東京都 » 八王子・高尾山・町田

弁天洞窟

(べんてん どうくつ)

弁天洞窟は、東京都稲城市矢野口2411にある真言宗豊山派の古刹、威光寺の境内に存在する地下霊場です。この洞窟は、1982年(昭和57年)10月に「新東京百景」の一つとして選定され、また2003年(平成15年)には「東京の名湧水57選」にも選ばれるなど、歴史的かつ文化的な価値が高く評価されています。現在では、観光名所としても知られ、多くの参拝者が訪れます。

洞窟の歴史と起源

弁天洞窟は、もともとは古墳時代に造られた横穴墓であったという説があります。多摩川や鶴見川周辺では6世紀から7世紀頃に横穴墓が数多く造られましたが、この洞窟もその時代のものとされています。しかし、明治時代に入ると洞窟は大規模に掘り進められ、現在のような曲がりくねった形状へと変えられました。そのため、古代横穴墓としての原形は失われてしまいました。

石仏や石碑の歴史的意義

洞窟内には、弁才天、大日如来、大黒天など、計23基の石仏や石碑が安置されています。これらの石仏は、かつて近隣の穴澤天神社の境内に安置されていたもので、威光寺が穴澤天神社の別当寺であった関係から、明治時代に弁天洞窟へ移設されたと考えられています。

新東京百景と東京の名湧水57選

1982年(昭和57年)10月、弁天洞窟は「新東京百景」の一つとして選定されました。また、2003年(平成15年)1月には、威光寺境内の洞窟の湧水が「東京の名湧水57選」にも選ばれました。これにより、弁天洞窟は観光地としても高い評価を受け、稲城市の名所として知られるようになりました。

伝説と信仰

大蛇と弁才天の伝説

威光寺に伝わる伝説によると、かつてこの地域の小沢峰には大蛇が棲んでいるとされていました。ある夜、村人が夢で大蛇が弁才天に変化するのを見ました。村人たちは相談し、この洞窟を掘ったところ、弁才天像が見つかりました。これが弁天洞窟の始まりとされ、大蛇が弁才天の化身として現れたと信じられています。この弁才天像に加え、大黒天と毘沙門天が祀られ、三福神として信仰を集めています。

大蛇の彫刻と三福神

洞窟内には、中央の池の周りに彩色された大蛇の彫刻があり、まるで洞窟の壁際を這っているかのように見えます。また、弁才天像、大日如来像、龍神像などが洞窟内に配置され、右手の通路奥には「金洗いの井戸」があり、ここでお金を洗うとご利益があると言われています。

洞窟の発掘と拡張

明治時代の拡張工事

洞窟内にある2基の石碑には、明治17年(1884年)8月にこの洞窟を造った人物として、矢野口村とその周辺地域の村人たちの名前が刻まれています。発願者として記されているのは、笹久保惣兵ヱと小俣勇造の二名で、願主として嘉山八郎右ヱ門ほか28名の村人の名前も確認されています。このことから、洞窟の拡張工事は地域住民の手によって行われたことがわかります。

関流和算と洞窟設計

洞窟の拡張設計を担当したのは、当時矢野口村に住んでいた関流和算の指導者、小俣勇造でした。関流和算とは、日本で独自に発展した数学の一分野であり、この洞窟の設計にもその知識が生かされた可能性があります。洞窟内の構造は複雑で、中央部には池が配置され、さらに奥へ進むと8の字状の通路が設けられています。

洞窟内の石仏と信仰

石仏の配置と由来

洞窟内には23基の石仏や石碑が配置されており、その多くは江戸時代から明治時代にかけて作られたものです。これらの石仏は、もともと近隣の穴澤天神社の北側斜面にある横穴に安置されていたもので、威光寺が穴澤天神社の別当寺であったため、弁天洞窟が造られた際に移設されました。弁才天、大日如来、龍神、大黒天、毘沙門天など、様々な神仏が洞窟内に祀られています。

金洗いの井戸とご利益

洞窟内の右手奥にある「金洗いの井戸」は、参拝者にとって特別な場所です。ここでお金を洗うと金運が上昇し、財運に恵まれるという信仰があり、多くの参拝者が訪れています。弁天洞窟全体が霊場であり、神聖な空気に包まれているため、訪れる人々は心を清め、祈りを捧げています。

文化財としての評価

新東京百景への選定

弁天洞窟は1982年(昭和57年)10月に「新東京百景」に選定されました。これは、東京都内の景勝地として、文化的・歴史的な価値が認められたことを意味します。洞窟内の石仏群や大蛇の彫刻、洞窟全体の設計が、東京の名所として多くの観光客を惹きつけています。

「東京の名湧水57選」にも選ばれる

さらに、2003年(平成15年)には威光寺境内の湧水が「東京の名湧水57選」にも選ばれました。洞窟内の湧水とともに、この地域の自然環境も高く評価されています。湧水は古くから地元の人々の生活を支え、信仰の対象ともなってきました。

観光地としての弁天洞窟

拝観方法とアクセス

現在、弁天洞窟は観光名所として多くの人々に親しまれています。拝観は有料で、威光寺の受付で拝観券を購入する必要があります。洞窟内にはろうそくを持って進むと、壁際に彩色された大蛇や石仏が祀られている光景が広がります。ただし、現在は崩落の危険があるため、立ち入り禁止となっています。京王電鉄相模原線の京王よみうりランド駅から徒歩8分の場所にあり、アクセスも良好です。

観光客への影響

昭和57年に「新東京百景」に選ばれて以来、弁天洞窟は稲城市の観光地として広く知られるようになり、多くの観光客が訪れるようになりました。特に、洞窟内の神秘的な雰囲気や、石仏群、大蛇の彫刻などは観光客に人気があり、霊場としての静けさと神秘性を体験できます。

Information

名称
弁天洞窟
(べんてん どうくつ)

八王子・高尾山・町田

東京都