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刀剣博物館

(とうけん はくぶつかん)

刀剣博物館は、東京都墨田区横網一丁目に位置し、公益財団法人日本美術刀剣保存協会が運営しています。本館は、日本刀を中心とした美術刀剣類の保存と展示を行い、また協会の事務所も同じ建物内に所在しています。

日本刀文化の普及と保存の拠点

刀剣博物館は、日本刀の保存と公開を通じて日本刀文化を普及させる役割を担っており、世界に向けて日本刀の魅力を発信する拠点です。所蔵品には、刀剣、刀装、刀装具、甲冑、金工資料、古伝書などが多数含まれ、その中には国宝や重要文化財に指定された品々もあります。

施設の歴史

刀剣博物館は、1968年(昭和43年)に渋谷区代々木四丁目で開館しましたが、2017年(平成29年)3月末に一時閉館し、翌2018年(平成30年)1月に墨田区横網の旧安田庭園内に移転して再開館しました。現在の施設は、両国公会堂跡地に建設され、日本刀文化を伝える中心的な場所となっています。

日本美術刀剣保存協会の役割

刀剣博物館は、公益財団法人日本美術刀剣保存協会の付属施設として、日本刀文化の保存・継承を目的に設立されました。この協会は1948年(昭和23年)に、日本刀が第二次世界大戦後に駐留軍によって没収されたことを受け、刀剣を保存・継承するために設立されました。

日本刀の歴史的価値

日本刀は、武器としてだけでなく、信仰の対象や権威の象徴としての役割を持ち、さらに美術品としての価値も高いものです。日本刀は千年以上にわたって保存され、国内外で高い評価を受けています。現在でもその美しさは失われておらず、日本刀に込められた日本文化の象徴として、多くの人々を魅了し続けています。

所蔵品と文化財

刀剣博物館は、日本の貴重な文化財である日本刀をはじめとする刀剣類、刀装、刀装具、甲冑、金工資料などを多数収蔵しています。その中には、国宝や重要文化財、重要美術品など、日本の歴史と文化を象徴する作品が多く含まれています。これらの所蔵品は、日本刀の美術的価値を高め、伝統文化の保存と普及に寄与しています。

所蔵品の概要

博物館が所蔵する刀剣類の中には、平安時代から南北朝時代にかけての名作が多数含まれており、それぞれの作品がその時代ごとの技術と美意識を反映しています。また、刀装や刀装具、甲冑なども展示されており、日本刀の実用性と美術性の両方を感じることができる貴重なコレクションです。

刀剣類

日本刀の中でも特に評価が高いものには、国宝や重要文化財として指定された作品が多く含まれています。これらの刀剣は、単なる武器としての役割を超えて、美術品としても高く評価され、時代を超えてその美しさを保っています。

刀装・刀装具

刀装とは、刀の外装部分、すなわち鞘や柄などを指します。一方、刀装具とは、刀装に取り付けられる金属製の装飾品で、鍔(つば)や縁頭(ふちがしら)、目貫(めぬき)などがあります。これらの刀装具は、職人の高度な技術により作られ、芸術品としても評価されています。

甲冑

日本の武士階級が使用した甲冑も博物館に所蔵されています。甲冑は、戦いにおける防具としての機能を果たすと同時に、武士の美意識や地位を象徴する存在でもありました。特に、大名や高位の武士が身に着けた豪華な甲冑は、その美しさと精巧さが評価されています。

金工資料

刀剣や甲冑に使用される金工品もまた、工芸品としての価値が高く、博物館に多く所蔵されています。これらは日本の金属加工技術の高さを示すものであり、職人の技が光る作品が数多く展示されています。

文化財に指定された刀剣類

刀剣博物館に所蔵されている日本刀の中でも、特に貴重なものは国宝や重要文化財として指定されています。これらの文化財は、日本の歴史的・美術的価値を示すものであり、保存・展示の対象となっています。

国宝
太刀 銘 延吉

この太刀は鎌倉時代に制作されたもので、国宝に指定されています。延吉によって作られたこの太刀は、刃長73.3cm、反り2.9cmの見事な形状を持ち、1953年に国宝に指定されました。

太刀 銘 国行(来)

鎌倉時代中期に作られたこの太刀は、国行による作品であり、非常に優れた技術が用いられています。刃長は二尺五寸二分弱で、1953年に国宝に指定されました。

太刀 銘 国行(当麻)

この太刀は鎌倉時代後期に制作されたもので、当麻国行によるものです。刃長69.7cm、反り1.5cmといったバランスの取れた形状が特徴で、1954年に国宝に指定されました。

