国立劇場は、東京都千代田区隼町に位置する劇場で、独立行政法人日本芸術文化振興会が運営しています。この劇場は、日本の伝統芸能である歌舞伎や文楽、日本舞踊、邦楽、雅楽などの公演を主催する場であると同時に、これらの芸能を継承するための施設としても機能しています。また、これらの伝統芸能の伝承者を育成するプログラムも提供しています。
国立劇場本館は、1966年11月に開場しました。また、2003年には国立劇場の裏に伝統芸能情報館が設けられ、さらにその役割を広げました。毎年4月には、日本国際賞の授賞式が行われ、天皇・皇后や内閣総理大臣、衆参両議院議長らが出席します。劇場の公式キャラクターとして「くろごちゃん」が親しまれています。
国立劇場の裏には、2003年に開館した伝統芸能情報館があり、伝統芸能に関するさまざまな情報を提供しています。また、国立劇場本館は2023年10月から建て替えの計画が進行中で、2029年秋に完成する予定です。建て替え期間中は、新国立劇場や国立能楽堂、シアター1010、日本青年館ホールなどで主催公演が行われる予定です。
2023年8月8日、日本芸術文化振興会は再整備事業の2回目の入札が不落札に終わったことを発表しましたが、この計画は進行中です。
国立劇場の設立の構想は、1875年(明治8年)にさかのぼります。フランスから帰国した光妙寺三郎は、西園寺公望らとともに国立劇場の必要性を説きました。これに触発され、十二世守田勘弥が1878年(明治11年)に開設した新富座は、国立劇場に代わるべき施設としての自負がありました。
さらに、1886年(明治19年)には、井上馨、穂積陳重、森有礼などの政財界の有力者を発起人とする演劇改良会が設立され、その目的には劇場建設も含まれていました。しかし、この活動は大きな成果を上げることなく終了しましたが、国立劇場の設立への機運を高めました。
1906年(明治39年)、伊藤博文らによって国立劇場設立発起人会が開かれましたが、これも一度きりで終わりました。しかし、この動きは形を変えて1911年(明治44年)の帝国劇場の開場へとつながりました。
1936年(昭和11年)、早稲田演劇協会内に国立劇場設置委員会が設置され、国立劇場建設趣意書をもとにした建議案が帝国議会に上程されました。この建議案は1937年(昭和12年)6月に衆議院を通過しましたが、その後の戦時下において実現は困難になりました。
1948年(昭和23年)以降、文部省は毎年国立劇場の予算化を要望していましたが、実現には至りませんでした。しかし、1955年(昭和30年)に文化財保護委員会が芸能施設調査研究協議会を設置し、1956年3月にはこの協議会が国立劇場の基本構想を答申しました。
そして、1963年には竹中工務店による校倉造の正倉院を模した設計案が選ばれ、1966年10月に国立劇場が竣工しました。同年7月には国立劇場法が制定され、11月1日に国立劇場本館が正式に開場しました。開場式の後、11月3日から「菅原伝授手習鑑」が上演されました。
1990年、特殊法人国立劇場は日本芸術文化振興会に改称し、2003年には独立行政法人化しました。また、2012年(平成24年)から2021年(令和3年)までの間、毎年3月11日に政府主催の東日本大震災追悼式が国立劇場で行われました。天皇・皇后をはじめとする皇族や内閣総理大臣、衆参両議院議長などが出席しましたが、2020年にはCOVID-19の影響で中止されました。
国立劇場には、大劇場と小劇場があります。大劇場では、歌舞伎や日本舞踊、演劇などが上演され、小劇場では、文楽や邦楽、琉球舞踊、雅楽、声明、民俗芸能などが上演されます。
国立劇場本館は、東京都千代田区隼町4-1に位置しています。この地は、江戸時代には播磨明石藩松平家の屋敷があり、明治時代には陸軍施設となり、東京第一衛戍病院や陸軍教育総監部、陸軍航空本部などが置かれていました。終戦後、この地はアメリカ空軍の住宅施設であるパレスハイツとして使用されましたが、1958年11月25日に返還され、国立劇場のほか、最高裁判所などの用地として再利用されました。
国立劇場の建物は、1968年に第9回BCS賞を受賞し、1998年には公共建築百選に選ばれました。また、2003年にはDOCOMOMO JAPAN選定の「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」に選ばれました。前庭の造園は中島健が担当し、さまざまな種類の桜が植えられています。特に、ジンダイアケボノは2000年に日本花の会から国立劇場に植栽され、その後全国に広まりました。
国立劇場へは、東京メトロ半蔵門線の半蔵門駅や、東京メトロ有楽町線・南北線の永田町駅からアクセスできます。
都営バスでは、三宅坂停留所が最寄りです。四谷駅から晴海埠頭を結ぶ都03系統や、新宿駅西口から三宅坂を結ぶ宿75系統が運行されています。帰路には「劇場バス」が運行されるため、便利です。
国立劇場本館の隣には、1979年3月に開場した国立演芸場があります。ここでは、落語や講談、浪曲、漫才、太神楽などの演芸公演が行われています。
日本芸術文化振興会が管理する他の国立施設には、以下のものがあります。