関東と関西で異なる「くずもち」
「くずもち」と一口にいっても、関東と関西では原料や製法が大きく異なります。関西では葛粉を用いた透明感のある菓子が「葛餅」と呼ばれますが、関東の「久寿餅」は小麦由来のデンプンを発酵させて作られる全く別の和菓子です。
久寿餅の製法と特徴
久寿餅は小麦粉から精製されたデンプンを乳酸菌で発酵させ、蒸し上げて作るのが特徴です。葛粉は使用されておらず、見た目は白く透明感はありません。食感はやや硬めで、発酵による独特の風味が楽しめます。
食べ方と新しいアレンジ
従来はきな粉や黒蜜をかけて食べるのが一般的ですが、近年ではラムネ味の粉末をまぶすなど、新たなアレンジも開発され、若い世代にも親しまれています。
久寿餅の歴史と名前の由来
久寿餅の起源は江戸時代後期にさかのぼります。当時、関東地方では小麦粉のデンプンを発酵させて作った菓子が「くずもち」と呼ばれるようになりました。
この名称には地名が関係しており、現在の東京東部を含む下総国・葛飾郡の「葛」から名付けられたとされます。ただし、関西の「葛餅」と区別するために、「くず」の字に「久寿」をあてたという説があります。
久寿餅と地域文化
名物として親しまれる地域
東京都江東区の亀戸天神社、池上本門寺(東京都大田区)、川崎大師(神奈川県川崎市)などでは、久寿餅は門前町の名物として長く愛されています。
久寿餅の通年販売
かつては池上本門寺門前では、節分明けから菖蒲の季節(2月~6月頃)にかけて販売されていましたが、太平洋戦争後には通年販売されるようになりました。
久寿餅は和菓子唯一の発酵食品
久寿餅は、和菓子の中では唯一の発酵食品とされています。特に、亀戸天神門前の老舗「船橋屋」では、発酵に用いられている乳酸菌がラクトバチルス属パラカゼイ種であることが明らかになり、「くず餅乳酸菌」として関連商品の開発にも取り組まれています。
関西の「葛餅」との違い
関西で「葛餅」と呼ばれる和菓子は、葛粉と砂糖を加熱しながら練り上げて型に流し、冷やして固めたものです。透明〜半透明の見た目が特徴で、主に夏の涼菓として人気があります。中に餡を包んだ「葛まんじゅう」も同様に夏の定番として親しまれています。