9月7日、美術館は「ちひろ美術館・東京」として再オープンしました。設計は内藤廣が担当し、施工は戸田建設東京支店が手掛けました。リニューアル後の美術館には、シバザクラやツルバラが植えられた「ちひろの庭」や、いわさきちひろのアトリエが忠実に再現されました。また、100席の多目的展示ホールも新設され、館内全体がバリアフリー化されました。このリニューアルは第45回BCS賞(2004年)を受賞しました。

開館40周年とその後の展開

2017年、ちひろ美術館・東京は開館40周年を迎え、これまでに延べ約274万人が訪れました。また、2020年にはちひろ美術館(東京・安曇野)が、第一回日本博物館協会賞を受賞しました。

施設概要

館内の主要施設

ちひろ美術館・東京には、以下のような主要施設が設けられています。

ちひろ美術館のコレクション

世界最大規模の絵本専門美術館

ちひろ美術館は、世界で最初の絵本専門美術館として、そのコレクションは約28,000点にのぼります。日本国内外の絵本画家の作品や資料を収蔵しており、その中には35の国と地域、228名のアーティストによる作品が含まれます。この数は、絵本専門美術館としては世界最大規模であり、国際アンデルセン賞画家賞受賞者12名を含む多くの代表的な絵本画家の作品が揃っています。

コレクションの成り立ち

ちひろ美術館がこれだけの規模のコレクションを持つに至った背景には、美術館設立当初からの理念があります。当時、絵本が美術の一ジャンルと見なされることは少なく、いわさきちひろの作品を保存・公開するための美術館は他に存在しませんでした。絵本文化の重要性を認識し、その原画を美術作品として位置づけることで、世界中の絵本画家たちから共感を得ることができました。多くの画家が作品を廉価で提供し、寄贈も行われました。

安曇野ちひろ美術館の設立

1997年には、コレクションをさらに充実させるために、安曇野ちひろ美術館が設立されました。この美術館では、収蔵作品がいつでも鑑賞できる環境が整えられました。

絵本とイラストレーションの歴史

ちひろ美術館は、絵本を美術表現の一つとして位置づけ、その歴史を大切にしています。絵本の歴史は、紀元前15世紀頃に制作された『死者の書』にまでさかのぼり、その表現は古代エジプトやヨーロッパ、中国、日本など世界中の文化圏で見られます。日本では、12世紀頃からの絵巻物が絵本の原初的な形態とされ、江戸時代には赤本や青本、黒本などの絵草子が登場しました。

ちひろ美術館では、古代エジプトから20世紀半ばまでの絵本とイラストレーションの歴史を伝えるオリジナル作品や復刻資料、複製資料を収集・保存・展示しています。これらの展示を通じて、絵本が人類にとっていかに重要な文化であるかを伝えることを目指しています。

Information

名称
ちひろ美術館・東京
(びじゅつかん とうきょう)

中野・荻窪

東京都