三菱一号館美術館は、東京都千代田区丸の内に位置する美術館です。この美術館は、大手不動産会社である三菱地所が運営する企業博物館であり、歴史的な価値のある建物を復元して利用しています。明治時代に建てられた旧三菱一号館は、丸の内で最初に建設された洋風の貸事務所建築として知られており、この美術館の建物はその歴史的な建築を忠実に再現したものです。
三菱一号館美術館は、三菱地所による再開発プロジェクトである「丸の内ブリックスクエア」の一環として、2009年に完成し、2010年に正式に開館しました。この美術館は、主に19世紀の近代美術を展示しており、年間を通じて3~4回の企画展を開催しています。常設展示は設けられていませんが、19世紀末の美術品を多く所蔵しており、特にアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックの作品が多く含まれています。そのため、フランスのアルビ市にあるトゥールーズ=ロートレック美術館と姉妹館提携を結んでいます。
三菱一号館美術館の展示室は、建物内の1階から3階にかけて配置されており、その設計は非常に特異です。建物の構造上の制約により、各展示室は平均して約40平方メートルという比較的小さなスペースであり、合計20室の展示室が連なっています。このような構成により、訪れる人々は、より親密で集中した鑑賞体験を得ることができます。
三菱一号館美術館の歴史は、19世紀末にまで遡ります。1894年(明治27年)に第1号館(三菱一号館)が竣工し、その後、1918年(大正7年)に東9号館に改称されました。しかし、1968年(昭和43年)には三菱地所によってこの歴史的建物は解体されました。現在の三菱一号館は、その建物を2009年に復元し、同年4月30日に竣工しました。そして、2010年4月6日に正式に開館し、開館記念展「マネとモダン・パリ」が開催されました。
その後、2023年4月10日より修繕工事のため長期休館となり、2024年秋頃に再開を予定しています。
三菱一号館美術館には、20室の展示室(約800平方メートル)に加えて、訪れる人々がリラックスできるカフェ「Café 1894」や、ミュージアムショップ「Store 1894」、歴史資料室、三菱センターデジタルギャラリーが併設されています。これらの施設は、美術館を訪れる際の体験をさらに豊かにするものとなっています。
三菱一号館美術館は、1880年代から1890年代に制作された美術品や工芸品を多く収蔵しています。特に注目すべきは、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックのリトグラフ・ポスターのコレクションです。これらの作品は、ロートレック自身が手元に置いていたものを、後に友人の画商であるモーリス・ジョワイヤンが引き継いだコレクションに由来しています。
また、「生活のなかのジャポニズム」をテーマとした美術工芸品コレクションであるジョン&ミヨコ・ウンノ・デイヴィー コレクションも所蔵されており、陶磁器、銀器、ガラス作品など、200点以上の作品が展示されています。