羽田クロノゲートは、ヤマトグループが運営する日本最大級の物流施設です。東京都大田区羽田旭町に位置し、2013年(平成25年)9月20日に竣工しました。本施設は、日本国内外を結ぶ物流のハブとして重要な役割を果たしています。
羽田クロノゲートは東京都大田区羽田旭町11番1にあります。この施設は、環八通り(国道131号との重複区間)に面しており、羽田空港や首都高速道路1号羽田線の羽田出入口からも近い距離にあります。また、東京港からの海運や東京貨物ターミナル駅からの鉄道貨物輸送も利用しやすい場所に位置しており、首都高速道路を経由することで横浜港へも短時間でアクセス可能です。
この地には1938年から荏原製作所の羽田工場があり、大型ポンプなどの製造を行っていました。しかし、工場の老朽化や生産効率の向上を図るため、荏原製作所は生産機能を千葉県富津市へ移転することを決定し、2007年にこの跡地10万2881m2と敷地内に建設中であった地上12階・地下1階のオフィスビルをヤマト運輸に845億円で売却しました。オフィスビルは2008年に完成し、荏原製作所がヤマト運輸から賃借し本社機能を置いていました。
2011年1月に「羽田物流ターミナル(仮称)」の建設が着工されましたが、土地引き渡し時点で石綿を含有するスレート片が混入していることが判明し、ヤマト運輸はこれを瑕疵として荏原製作所に除去費用と遅延損害金を求める民事訴訟を提起しました。2019年1月、この訴訟はヤマト運輸に有利な判決が確定し、荏原製作所に対し約59億円の支払いが命じられました。この土壌処理により、当初の2012年10月の開業予定が遅れ、最終的に2013年9月20日に羽田クロノゲートが竣工しました。
施設の名称は、ギリシャ神話の時間の神「クロノス」と、日本と国外を結ぶゲートという意味を込めて「ゲート」を組み合わせた造語「羽田クロノゲート」として名付けられました。
羽田クロノゲートは「止めない物流」を掲げ、年中無休24時間体制で稼働しています。1階・2階は荷物搬送エリアで、全長1070mのセル式クロスベルトソータ、ロボットアームなどの先進的な設備を導入しており、荷物の仕分け能力を大幅に向上させています。この設備により、1時間当たりの仕分け数は従来の2万4千個から4万8千個に倍増し、1日当たり約60万個の荷物処理が可能です。さらに、施設内の各階はスパイラルコンベアでつながっており、効率的な荷物搬送が実現されています。
羽田クロノゲートは、ヤマトグループが推進する次世代物流ネットワーク「バリュー・ネットワーキング構想」の中核を成す施設です。この構想の一環として、沖縄の「沖縄国際物流ハブ」や神奈川県の「厚木ゲートウェイ」、愛知県の「中部ゲートウェイ」、大阪府の「関西ゲートウェイ」と連携し、全国規模の物流網を形成しています。2013年10月28日からは、香港向けの「国際クール宅急便」のサービスも開始されており、将来的にはアジア各国への拡大や東京-大阪間の当日配達も目指しています。
羽田クロノゲートの3階から7階に位置する付加価値ゾーンでは、医療機器の洗浄・メンテナンスを行い、再配送することで医療機関の在庫圧縮とリードタイムの短縮を実現しています。また、オンデマンド印刷によるダイレクトメールの作成、複数の調達拠点からの品物をまとめて出荷する「クロスマージ」、通関や検品、ラベル貼付といった流通加工も行われています。
羽田クロノゲートは、自然換気を活用した空調システムや太陽光を取り入れた省エネルギー設計により、従来の同種施設に比べて46%の二酸化炭素排出量削減を達成しています。この取り組みが評価され、2014年には日本物流団体連合会主催の第15回物流環境大賞を受賞しました。
羽田クロノゲートの前庭には、地域貢献ゾーン「和の里パーク」が設けられています。ここには、ヤマトグループによる障害者雇用促進事業「スワンベーカリー&カフェ」、大田区民や区内在勤者を対象としたスポーツ施設「ヤマトフォーラム」、保育所「ポピンズナーサリースクール羽田」などが配置されています。フォーラム棟は、日建設計が開発した「アップリフト工法」による建設で、鹿島建設が施工を担当しました。
2013年9月20日の竣工式には、当時の東京都知事・猪瀬直樹氏や東芝代表執行役社長・田中久雄氏、ANAホールディングス代表取締役社長・伊東信一郎氏などが出席しました。また、男性アイドルグループTOKIOが羽田クロノゲートの始動を告知するCMにも出演しました。施設の取り組みを広く知ってもらうため、予約制で宅急便の歴史に関する展示や荷搬エリア、集中管理室などを見学できるコースが設けられています。
羽田クロノゲートの最寄駅である京浜急行電鉄空港線の穴守稲荷駅には、2013年9月20日から「ヤマトグループ羽田クロノゲート前」という副駅名が付与されています。