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牧野記念庭園

(まきの きねんていえん)

練馬区立牧野記念庭園は、東京都練馬区東大泉に位置する都市公園であり、植物園としても機能しています。この庭園は、著名な植物学者である牧野富太郎博士(1862年~1957年)の業績を顕彰するため、1958年(昭和33年)に開園しました。博士の自宅跡に作られたこの庭園は、植物学に対する博士の情熱を象徴する場所となっています。

庭園の歴史と国の登録記念物

この庭園は、牧野富太郎博士がかつて居住していた邸宅の跡地にあります。博士は1926年(大正15年)にこの地に移り住み、1957年(昭和32年)に94歳で生涯を閉じるまで、ここで植物研究に従事しました。2009年には「牧野記念庭園(牧野富太郎宅跡)」として、国の登録記念物に指定され、その後2020年には東京都の名勝及び史跡に指定されました。しかし、2023年には国の登録記念物としての登録は抹消されています。

庭園内の植物

牧野記念庭園には約300種類の植物が植えられており、その中には牧野博士が命名したセンダイヤザクラや、亡き妻にちなむスエコザサなど、珍しい植物も数多く含まれています。これらの植物は、博士の植物学への情熱と愛情を感じさせるものであり、学問的にも貴重な存在です。

庭園の四季

庭園では、四季折々の植物が美しく咲き誇ります。以下では、季節ごとの見どころを紹介します。

春の庭園

春には、庭園の入口でカンザクラ‘大寒桜’が咲き始め、春の訪れを告げます。その他にもカタクリやニリンソウ、ヤマザクラ、モチツツジなど、春の花々が庭園を彩ります。

夏の庭園

夏になると、庭園の緑が一層深まります。ヒメアジサイやウバユリ、キツネノカミソリなど、夏の植物が庭園を鮮やかに彩ります。特にヒメアジサイは、博士の次女・鶴代氏が保存したものが再び庭園に戻り、夏の風物詩として親しまれています。

秋の庭園

秋には、木々の葉が紅葉し、庭園全体が美しい色彩に包まれます。ヒガンバナやシロバナマンジュシャゲ、キンモクセイの香りが庭園を秋らしく演出し、ムラサキシキブやノジギク、イロハモミジの紅葉も楽しめます。

冬の庭園

冬の庭園は、冷たい空気の中にもヒイラギ‘ヒトツバヒイラギ’やワビスケ‘初雁’などが花を咲かせ、ロウバイやウメ‘緑萼梅’などが春の訪れを予感させます。葉を落とした木々が柔らかな日差しを受け、静かな冬の美しさを醸し出します。

記念館の紹介

牧野記念庭園には、牧野博士の遺品や関連資料を展示する記念館も併設されています。この記念館は、博士の邸宅跡地に建てられ、2010年にリニューアルオープンしました。

常設展示室

館内には、牧野博士が愛用していた採集道具や描画道具、また博士が執筆した書物や植物図などが展示されています。これらの展示を通じて、植物研究に生涯を捧げた博士の姿をたどることができます。

企画展示室

企画展示室では、年に3~4回、博士や植物に関連する特別展示が行われます。これまでに博士の生誕150年や、大泉転居90年を記念した展示が開催されました。これらの展示を通じて、博士の功績とともに、植物学の面白さや楽しさを伝えています。

書屋展示室

書屋展示室では、牧野博士が実際に使用していた書斎と書庫の一部が保存されています。博士は晩年、この書斎で著書の執筆や植物の描画を行い、書庫には4万5千冊にも及ぶ書籍が積まれていました。書斎の様子を再現する取り組みが行われ、2023年に公開されました。

講習室

講習室では、牧野博士の生涯や功績についての映像が視聴できるほか、ボタニカルアート講座や標本製作などのイベントも開催されています。これらのイベントは、子どもから大人まで幅広い層に植物の魅力を伝える場となっています。

牧野記念庭園が与えた影響

牧野記念庭園は、多くの人々に影響を与えてきました。例えば、同じ地域に住んでいた漫画家の松本零士氏は、「大泉学園に引っ越してきたとき、偶然にも私のデビュー作『蜜蜂の冒険』で参考にした牧野博士が住んでいたと聞いて、非常に強い縁を感じた」と語っています。

牧野富太郎博士の生涯

牧野富太郎博士(1862年5月22日 - 1957年1月18日)は、日本の植物学者であり、「日本の植物学の父」として広く知られています。高知県高岡郡佐川町で生まれた博士は、多数の新種を発見し、命名を行った近代植物分類学の権威としてその名を残しています。博士の研究成果は50万点もの標本や観察記録、そして『牧野日本植物図鑑』に代表される多数の著作として後世に伝えられています。

博士は旧制小学校中退ながらも理学博士の学位を取得し、94歳で死去する直前まで日本全国を巡って膨大な数の植物標本を作製しました。個人的に所蔵していた標本は40万枚に及び、命名植物は1,500種類を超えるといわれています。

Information

名称
牧野記念庭園
(まきの きねんていえん)

中野・荻窪

東京都