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薬師池

(やくしいけ)

薬師池は、東京都町田市野津田町に位置する池で、薬師池公園の中央部より東側に広がっています。かつては「福王寺溜池(ふくおうじためいけ)」と呼ばれ、農業用のため池として長い歴史を持つ場所です。面積は約7,650平方メートル、貯水量は10,430立方メートル、水深は0.9~1.8メートルとされています。

薬師池の歴史

初期の歴史と農業用水の役割

薬師池の歴史は1577年(天正5年)に遡ります。当時、当地域を治めていた北条氏照から許可を得て、野津田の武藤半六郎たちがこの地に農業用のため池を築造しました。谷戸の北側をせき止めることで、1590年(天正18年)に完成しました。これにより、周辺の農地に安定した水源が提供され、地域の農業発展に大きく寄与しました。

自然災害と池の再生

1707年(宝永4年)、富士山の噴火により、薬師池は大量の泥砂に埋もれましたが、3年の歳月をかけて泥砂が取り除かれました。その後も、1817年(文化14年)には再び泥砂で埋まり、アシが生い茂る状態となってしまいました。しかし、野津田村の農民たちは懸命に池を掘り直し、再び水田への水供給を確保しました。このように、薬師池は地域住民の手によって何度も再生され、守られてきた歴史を持っています。

薬師池公園の開園と現代の整備

1976年(昭和51年)4月1日、薬師池公園が開園し、薬師池は公園の一部として親しまれるようになりました。その後、2015年(平成27年)11月3日には、水質改善を目的とした掻い掘りが実施され、翌年3月に工事が完了しました。この掻い掘りにより、池内の水質は大幅に改善され、現在も良好な状態が維持されています。

周辺の地理と環境

薬師池が位置する場所は、周囲を丘陵地に囲まれた谷戸地形となっています。池の東側、南側、西側は急な斜面で囲まれており、北側は鶴見川に向けて緩やかに下っています。周辺の丘陵地は、薬師池公園の西にある七国山へと続く尾根で繋がっています。

かつて、薬師池の周りには水田と畑が広がっていました。特に南側と東側では丘陵地の山林が池の近くまで迫り、北へ向けて鶴見川へと流れる農業用水路がありました。現在では、薬師池周辺は整備された薬師池公園となり、水田はショウブ田やハス田、フジ棚に、畑はウメ林やツバキ園、アジサイ園などに変わっています。用水路の大部分は暗渠に置き換えられていますが、一部は地上に開渠として残されています。

生息する生物たち

2015年11月3日に実施された掻い掘りでは、薬師池に生息する生物の調査が行われました。この際、在来種と外来種の確認が行われ、特に外来種の駆除が進められました。以下は、2015年11月3日時点での生息数です。

在来種

モツゴ - 13,054匹以上
トウヨシノボリ - 5匹
ナマズ - 1匹
ギンブナ - 1匹
アブラハヤ - 1匹
スジエビ - 2,217匹
ニホンスッポン - 4匹

外来種

ブルーギル - 1,013匹
アオウオ - 2匹
ソウギョ - 1匹
コイ - 268匹
ゲンゴロウブナ - 7匹
ビワコオオナマズ - 1匹
ヌマチチブ - 210匹
アメリカザリガニ - 1匹
ミシシッピアカミミガメ - 88匹
クサガメ - 25匹
ミナミイシガメ - 1匹

これらの外来種の一部は駆除されましたが、特にミシシッピアカミミガメなどは完全には取り切れず、今後も捕獲器の設置などによる対策が検討されています。

薬師池の水源

薬師池の水源は、周囲の丘陵地にある地下水です。薬師池公園内には、水車を回すための水流がハス田や公園内の水路を通じて供給され、また南側の斜面近くにある滝のある小さな池からも水が流れ込んでいます。これにより、池の水量は常に維持され、美しい景観が保たれています。

薬師池の南東の丘陵地の上には、東京都水道局の野津田浄水所があり、この浄水所もまた付近の地下水を利用しています。薬師池の水源は自然と人々の努力によって守られており、地域の貴重な財産となっています。

関連施設と観光スポット

薬師池公園内には、多くの見どころがあります。特に、ショウブ田やハス田、フジ棚などの美しい花々は訪れる人々の目を楽しませてくれます。また、ウメ林やツバキ園、アジサイ園など、四季折々の花が咲き誇る庭園も見逃せません。さらに、公園内には、薬師池を中心とした散策路が整備されており、自然豊かな環境の中でゆったりとした時間を過ごすことができます。

このように、薬師池は長い歴史と豊かな自然に囲まれた場所であり、訪れる人々に癒しと安らぎを提供してくれます。町田市を訪れる際には、ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

Information

名称
薬師池
(やくしいけ)

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