東京都墨田区に位置する「たばこと塩の博物館」は、日本たばこ産業(JT)が運営する企業博物館であり、その愛称は「タバシオ」です。かつて専売品であった「たばこ」と「塩」の歴史と文化に焦点を当て、幅広い展示を行っています。もともとは1978年に東京都渋谷区に開館されましたが、2013年に移転し、現在の場所で再開されました。
たばこと塩の博物館は、1978年(昭和53年)に当時の日本専売公社によって設立されました。その目的は、タバコと塩に関する資料の収集や調査、文化的な研究を通じて、これらの品目の歴史と文化を広く紹介することでした。当初、博物館は東京都渋谷区神南の渋谷公園通り沿いに開館し、多くの資料を展示していました。
しかし、収蔵資料の増加や建物の老朽化などの理由から、2013年に渋谷の博物館は閉館し、2015年(平成27年)4月25日に東京都墨田区横川に移転しました。現在の博物館は、日本たばこ産業の敷地内にある倉庫を改装したもので、新たな施設として生まれ変わりました。
たばこと塩の博物館は、専売品であった「たばこ」と「塩」にまつわる歴史と文化を中心に展示しています。
たばこの起源は、古代アメリカ大陸の文明にまで遡ります。もともと儀式に使われていた植物として、たばこは16世紀以降、嗜好品として世界中に広まりました。日本にも16世紀末に伝来し、江戸時代を通じて庶民文化に根付き、独自のたばこ文化が形成されました。
一方、塩は古来より生命維持に欠かせない重要な資源として、人類の生活に密接に関わってきました。特に日本では、内陸に岩塩資源が乏しいため、縄文時代から海水を煮詰める製塩技術が発展し、独自の塩文化が形成されました。
たばこと塩の博物館では、タバコや喫煙具、岩塩など、約3万点におよぶ資料が展示されています。これらの資料には、タバコの製造や流通に関する歴史的な道具や資料だけでなく、喫煙具のデザインや、世界中の塩に関する資料も含まれます。
さらに、肉筆浮世絵83点、浮世絵版画1550点以上、版本300点など、江戸時代の美術作品も所蔵されており、これらの展示を通じて、当時の文化や生活風景を垣間見ることができます。
たばこと塩の博物館の施設は、1階から3階までの常設展示エリア、特別展示室、視聴覚ホールなどがあり、訪問者は様々な形でタバコと塩に関する歴史や文化に触れることができます。
博物館では、タバコや塩を中心としながらも、時代やテーマに応じて幅広い特別展を開催しています。これにより、たばこと塩に関わる多様な文化的側面が紹介され、来館者は新たな発見を得ることができます。
たばこと塩の博物館は、東京都墨田区横川に位置しており、最寄り駅は「とうきょうスカイツリー駅」から徒歩約500メートル、「本所吾妻橋駅」からは約700メートルの距離です。
博物館の開館時間は10:00から17:00までで、月曜日(祝日や振替休日の場合は翌日)と年末年始が休館日です。入館料は非常にリーズナブルで、大人・大学生は100円、小・中・高校生は50円です。
「たばこと塩の博物館」は、専売品であったたばこと塩の歴史と文化を探求する貴重な場です。移転後も、日本の文化や産業に深く根付いたこれらの品目について、過去から現在に至るまでの知識を深めることができます。訪問者は、展示を通じて人類の歴史や文化に対する新たな視点を得ることができるでしょう。