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幸神神社のシダレアカシデ

(さじかみ じんじゃ)

幸神神社のシダレアカシデは、東京都西多摩郡日の出町大久野にある幸神神社の境内に生育する古木で、推定樹齢は700年とされています。このシダレアカシデは1942年に国の天然記念物に指定され、2013年現在でもカバノキ科の植物としては唯一の国指定天然記念物となっています。枝がしだれるアカシデは、日本でこの木が唯一とされており、その珍しさが際立っています。

幸神神社のシダレアカシデの由来

幸神神社は、1335年(建武2年)に創建されたと伝えられています。京都の出雲路幸神社を勧請し、「幸神大神」と称したことから始まり、室町時代の文安年間から戦国時代にかけて社殿が再建されました。明治2年(1869年)には「幸神神社」の名称となり、今日に至ります。

この神社の参道入口付近の斜面に1本のアカシデが生育しています。アカシデはカバノキ科のクマシデ属に属する木で、芽吹きの季節には赤みを帯びることから「アカシデ」と呼ばれています。幸神神社のシダレアカシデは、この種の木としては特に珍しく、通常のアカシデとは異なり、枝がしだれた特異な形状をしています。

樹形と特徴

幸神神社のシダレアカシデは、枝が根元から螺旋状にねじれ、全体的にこんもりとした丸い樹冠を形成しています。このような枝ぶりは非常に珍しく、枝先が地面に届くほどのしだれ具合を見せています。この木の美しさは四季折々に異なる表情を見せ、春には新芽の赤み、秋には紅葉、そして冬には葉を落とした姿がそれぞれに見事です。

シダレアカシデの歴史と伝承

幸神神社のシダレアカシデがどのようにしてここに植えられたのかについては、いくつかの説があります。ひとつは、神社が勧請された際に山城国からこのアカシデも移植されたという説です。また、もうひとつは、明治時代にこの地域の住民が山中でしだれ性のアカシデを見つけ、神社の境内に植えたという説もあります。しかし、このいずれの説も確証を得ていないため、いまだに議論が続いています。

樹齢と成長の記録

シダレアカシデの樹齢は通説では700年とされていますが、これは山城国からの移植説に基づくものです。しかし、調査によっては、この数値に疑問がもたれています。樹木医の調査では、シダレアカシデの年輪を調査し、その結果、樹齢はおおよそ180年から200年と推定されました。

天然記念物指定と保護活動

1939年(昭和14年)8月28日、大久野村役場は史蹟名勝天然記念物保存法に基づき、このシダレアカシデを「枝垂そろ」として国に天然記念物の指定申請を行いました。この時、神社の宮司と氏子たちによって、この木の価値が郷土教育にとって有益であるとして申請が行われました。1942年(昭和17年)に正式に国の天然記念物に指定されました。

過去の成長と現在の状態

指定当時の樹高は約4.5メートル、根元周囲は約1.74メートルであり、その後も成長を続けましたが、近年では樹勢の衰えが問題視されるようになりました。1980年代から90年代にかけての調査では、枝張りや樹冠の状態が以前ほどの活力を持たないことが確認され、2000年代に入ってからは樹木医の定期的な点検が行われるようになりました。

樹勢回復調査と対策

平成20年度から22年度にかけて、日の出町は国庫補助事業として樹勢回復調査を実施しました。調査の結果、最大の原因は日照不足であることが判明し、2010年には日照を阻害していた周辺の樹木の伐採が行われました。これにより、シダレアカシデの成長が改善され、回復の兆しが見られるようになりました。

今後の保護と展望

このシダレアカシデは、幸神神社の歴史とともに生き続けてきた木であり、今後もその保存と保護が続けられることが期待されています。樹勢回復の兆しが見られた現在、この木が再びその美しい姿を取り戻し、地域のシンボルとして長く保たれることが望まれます。

Information

名称
幸神神社のシダレアカシデ
(さじかみ じんじゃ)

奥多摩・青梅

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