長照寺は、東京都大田区に位置する日蓮宗の寺院です。安土桃山時代に開山され、歴史的な価値や重要な文化財を保有しています。その背景には、豊臣秀吉や増田長盛との関わりがあり、現在に至るまでの長い歴史を持っています。
長照寺は、天正十八年(1590年)に日蓮宗の僧、佛乗院日惺聖人によって開山されました。本尊は「一塔両尊」であり、さらに開運妙見大菩薩も安置されています。この妙見大菩薩は、元々豊臣秀吉の守り本尊でしたが、増田長盛に与えられ、その後、長盛の子孫が羽田に定住し、長照寺に奉納されたものです。
長照寺は、かつて現在よりも多摩川の近く、大師橋付近に位置していました。しかし、1878年(明治11年)の洪水で寺が押し流されてしまい、その後、現在の場所に移転しました。
長照寺には、アショーカ法柱獅子柱頭が奉安されています。この法柱は、インドのアショーカ王が仏教に帰依し、ダルマ(真理・教え)による統治を広めるために建立したものです。アショーカ王はカリンガ国への攻撃を通じて、戦争の悲惨さを深く反省し、武力ではなく慈悲と尊敬に基づいた統治を志しました。
紀元前3世紀にインドを統一したアショーカ王は、カリンガ国攻撃後の悲劇を目の当たりにし、仏教に帰依しました。その後、仏教の教えを広めるため、インド各地に法柱を建立しました。法柱の高さは10メートルを超え、柱頭には獅子などの彫刻が施されていました。長照寺にある獅子柱頭の原型は、釈尊初転法輪の聖地サルナートに建てられたものです。
長照寺に奉安されているアショーカ法柱獅子柱頭は、インドから中国を経て日本へと運ばれてきました。この柱頭は、仏教伝来の道を象徴しており、インド、中国、日本の三国を結ぶ歴史的なつながりを示しています。アショーカ王が目指した法による統治の基本は、人間や他の生物に対する慈悲と尊敬であり、これは現代にも通じる大切な教えです。
長照寺に奉安されたアショーカ法柱獅子柱頭は、立正安国と世界平和を祈念して建立されました。アショーカ王が武力による征服を放棄し、慈悲による国造りを志した精神は、現代社会にも通じる普遍的なメッセージを発信しています。
長照寺へのアクセスは、京急空港線「大鳥居駅」から徒歩12分の距離にあります。都心からのアクセスも良好で、静かな環境の中で寺院の荘厳な雰囲気を味わうことができます。