東京都日野市に位置する多摩動物公園は、東京都が運営する動物園で、豊かな自然環境と多彩な動物展示で知られています。1958年5月5日に開園し、上野動物園と並んで日本を代表する動物園の一つです。その広大な敷地は、日本最大の動物園として知られ、多摩丘陵の起伏を活かした展示が特徴です。
多摩動物公園は、当初、上野動物園の分園としてスタートしましたが、広大な敷地(上野動物園の約4倍)を生かし、動物が自由に動き回る姿を展示することを目指しました。そのため、無柵放養式展示が導入され、自然に近い形で動物を観察できる点が魅力です。特に1964年に始まった「ライオンバス」は、世界初のサファリ形式による展示として注目を集めました。
また、多摩動物公園は、東京都が直営していた時期を経て、現在は公益財団法人東京動物園協会によって管理されています。2018年3月時点での職員数は112人に達し、豊富な経験と知識を持つスタッフによって運営されています。
アジア園では、アジア地域に生息する動物を展示しています。特に注目されるのは、オランウータンのスカイウォークです。これは、9本のタワーとワイヤーロープで結ばれた全長約154mの巨大な構造物で、世界最大級の規模を誇ります。オランウータンが地上10mの高さで移動する姿を観察することができ、自然の中での彼らの行動を間近で見ることができます。
他にも、半円形の巨大ケージ「フライングバードケージ」では、オジロワシやイヌワシが自由に飛び回る姿が見られます。また、「アジアの山岳ゾーン」では、ユキヒョウやレッサーパンダ、ゴールデンターキンといった珍しい動物が展示されており、彼らの生息環境を再現した展示が楽しめます。
アフリカ園は、ライオンやキリン、チンパンジーなど、アフリカ大陸の動物たちが集まるエリアです。特に「ライオンバス」は、1964年5月に世界で初めて導入されたサファリ形式の展示で、ライオンを間近で観察することができる貴重な体験ができます。この展示は、初代園長・林寿郎の発案によるもので、その後、世界中の動物園で採用されるようになりました。
また、「サバンナ」エリアでは、広大な放飼場でキリンやペリカンが混合展示されており、自然に近い形で彼らの生態を観察できます。「チンパンジーの森」では、チンパンジーの群れ展示が行われ、高さ15mのタワーやUFOキャッチャーなど、チンパンジーの運動能力と認知能力を観察することができます。
オーストラリア園では、コアラを中心に展示が行われており、フクロギツネやフサオネズミカンガルー、フクロモモンガなど、オーストラリア特有の動物が見られます。これらの動物たちは、日本ではあまり見かけない珍しい存在で、多くの来園者に親しまれています。
多摩動物公園の昆虫園は、2002年にリニューアルオープンした施設で、トンボをイメージした建物の中に国内外の昆虫の生体や標本が展示されています。特に「ハキリアリ」や「グローワーム」の展示は国内唯一であり、昆虫好きにはたまらないスポットです。
さらに、昆虫生態園では、温度を調節して季節に関係なくチョウやバッタを放し飼いにしている大温室があり、日本初の通年飼育が可能な施設として注目されています。この施設は、1989年に日本建築学会賞を受賞し、その美しいデザインも見どころの一つです。
多摩動物公園では、アジアゾウ、アミメキリン、ライオン、ユキヒョウ、レッサーパンダ、コアラ、チンパンジーなど、世界中の多種多様な動物が飼育されています。また、国内で唯一展示されている動物もおり、訪れるたびに新しい発見があります。
多摩動物公園は、1958年の開園以来、数々の成功を収めてきました。1960年には、アミメキリンが来園し、アフリカ園の建設が開始されました。また、フタコブラクダの日本初の繁殖にも成功し、その後も多くの希少動物の繁殖に成功しています。特に、1964年に開始されたライオンバスは、世界初の試みとして注目を集め、現在も多くの来園者に愛されています。
その後も、昆虫園の設立やさまざまな動物の繁殖成功、さらには園内の設備の改善など、絶えず進化を続けています。2024年には、日本国内で初めてゾウの抜牙手術に成功するなど、動物園としての役割を超えて、動物福祉にも大きく貢献しています。
多摩動物公園は、その広大な敷地と多様な動物展示で一日中楽しむことができます。園内は起伏が多く、展示動物同士の間隔が広いため、シャトルバスを利用して効率的に移動するのがおすすめです。また、四季折々の自然も楽しめるため、季節ごとに訪れると異なる魅力を発見できるでしょう。
多摩動物公園は、動物愛好家だけでなく、家族連れや自然を楽しみたい方にも最適なスポットです。訪れる際には、各エリアの展示内容を事前に確認し、効率よく園内を巡る計画を立てると良いでしょう。