小澤酒造株式会社は、東京都青梅市沢井に本社および工場を構える日本酒の蔵元です。特に、多摩地域の地酒として広く知られている「澤乃井(さわのい)」というブランド名で親しまれています。このブランド名は、青梅市沢井の旧地名である「澤井村」に由来しています。
青梅市は東京都の多摩地域の北西部に位置し、その一部である沢井は市の西部に位置しています。沢井は秩父多摩甲斐国立公園に指定されており、自然豊かな地域です。東には二俣尾、西には御岳本町や奥多摩町川井、南には多摩川を挟んで柚木町、北には成木と隣接しており、関東山地と武蔵野台地が交差する地形です。特に多摩川が流れる中心市街地は、青梅街道の宿場町として歴史的に発展してきました。
小澤酒造は、青梅市沢井で300年以上の歴史を誇る蔵元です。その創業は明確には記録されていませんが、1702年(元禄15年)の古文書にその存在が記されていることから、それ以前に既に酒造業を営んでいたと考えられています。小澤酒造では、この1702年を公式な創業年としています。
小澤酒造はその長い歴史の中で、伝統と革新を両立させながら酒造りを続けてきました。現在、その酒造りを担うのは、第23代目当主である小澤幹夫氏です。彼は歴史と伝統を重んじながらも、時代に合った新しい酒造りを追求しています。
小澤酒造は、多摩川上流の御岳渓谷沿いに位置しており、自然豊かな環境に恵まれています。酒造りにおいて最も重要な要素の一つである水は、この地の豊かな自然環境によって支えられています。
小澤酒造の先祖は、もともと異なる職業を営んでいましたが、豊富で美しい水が得られるこの地に惹かれ、酒造りを始めました。現在も、小澤酒造では敷地内の岩盤を横に掘り進んだ洞窟の奥から湧き出す中硬水と、約4km離れた山奥の井戸から採れる軟水を仕込水として使用しています。
小澤酒造の酒蔵は、創業時に建てられた蔵を修繕や増築しながら使用しています。その中には高さ2mほどの貯蔵タンクが並んでおり、さらに木で作られた桶も使用されています。15年ほど前、創業当時から蔵の裏手にあった樹齢300年ほどの大木が倒木の危険があるとして伐採され、その木を使って大阪の職人に木桶を作らせました。この木桶は、現在でも一部の製品の製造に使用されています。
小澤酒造では、伝統的な「生酛造り」という製法を採用しています。日本酒は、麹の働きによって米の澱粉から糖を作り、その糖を酵母によってアルコールに変える工程を経て製造されます。この過程で、乳酸が重要な役割を果たします。
多くの日本酒は、人工的に乳酸を添加する「速醸酛(そくじょうもと)」という方法で造られていますが、小澤酒造の「東京蔵人」という銘柄は、伝統的な製法にこだわり、乳酸菌から天然の乳酸を生成する「生酛造り」で作られています。
小澤酒造の歴史は、1702年(元禄15年)の古文書に酒造業の営みが記録されていることから始まります。その後、1954年には小澤順一郎(後の22代目当主)が誕生し、1966年からは酒蔵の見学を開始しました。1977年には特選酒を完成させ、その発売を開始しました。
さらに、1984年からは社員杜氏の育成を開始し、1992年には小澤順一郎が22代目当主を継承し、「平成蔵」が完成しました。1998年には「澤乃井 櫛かんざし美術館」を開設し、2003年には「木桶仕込 彩は(いろは)」が発売されました。
小澤酒造では、予約制で酒蔵見学を実施しています。この見学では、澤乃井のお酒がどのように作られているか、その工程や蔵に関する話を聞くことができます。また、美術館として「澤乃井 櫛かんざし美術館」と「玉堂美術館」を運営しており、それぞれ独自の文化と歴史を体験することができます。
小澤酒造は、いくつかの関連施設を運営しており、「まゝごと屋」や「いもうとや」などの飲食施設もあります。さらに、これまでに「澤乃井」は全国新酒鑑評会で複数回にわたり金賞を受賞しています。
小澤酒造は、JR青梅線の沢井駅から徒歩約10分の場所に位置しています。見学や美術館の訪問には、事前に予約が必要な場合があるため、訪問前に確認することをお勧めします。
このように、小澤酒造は長い歴史と豊かな自然環境に支えられた伝統ある酒蔵です。伝統的な製法にこだわりつつも、新しい挑戦を続けるその姿勢は、多くの人々に愛され続けています。