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山王祭

(さんのう まつり)

山王祭は、東京都千代田区にある日枝神社で毎年行われる歴史ある祭りです。その正式名称は「日枝神社大祭」といい、神田祭と並んで「天下祭」の一つとされています。また、深川祭を加えた「江戸三大祭」の一つとしても知られています。この祭りは現在、偶数年の6月中旬を中心に本祭が行われますが、明治時代以前は旧暦の6月15日に開催されていました。

山王祭の歴史

日枝神社の起源と歴史

日枝神社は南北朝時代にはすでに存在していたと伝えられています。その後、太田道灌によって江戸城内に移築され、江戸幕府成立後に再び城外に移されたとされています。この神社は、江戸城および徳川将軍家の産土神として重んじられ、その祭礼も幕府から手厚い保護を受けるようになりました。

将軍の上覧許可と祭礼の発展

元和元年(1615年)には、山車や神輿が江戸城内に入ることが許され、将軍の上覧が許されました(異説では寛永12年〈1635年〉ともいわれます)。山王祭は、江戸時代の文化・文政期には最盛期を迎え、神輿3基、山車60本の大行列が行われました。この祭りは、江戸を代表する夏祭りとしても親しまれ、祇園会と混同されるほどの規模となりました。

山王祭の衰退と再興

天保の改革と祭りの衰退

しかし、天保の改革による倹約令が発せられたことをきっかけに、山王祭は次第に衰退していきました。文久2年(1862年)の祭りを最後に、将軍が上方に滞在し続けたため、江戸幕府は滅亡し、天下祭としての意義を失いました。また、明治22年(1889年)を最後に、山車が山王祭に引き出されることはなくなりました。これは、東京市電の架線敷設により、背の高い山車の運行が困難になったことや、山車の維持にかかる費用が各町にとって重い負担となったことが原因とされています。

戦後の再興と現在の山王祭

さらに、東京大空襲によって日枝神社が焼失するという困難に見舞われましたが、昭和27年(1952年)に祭りは再開されました。現在では隔年で行われる大祭として、江戸時代から続く伝統を今に伝え、地域の人々や観光客に親しまれています。

山王祭の祭礼内容

大祭と夏越稚児まつり

山王祭の大祭は、神田祭と交互に毎年偶数年に行われ、その内容は神田祭と類似しています。また、毎年行われる「夏越稚児まつり」も重要な行事の一つです。大祭の年には、期間中の日曜日に稚児行列が行われ、神職や巫女に付き添われた稚児たちが神社の周囲を練り歩きます。

江戸時代の山王祭の様子

江戸時代の山王祭は、6月14日の午の刻(昼の12時)から始まる宵宮で幕を開けました。社前では別当社僧の読経が行われ、続いて神主の祝詞奏上と神楽の演奏が行われました。その後、山車と練り物が街中を練り歩き、沿道は軒提灯や金屏風で飾られ、桟敷や毛氈をしつらえて見物客を招きました。

6月15日未明には、山車行列が町内より山下御門を入り、江戸城内を通過しながら進んでいきました。この行列は、町内の山車と練り物を先頭に、神輿3基が続きました。当時の山車行列は、文久2年の時のもので、各町が山車を出し、その後に練り物や神輿が続くという形で行われました。

江戸時代の山車行列の概要

以下は、江戸時代の神幸祭に加わった山車の一覧です。この行列は、大榊を先頭に、各町の山車、練り物、そして神輿3基を中心とするものでした。当時の山車行列の内容は、以下の通りです。

一番:諌鼓鶏の吹貫の山車 - 大伝馬町(日本橋大伝馬町一〜二丁目及び六丁目、日本橋本町二〜三丁目、日本橋堀留町一丁目)
二番:幣猿の吹貫の山車 - 南伝馬町(京橋一〜三丁目)
三番:傘鉾6本 女猿・太鼓打ち人形・神功皇后・馬乗り人形・八幡太郎・鐘馗 - 麹町十二丁分(麹町一〜六丁目、四谷一〜二丁目)、平河町一〜三丁目(平河町一〜二丁目)、山元町(麹町一〜四丁目)
四番:剣に水車の吹貫の山車 - 山王町(銀座八丁目)、南大坂町(銀座八丁目)、丸屋町(銀座八丁目)
五番:松に羽衣漁夫の山車 - 桶町(八重洲二丁目、京橋二丁目)
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四十五番:猩々の山車 - 霊岸島銀町四丁分(新川一〜二丁目)

付祭と仮装行列

これらの山車行列に加え、「付祭(つけまつり)」と呼ばれる特別な出し物も行われました。付祭は、各町が独自に趣向を凝らした飾り物や仮装行列を出すもので、踊り屋台や曳き物、花駕籠、仮装行列などが含まれていました。中でも、麹町他からの唐人衣裳の行列を伴った白い象の作り物は評判を呼び、多くの見物客を魅了しました。

まとめ

山王祭は、江戸時代から続く長い歴史を持つ祭りであり、地域の伝統や文化を今に伝えています。その内容や形式は時代とともに変わりましたが、今なお東京の重要な祭りとして多くの人々に親しまれています。山王祭は、過去の栄華と衰退、そして再興の歴史を物語る存在であり、これからもその伝統を受け継いでいくことでしょう。

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山王祭
(さんのう まつり)

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