奥多摩湖は、東京都西多摩郡奥多摩町と山梨県北都留郡丹波山村・小菅村に跨る人造湖です。正式名称は小河内貯水池(おごうちちょすいち)で、東京都水道局が保有・管理する小河内ダム(おごうちだむ)により、多摩川の上流部を堰き止めて、1957年(昭和32年)に完成しました。
奥多摩湖の貯水容量は約1億9000万立方メートルで、竣工当時、上水道専用貯水池としては世界最大規模のものでした。現在も日本最大級の水道専用貯水池として重要な役割を果たしています。主に利根川水系に依存する東京都の水源において、奥多摩湖は渇水時の重要な水源として機能しています。水質は、取水口近くおよび湖の9カ所で毎月調査が行われており、水質観測船「みやま丸」によって定期的に監視されています。
東京都交通局が管理する水力発電施設(多摩川第一発電所)も湖畔に併設されており、発電された電力は東京電力に売却され、奥多摩町や青梅市などの多摩地域に供給されています。また、湖畔には多くの見どころや観光施設があり、首都圏のオアシスとしても親しまれています。
奥多摩湖の建設計画は昭和初期に遡ります。ダム建設予定地である旧小河内村では用地買収が難航し、また、神奈川県との水利権を巡る水利紛争や、太平洋戦争激化による工事の中断など、様々な困難を経て、着工から19年の歳月をかけて1957年に竣工しました。
ダム建設により旧小河内村を含む945世帯、約6,000人が移転を余儀なくされました。特に旧小河内村の大部分が水没し、移住者たちは山梨県北巨摩郡高根町(現:北杜市)付近へ再移住しました。この移住により、清里高原における農業、畜産、観光業の発展に寄与することになりました。
ダム建設中には87名が殉職し、奥多摩湖畔には彼らを悼む慰霊碑が建てられています。また、竣工を記念して「小河内ダム竣工記念切手」が発行されました。
奥多摩湖の周辺には多摩川(丹波川)や小菅川などの河川が流入しており、湖畔には小河内神社があります。また、奥多摩湖は桜の名所としても知られ、多くの観光客が訪れます。湖畔の「奥多摩水と緑のふれあい館」では、自然環境やダム建設の歴史を学ぶことができ、入館料は無料です。
湖面は水道専用貯水池のため、水質管理上の理由で立ち入りは禁止されていますが、湖畔では豊かな自然と触れ合うことができます。「東京都立奥多摩湖畔公園 山のふるさと村」では、ログハウスやキャンプ場が整備され、蕎麦打ちなどの様々な体験ができます。
奥多摩湖には「麦山浮橋」と「留浦浮橋」の2つの浮橋が架けられています。これらの橋はドラム缶を浮体として使用していたことから「ドラム缶橋」として親しまれていますが、現在は合成樹脂製の浮体に置き換えられています。これらの橋は歩行者専用であり、湖を訪れる人々にとって貴重なアクセス手段となっています。
奥多摩湖および流入する河川には、コイ、ヘラブナ、ヤマメ、ニジマス、ウナギ、ブラックバスなど、様々な魚介類が生息しています。また、湖畔の森林は奥多摩山域や奥秩父山塊に連なり、秩父多摩甲斐国立公園の一部として、東京水道水源林に指定されています。この水源林は、水源の森百選にも選ばれており、東京都の重要な上水道源を支えています。
奥多摩湖は首都圏のオアシスとして、自然と歴史を楽しむことができる場所です。観光客は四季折々の風景を楽しみながら、湖畔での散策や各種体験を満喫できます。また、ダムは特撮ヒーロー番組や映画のロケ地としても多く利用され、その壮大な景観は多くの人々に感動を与えています。