重要文化財
太刀 銘 信房作

平安時代後期に制作されたこの太刀は、信房による作品です。刃長76.2cm、反り1.9cmであり、その見事な造形と技術が評価され、重要文化財に指定されています。

短刀 銘 清綱

鎌倉時代に作られた短刀で、清綱によるものです。刃長27.6cmのこの短刀は、1952年に重要文化財として指定されました。

短刀 銘 兼氏

南北朝時代の短刀で、兼氏による作品です。刃長19.5cmで、1938年に重要文化財に指定されています。

太刀 無銘 福岡一文字

この太刀は鎌倉時代中期に制作されたもので、製作者は不明ですが、「福岡一文字」として知られています。刃長77.2cmで、1971年に重要文化財として指定されました。

太刀 銘 備前国住人雲次/正和二二年十月

鎌倉時代に作られたこの太刀は、備前国住人雲次によるものです。刃長75.75cmで、1954年に重要文化財として指定されています。

太刀 銘 正恒

鎌倉時代初期のこの太刀は、正恒によって作られたもので、刃長78.4cmです。1933年に重要文化財に指定されました。

太刀 銘 兼永

平安時代後期に制作されたこの太刀は、兼永によるもので、刃長77.1cmです。1938年に重要文化財として指定されました。

重要美術品

刀剣博物館には、国が指定する文化財以外にも、重要美術品に指定された作品が所蔵されています。その中でも特に有名なものとして、太刀 銘 真景(古伯耆)などが挙げられます。これらの作品は、美術品としての価値が高く、日本の美意識と技術を感じさせるものです。

特別重要刀剣

刀剣博物館に所蔵されている刀剣類の中には、日本美術刀剣保存協会が指定する特別重要刀剣も多く含まれています。これらは、日本刀の中でも特に高い美術的価値と歴史的価値を持つものです。代表的な作品としては、刀 銘(金象嵌銘) 尻懸則長磨上之 本阿(花押)(光室)などがあります。

日本刀の美術工芸品としての価値

日本刀は単なる武器としてだけでなく、美術工芸品としても非常に高い評価を受けています。刀身の美しさや、鍔や柄などの装飾がもつ芸術的な要素は、日本人の美意識を反映したものと言えます。刀剣博物館に所蔵されている作品は、こうした美術工芸品としての日本刀の価値を広く伝える役割を担っています。

建築と施設の特徴

博物館のデザイン

刀剣博物館の新しい建物は、池泉回遊式の庭園が残る旧安田庭園の一角に位置し、自然と調和したデザインが特徴です。旧両国公会堂の佇まいを継承し、庭園との連続性を重視した設計が施されています。1階には、ミュージアムショップ、カフェ、展示・情報ラウンジなどのパブリックスペースが設けられており、庭園散策の途中に立ち寄れるように配慮されています。

展示スペース

最上階には、日本刀の展示室と屋上庭園があり、刀剣の美をゆっくり鑑賞することができます。また、2階には運営スタッフの事務所や刀剣審査室、展示企画室などが配置されています。

刀剣博物館の沿革

設立の歴史

1948年(昭和23年)2月24日、日本美術刀剣保存協会が設立されました。戦後の混乱期において、日本刀は駐留軍によって没収される危機に瀕していましたが、協会は文部大臣の許可を受けて、日本刀の保存と継承を進めるために設立されました。

重要な出来事

1955年には第1回作刀技術発表会が開催され、1989年からは文化庁主催の刀匠作刀技術研修会が始まりました。また、2018年に墨田区横網の現地に移転し、再び一般公開を開始しました。

利用情報

開館時間と観覧料

刀剣博物館は、火曜から日曜日まで午前9時30分から午後5時まで開館しており、入館は午後4時30分まで受け付けています。毎週月曜日は休館日ですが、月曜日が祝日の場合は開館します。

観覧料は、一般1,000円、会員および学生500円、中学生以下は無料です。

アクセス情報

刀剣博物館へは、JR総武線または都営地下鉄大江戸線の両国駅から徒歩7分でアクセス可能です。

まとめ

刀剣博物館は、日本刀という貴重な文化財を保存し、その美しさと技術を次世代に伝える重要な施設です。国宝や重要文化財に指定された数多くの作品を所蔵しており、日本の伝統文化を広く国内外に発信しています。訪れることで、武器としての日本刀だけでなく、美術品としての側面をじっくりと堪能できるでしょう。

Information

名称
刀剣博物館
(とうけん はくぶつかん)

浅草・スカイツリー

東京都